夢見るナンバーワン
ナンバーワン(No.1)のコーヒーとは、どのようなコーヒーだろう? ナンバーワン(No.1)のコーヒーを探すことにアタック(着手)してみよう。♪ ワントゥー ワントゥー アタック ♪ だけど涙が出ちゃう…コーヒーだもん。アタックNo.1だ!
ブラジルのコーヒーにナンバーワン(No.1)はあるのか?
《また外見上の精選度合で分けられているブラジルは、三〇〇グラムのサンプル中の欠点豆を数え、少ない順に等級付けするものです。ブラジルは4欠点以下でも、No.2と評価されてしまうようです。それはゼロ欠点は非常に例外なので、仮にそのとき、欠点なしのNo.1ができたとしても生産量は少なく、安定供給ができません。そのうえ、No.1を選出することで、No.2が減ってしまうというデメリットを上回るだけの高価格で取引されることは難しいでしょう。ここでは少しでも多くのNo.2を作るほうが、利益が上がるわけです。いま述べた分類法は、外見上の精選度合の格付けですから、味の表現とは無関係です。》 (田口護 『コーヒー味わいの「こつ」』 pp.32-33/柴田書店:刊 1996年)
世界最大のコーヒー生産国であり輸出国であるブラジルにとって、コーヒーは格付けを判定するものではなくて輸出産品としての等級を作り出すものである。だから、No.1は‘ない’のではなくて‘つくらない’のだ。そして、現在のブラジルはコーヒーの国内需要が増えて、世界最大の消費国へと夢見ている。生産と消費が共に世界最大になった時、ブラジルのコーヒーにナンバーワン(No.1)はあるのか?
ジャマイカのコーヒーにナンバーワン(No.1)はあるのか?
《ただし品質が低下しても、ブルーマウンテンNo.1はブルーマウンテンNo.1です。品質規格の変更は生産国の裁量によって変更可能です。ハリケーンから4年後、収穫が再開された1992年です。コーヒー豆の足りない分を補うために、それまで島から持ち出すことも禁止だったトリアージュと呼ばれる低級品も輸出品に加わりました。当然ながらブルーマウンテンの品質はガタ落ちしました。(RDC主宰 天堂周伍郎)》 (川島良彰:監修 福田幸江:原作 吉城モカ:作画 『僕はコーヒーが飲めない』 第47話 不都合な真実/第5巻pp.156-157/小学館:刊 2016年)
ジャマイカのCIB(コーヒー産業公社)の品質規格は、現在に至るまでどんどん緩くなっている。ブルーマウンテンの最大欠点数は2%から3%へと緩められた(トリアージュは4%から5%へと緩められた)。スクリーン規格の基準以下の最大混入率は4%から5%へと緩められた(ピーベリーは4%から10%へと緩められた)。これはすべてNo.1規格も含めた変更である。さらに、トリアージュのB級品を生み出したり、規格名を‘セレクト’と変えたり、生豆の輸出規格外の焙煎加工品もブルーマウンテンと称したり、最近でも《コーヒー豆の足りない分を補うために》無茶苦茶なことを仕掛けて夢見ている。ハリケーンと干ばつと山火事と病虫害によって《不都合な真実》が続く時、ジャマイカのブルーマウンテンコーヒーにナンバーワン(No.1)はあるのか?
カフェ・ド・ランブルにナンバーワン(No.1)はあるのか?
