珈琲えくすぽ
コーヒーとEXPO(博覧会)との関係は数知れないが、その一部のみ‘exposition’(解説)。
2014年5月26日に満百歳を迎える関口一郎氏(銀座「カフェ・ド・ランブル」店主)が浅草で生まれた時、近くの上野公園では「東京大正博覧会」(1914年3月20日~7月31日)が開催されていた。この東京府主催の博覧会では、ブラジルコーヒーの飲用普及を狙って《…染織別館に接して風月堂の茶店及カフェーパウリスタがある》(白木屋呉服店『東京大正博覧会案内記』)ほか、横浜のカルノー商会がモカコーヒーを、小笠原島父島の小田嘉世治もコーヒーを出品して受賞した(『東京大正博覧会出品審査概況 附・受賞人名簿』)。
小笠原伊豆諸島館で帰化島人のお給仕
《…檳榔樹の丸柱を用ひ、屋根は同樹の葉を用ひ特に天井を設けないで、内部から屋根の裏面を見えるやうにし、壁には林投葉、俗にタコといふ葉の編物を粘付して小笠原島の家根(かおく)を建て、観覧人にコーヒーを出す仕組みでありますが、その給仕人は同島に帰化した俗にカナカといふ黒色人種及び漂流して土着となれる白色人を出すことになつて居ります。》
(『東京大正博覧会観覧案内』/文洋社/1914年)
「東京大正博覧会」開催の8年前には、‘Esposizione Internazionale del Sempione’通称「ミラノ万国博覧会」(1906年4月28日~11月11日)が開催された。このミラノ万博は、同年5月19日に運用が開始された世界最長(当時~1982年)の鉄道トンネル(シンプロントンネル)事業を祝賀して催された。また、ベゼラ(Luigi Bezzera)が1902年に取得したエスプレッソマシンの特許を、パボーニ(Desiderio Pavoni)が買い取って1905年より製造を開始して、そしてこの1906年のミラノ万博に‘Bezzera’の名を掲げて‘Caffe・Espresso’と表記して出品したことが、‘エスプレッソ’コーヒーの序開であるとされている。
1906年のミラノ万博とエスプレッソに関わる由緒から、例えば、国際カフェテイスティング協会日本支部(IIAC Japan)は2010年より《毎年4月16日を「イタリアエスプレッソデー」と称し》ている。だが、日本を含めて各国の「イタリアエスプレッソデー」は、毎年4月の中旬に催されている…当時のミラノ万博の開催日より前に記念日を制定する理由は? 不可解。また、この1906年は、コーヒーを外貨獲得の主産物とするブラジルが伸長する自国のコーヒー生産に対して価格維持政策による政府介入(買上げ在庫調整)の第一次を始めた年…イタリアは万博でエスプレッソの国へ、ブラジルは政策で供給大国へ、歩み始めていた。
そして、1906年ミラノ万博から109年後の来2015年、再びミラノで博覧会が開催される。‘EXPO Milano 2015’通称「ミラノ国際博覧会」(2015年5月1日~10月31日/登録博)である。このミラノ国際博覧会のテーマは、‘Feeding the Planet, Energy for Life’「地球に食料を、生命にエネルギーを」…つまりは‘食’の国際博。注目するべきは、クラスターと呼ばれる(国別・地域別ではなくて、関連国が複数で参加する)テーマ別の構成要素。「乾燥地帯における農業と栄養」、「島・海・食」、「地中海の生物:健康・美しさ・調和」、「穀物と塊茎:旧来の作物と新しい作物」、「コメ:豊富さと安全性」、「果実と豆類」、「世界のスパイス」、「ココア:神の食物」、「コーヒー:アイデアの原動力」、9つのクラスターを展開する。
コーヒークラスターの展示テーマとは、‘Dalla terra alla tazzina’「大地からカップまで」。コーヒークラスターの総面積は4427平方メートル、そのパビリオンはアフリカと中央アメリカのコーヒー農園から着想され、熱帯雨林のシェードツリーが拡がる枝を想わせる構築物で形成される。このコーヒークラスターへの参加国には、ブルンジ、コスタリカ、エルサルバドル、エチオピア、グァテマラ、ケニア、ルワンダ、ウガンダ、イエメンなど約10ヵ国が予定されていて、公式スポンサーはイッリカッフェ(イリー)社である(※開催国「イタリア館」の公式スポンサーはラバッツァ社)。いずれにしても、BIE条約に基づく国際博(万博)において「コーヒー」をテーマにしたパビリオンが出展されることは興味深い(※BIE国際博としては日本でも1985年「国際科学技術博覧会」でUCCコーヒー館が出展された例などがある)。
ミラノ国際博覧会の会場より南へ約25kmには、チンバリ社の本拠と、同社が創業100周年を迎えた2012年に記念で開設されたMUMAC(Museo della Macchina per Caffè:コーヒーマシン博物館)もある。来2015年のミラノは、一段とエスプレッソコーヒーの街か?
