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エコ貯金プロジェクトのこれまでとこれから
6月27日、広尾にあるJICA地球広場において、A SEED JAPANの「エコ貯金プロジェクト」主催のセミナー「第3回エコ貯金フォーラム-ソーシャル・ファイナンス発展のために預金者・金融の現場・経営者ができること-」が開催された。当日は、250名収容の会場に、客席の8割が埋まる盛況ぶりであり、「環境とオカネ」に関心を持つ人たちが多いことを窺わせた。講演の多くは、当日配布されたレジュメに沿って行われたが、当ブログでは、管理人の記憶に残っている範囲で、その講演内容を再現してみたい。
オープニング「エコ貯金プロジェクトのこれまでとこれから」
浦山祐史(A SEED JAPAN エコ貯金プロジェクト スタッフ)
自分は今年26歳で、普段はシステムエンジニアをしている。’08年1月から「A SEED JAPAN(以下ASJ)でボランティアをしている。私が所属している「エコ貯金プロジェクト」は、ASJのプロジェクトの一つで、’03年から活動している。
貯金には3つの性格があると思う。ATM、コンビニでの引き出し、利率などの「利便性」、自己資本比率、格付けなどの「健全性」、応援したい分野への融資、自分が反対する分野への融資を制限する「社会性」である。我々が提唱する「エコ貯金」とは、利便性・健全性・社会性を兼ね備えたものである。
私たちは、預金先を選ぶ権利がある。具体的には、社会問題を引き起こす企業に融資する金融機関に預金せず、環境問題に取り組む企業を支援する金融機関に預金するのだ。「エコ貯金プロジェクト」では現在、「口座が変われば社会が変わる」キャンペーンをやっている。我々の提唱する「エコ貯金」で、金融機関を選ぶ意識を預金者に持ってもらい、預金者の声を金融機関に届ける活動である。参加者には、現在の金融機関から、エコ貯金として預け替える額と預金先を宣言する「エコ貯金」宣言をしてもらう。5年間でたまった「エコ貯金宣言」は、金額ベースで1兆円を突破した。宣言前は、郵便局と都市銀行で7割近くを占めていたのだが、宣言後は労働金庫と信用金庫で6割を占めるようになった。
同時進行のプロジェクトとして、金融機関に公開質問状を3回送付(’05・’08・’09年)し、社会的事業の融資、兵器産業や人権侵害をしている企業等への融資について質問した。結果、情報配慮型融資の情報公開、クラスター爆弾製造企業への投融資の問題への対応などで進展が見られるなど、一定の効果を上げた。
第1回(’04年1月)では、エコ貯金の紹介と預貯金・出資・投資の面での先進的な取り組みの紹介を行った。
第2回(’05年4月)では、金融機関の社会的責任(CSR)の重要性を確認するとともに、預金者に選択肢を提示した。
国際フォーラム(’08年1月)では、海外のソーシャルファイナンスの先進事例を紹介し、日本でのソーシャルファイナンス実現に向けた議論をした。
日本の金融機関の対応には、ポジティブスクリーニングとネガティブスクリーニングの2種類がある。前者は、社会的によい取り組みを行っている企業に積極的に投融資を行うこと、後者は、問題のある企業や事業を、投融資の対象から除外することを指す。日本の金融機関は前者が中心だったが、最近では後者に進展の兆しも見えている。
’10年より、地雷廃絶日本キャンペーン(JCBL)と共同で「どこに行ってる?私のお金」キャンペーンを開始した。このキャンペーンの目的は、預金者が金融機関に投融資についての情報を公開し、問題のある企業や事業を、投融資先からのぞく基準作りを求めていることである。
「エコ貯金宣言]が1兆円を超え、金銭的な利益を得るのが目的ではない、様々な形のソーシャルファイナンスが出現している。具体的にはマイクロファイナンス・社会的責任投資(SRI)・NPOバンク・ソーシャルレンディングなどで、お金の借り手の選択肢は増えたが、出し手である側の市民運動が高まっていないのが現状であり、エコ貯金を広げて、ソーシャルファイナンスを後押しする市民の声を高める必要がある。
アメリカでは、数年来国内を席巻していたグローバル資本主義の反省として、ソーシャルファイナンスへの追い風が吹いている。リーマン・ショックがきっかけになり、私たちと直接関係のないお金が生活を圧迫している現状に怒った市民が立ち上がり、大手銀行の責任を追及する「Move Your Money」運動が広がっている。これは自分の口座を、大手銀行から地域の口座に移し替えるという運動で、大学生の1割近く(9%)がこの運動に参加している。リーマン・ショックは、自分達が関わりがないと思っている社会問題が、私たちのお金から生じていることを認識させるきっかけになり、人々の間に「お金の流れに無関心ではいけない」という教訓が広がりつつある。
これらの運動のカギを握っているのが、ソーシャルファイナンスへの追い風がどのくらい吹くのか、である。地球温暖化以外にも、石油や水(飲み水)など、資源の枯渇が問題視されるなど、世界中で持続可能な社会への動きが広がっている。’09年には、フランス・イギリスでは、それぞれ作成した報告書の中において「GDP」にかわる「幸福度」が検討され、日本でも今年5月、鳩山内閣が幸福度の世界指標を作るよう提案するなど、世界中でお金とのつきあい方を模索する動きが広がっている。今日のフォーラムで、お金がより良い存在になるにはどうしたらいいのか、それぞれの立場で何ができるのかを議論できたらいいと思っている。
※この報告は、当日配布されたレジュメを元に、管理人のメモを加えた上で再構成したものである事を、あらかじめお断りしておきます。