「タイムマシンに乗れないぼくたち」 孤独や寂しさは誰にでもある。
一人の方が楽だ。
勿論学生時代や職場では浮かないように、
仲の良い何人かでつるんで行動していたが、
人に合わせるのも疲れるといつも思っていた。
友人たちと遊ぶのは勿論楽しかった。
しかし約束をすると少し憂鬱になる。
その時間は楽しいのに、
家に帰って一人になるとどっと疲れた。
一人で行動している人も、
友人と楽しそうに行動している人も、
寂しさだったり居心地の悪さを感じていると思う。
生きづらさがない人間なんていないでしょう。
7話の短編集。
表題の「タイムマシンに乗れないぼくたち」
の中には私も見たことがある、
ドラえもんの映画の話しが出てくる。
ドラえもんは主人公が困ると、
道具を使って助けてあげる話しが多い。
しかしこの小説は孤独や生きづらさ、
普通とは違う主人公が劇的な変化は遂げないし、
問題が解決するわけでもない。
どうしようもないことは解決しなくていいし、
いちいち真正面から闘わなくてもいい。
そっと寄り添ってくれる内容の7編だった。
自分は殺し屋だと設定の中で生きる。
私も仕事が嫌な時は、
「今日は職場に行くだけ」
「仕事はしなくていい行くだけ」
とはよく思っていたが設定を生きるとは面白い。
空想の設定の世界。
現実逃避。
それで心が軽くなるならそれもよし。
ずっとは無理だけど避難先は必要だ。
自分が好きなお菓子だったり、
映画だったり俳優だったり、
好きなものや好きなことは安定剤になるよね。
小説はまさに私の安定剤。
昔は「カンフル剤」のような物語が好きだった。
劇的に変化するとか解決するとか、
白黒ハッキリつけるような、好転するような、
「私も頑張ろう!!!」
とポジティブに叫びたくなるような大団円。(苦笑)
どうしようもならないこともある。
治らない病気もある。
グレーなこともある。
でも今を生きなければならない。
今の私に必要なのはカンフル剤より安定剤。
寺地さんの小説は、
「今日のハチミツ、あしたの私」からずっと、
私の安定剤です。
私もタイムマシンには乗れそうもないが、
今をぼちぼち生きていこうと思う。
たまに厄介な大事な人と共に。