《「No.2 カフェ・クレーム」、「No.3 カフェ・ノワール」。老舗コーヒー店「カフェ・ド・ランブル」のメニューには番号が振られている。しかし、どこを探してもNo.1は見当たらない。「うちのコーヒーに一番はありません。酸味や苦味、甘みはすべて飲む人の好み。なにがベストか、そればっかりは今でもわからない」 関口一郎さん、御年102歳。コーヒー界を代表する存在だ。》 (ぴあMOOK 『珈琲ぴあ』 p.20/ぴあ:刊 2016年)
《あれ、関口さん、No.1がありませんね。 「そう、そ」 〝濃厚ブラック〟がNo.3とNo.6で、濃いコーヒーがNo.2、4、5、8となっていて、No.1はどこにも見当たらない。 「あのね、昔、百円だったでしょ、開店当時。でね、高すぎて困るお客さんのために、六十円だったかな、を出してた」 サービスNo.ってわけですね。 「そ。そ。いまはもう、やめました」 〝No.1がない〟なんて妙に意味深なことも、きいてみれば、どうってことない。》 (森尻純夫 『銀座カフェ・ド・ランブル物語 ──珈琲の文化史』 p.114/TBSブリタニカ:刊 1990年)
老舗で《コーヒー界を代表する存在》のカフェ・ド・ランブルにとって、あったのかなかったのか《そればっかりは今でもわからない》のが、メニューのNo.1である。10年20年と生豆を熟成(エージング)すると味わいが変わる‘オールドコーヒー’のように、店主の記憶も熟成されて変容し、夢見てしまうのだろうか? そう、そ、そ。《コーヒー界を代表する存在》が消えた時、カフェ・ド・ランブルにナンバーワン(No.1)はあるのか? あってもなくても《どうってことない》、そう、そ、そ。
ナンバーワン(No.1)のコーヒーとは、どのようなコーヒーだろう? ナンバーワン(No.1)のコーヒーを探すことを夢見てみよう。♪ The tide is high but I'm holding on. I'm gonna be your number one. Number one, number one. ♪ 波は高いけれども私はあきらめない。コーヒーにとってナンバーワン(No.1)に私はなってみせる。例えば、映画『函館珈琲』には《夢なんて見なければよかった》というメモが映し出されていたが、そんなことはない…‘真実’を見抜くことに不得手で《不都合な真実》には口を噤み続けるコーヒーの業界だけれども、拠り所もなく目途も立たないままで愚かな‘夢’を語ることは常套だ。コーヒーの夢見るナンバーワン(No.1)だ!
ブラジルのコーヒーにナンバーワン(No.1)はあるのか?
《また外見上の精選度合で分けられているブラジルは、三〇〇グラムのサンプル中の欠点豆を数え、少ない順に等級付けするものです。ブラジルは4欠点以下でも、No.2と評価されてしまうようです。それはゼロ欠点は非常に例外なので、仮にそのとき、欠点なしのNo.1ができたとしても生産量は少なく、安定供給ができません。そのうえ、No.1を選出することで、No.2が減ってしまうというデメリットを上回るだけの高価格で取引されることは難しいでしょう。ここでは少しでも多くのNo.2を作るほうが、利益が上がるわけです。いま述べた分類法は、外見上の精選度合の格付けですから、味の表現とは無関係です。》 (田口護 『コーヒー味わいの「こつ」』 pp.32-33/柴田書店:刊 1996年)
世界最大のコーヒー生産国であり輸出国であるブラジルにとって、コーヒーは格付けを判定するものではなくて輸出産品としての等級を作り出すものである。だから、No.1は‘ない’のではなくて‘つくらない’のだ。そして、現在のブラジルはコーヒーの国内需要が増えて、世界最大の消費国へと夢見ている。生産と消費が共に世界最大になった時、ブラジルのコーヒーにナンバーワン(No.1)はあるのか?
ジャマイカのコーヒーにナンバーワン(No.1)はあるのか?