EXPO(博覧会)のコーヒーは、外で解くよりも訪れて‘exposure’(接触体験)が望ましい。
2014年5月26日に満百歳を迎える関口一郎氏(銀座「カフェ・ド・ランブル」店主)が浅草で生まれた時、近くの上野公園では「東京大正博覧会」(1914年3月20日~7月31日)が開催されていた。この東京府主催の博覧会では、ブラジルコーヒーの飲用普及を狙って《…染織別館に接して風月堂の茶店及カフェーパウリスタがある》(白木屋呉服店『東京大正博覧会案内記』)ほか、横浜のカルノー商会がモカコーヒーを、小笠原島父島の小田嘉世治もコーヒーを出品して受賞した(『東京大正博覧会出品審査概況 附・受賞人名簿』)。
小笠原伊豆諸島館で帰化島人のお給仕
《…檳榔樹の丸柱を用ひ、屋根は同樹の葉を用ひ特に天井を設けないで、内部から屋根の裏面を見えるやうにし、壁には林投葉、俗にタコといふ葉の編物を粘付して小笠原島の家根(かおく)を建て、観覧人にコーヒーを出す仕組みでありますが、その給仕人は同島に帰化した俗にカナカといふ黒色人種及び漂流して土着となれる白色人を出すことになつて居ります。》
(『東京大正博覧会観覧案内』/文洋社/1914年)
「東京大正博覧会」開催の8年前には、‘Esposizione Internazionale del Sempione’通称「ミラノ万国博覧会」(1906年4月28日~11月11日)が開催された。このミラノ万博は、同年5月19日に運用が開始された世界最長(当時~1982年)の鉄道トンネル(シンプロントンネル)事業を祝賀して催された。また、ベゼラ(Luigi Bezzera)が1902年に取得したエスプレッソマシンの特許を、パボーニ(Desiderio Pavoni)が買い取って1905年より製造を開始して、そしてこの1906年のミラノ万博に‘Bezzera’の名を掲げて‘Caffe・Espresso’と表記して出品したことが、‘エスプレッソ’コーヒーの序開であるとされている。
1906年のミラノ万博とエスプレッソに関わる由緒から、例えば、国際カフェテイスティング協会日本支部(IIAC Japan)は2010年より《毎年4月16日を「イタリアエスプレッソデー」と称し》ている。だが、日本を含めて各国の「イタリアエスプレッソデー」は、毎年4月の中旬に催されている…当時のミラノ万博の開催日より前に記念日を制定する理由は? 不可解。また、この1906年は、コーヒーを外貨獲得の主産物とするブラジルが伸長する自国のコーヒー生産に対して価格維持政策による政府介入(買上げ在庫調整)の第一次を始めた年…イタリアは万博でエスプレッソの国へ、ブラジルは政策で供給大国へ、歩み始めていた。
そして、1906年ミラノ万博から109年後の来2015年、再びミラノで博覧会が開催される。‘EXPO Milano 2015’通称「ミラノ国際博覧会」(2015年5月1日~10月31日/登録博)である。このミラノ国際博覧会のテーマは、‘Feeding the Planet, Energy for Life’「地球に食料を、生命にエネルギーを」…つまりは‘食’の国際博。注目するべきは、クラスターと呼ばれる(国別・地域別ではなくて、関連国が複数で参加する)テーマ別の構成要素。「乾燥地帯における農業と栄養」、「島・海・食」、「地中海の生物:健康・美しさ・調和」、「穀物と塊茎:旧来の作物と新しい作物」、「コメ:豊富さと安全性」、「果実と豆類」、「世界のスパイス」、「ココア:神の食物」、「コーヒー:アイデアの原動力」、9つのクラスターを展開する。
コーヒークラスターの展示テーマとは、‘Dalla terra alla tazzina’「大地からカップまで」。コーヒークラスターの総面積は4427平方メートル、そのパビリオンはアフリカと中央アメリカのコーヒー農園から着想され、熱帯雨林のシェードツリーが拡がる枝を想わせる構築物で形成される。このコーヒークラスターへの参加国には、ブルンジ、コスタリカ、エルサルバドル、エチオピア、グァテマラ、ケニア、ルワンダ、ウガンダ、イエメンなど約10ヵ国が予定されていて、公式スポンサーはイッリカッフェ(イリー)社である(※開催国「イタリア館」の公式スポンサーはラバッツァ社)。いずれにしても、BIE条約に基づく国際博(万博)において「コーヒー」をテーマにしたパビリオンが出展されることは興味深い(※BIE国際博としては日本でも1985年「国際科学技術博覧会」でUCCコーヒー館が出展された例などがある)。
ミラノ国際博覧会の会場より南へ約25kmには、チンバリ社の本拠と、同社が創業100周年を迎えた2012年に記念で開設されたMUMAC(Museo della Macchina per Caffè:コーヒーマシン博物館)もある。来2015年のミラノは、一段とエスプレッソコーヒーの街か?
EXPO(博覧会)のコーヒーは、外で解くよりも訪れて‘exposure’(接触体験)が望ましい。
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