《ただし品質が低下しても、ブルーマウンテンNo.1はブルーマウンテンNo.1です。品質規格の変更は生産国の裁量によって変更可能です。ハリケーンから4年後、収穫が再開された1992年です。コーヒー豆の足りない分を補うために、それまで島から持ち出すことも禁止だったトリアージュと呼ばれる低級品も輸出品に加わりました。当然ながらブルーマウンテンの品質はガタ落ちしました。(RDC主宰 天堂周伍郎)》 (川島良彰:監修 福田幸江:原作 吉城モカ:作画 『僕はコーヒーが飲めない』 第47話 不都合な真実/第5巻pp.156-157/小学館:刊 2016年)
ジャマイカのCIB(コーヒー産業公社)の品質規格は、現在に至るまでどんどん緩くなっている。ブルーマウンテンの最大欠点数は2%から3%へと緩められた(トリアージュは4%から5%へと緩められた)。スクリーン規格の基準以下の最大混入率は4%から5%へと緩められた(ピーベリーは4%から10%へと緩められた)。これはすべてNo.1規格も含めた変更である。さらに、トリアージュのB級品を生み出したり、規格名を‘セレクト’と変えたり、生豆の輸出規格外の焙煎加工品もブルーマウンテンと称したり、最近でも《コーヒー豆の足りない分を補うために》無茶苦茶なことを仕掛けて夢見ている。ハリケーンと干ばつと山火事と病虫害によって《不都合な真実》が続く時、ジャマイカのブルーマウンテンコーヒーにナンバーワン(No.1)はあるのか?
カフェ・ド・ランブルにナンバーワン(No.1)はあるのか?
《「No.2 カフェ・クレーム」、「No.3 カフェ・ノワール」。老舗コーヒー店「カフェ・ド・ランブル」のメニューには番号が振られている。しかし、どこを探してもNo.1は見当たらない。「うちのコーヒーに一番はありません。酸味や苦味、甘みはすべて飲む人の好み。なにがベストか、そればっかりは今でもわからない」 関口一郎さん、御年102歳。コーヒー界を代表する存在だ。》 (ぴあMOOK 『珈琲ぴあ』 p.20/ぴあ:刊 2016年)
《あれ、関口さん、No.1がありませんね。 「そう、そ」 〝濃厚ブラック〟がNo.3とNo.6で、濃いコーヒーがNo.2、4、5、8となっていて、No.1はどこにも見当たらない。 「あのね、昔、百円だったでしょ、開店当時。でね、高すぎて困るお客さんのために、六十円だったかな、を出してた」 サービスNo.ってわけですね。 「そ。そ。いまはもう、やめました」 〝No.1がない〟なんて妙に意味深なことも、きいてみれば、どうってことない。》 (森尻純夫 『銀座カフェ・ド・ランブル物語 ──珈琲の文化史』 p.114/TBSブリタニカ:刊 1990年)
老舗で《コーヒー界を代表する存在》のカフェ・ド・ランブルにとって、あったのかなかったのか《そればっかりは今でもわからない》のが、メニューのNo.1である。10年20年と生豆を熟成(エージング)すると味わいが変わる‘オールドコーヒー’のように、店主の記憶も熟成されて変容し、夢見てしまうのだろうか? そう、そ、そ。《コーヒー界を代表する存在》が消えた時、カフェ・ド・ランブルにナンバーワン(No.1)はあるのか? あってもなくても《どうってことない》、そう、そ、そ。
ナンバーワン(No.1)のコーヒーとは、どのようなコーヒーだろう? ナンバーワン(No.1)のコーヒーを探すことを夢見てみよう。♪ The tide is high but I'm holding on. I'm gonna be your number one. Number one, number one. ♪ 波は高いけれども私はあきらめない。コーヒーにとってナンバーワン(No.1)に私はなってみせる。例えば、映画『函館珈琲』には《夢なんて見なければよかった》というメモが映し出されていたが、そんなことはない…‘真実’を見抜くことに不得手で《不都合な真実》には口を噤み続けるコーヒーの業界だけれども、拠り所もなく目途も立たないままで愚かな‘夢’を語ることは常套だ。コーヒーの夢見るナンバーワン(No.1)だ!
コメント
to:浅野嘉之さん
帰山人
URL
[2016年11月02日 11時21分]
CCAJ賞のコトですか? 《凄い本が二冊》は科学とアウシュヴィッツだと推察しますが、モカ幸せなど良書は他にもあります。授賞対象が書籍とは限りませんしね。私が選定者として明言できることは、授賞は一つだということです。引き分けを作るくらいならば賞を贈る意義がない。
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アウシュビッツのコーヒー
いやはや
同年に凄い本が二冊も
今年はダブル受賞もあるのかと
ふと心配に