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2014-03

NHK籾井新会長の進退と安倍政権

 本日発売の文藝春秋4月号でNHKの新会長問題を取り上げました。以下、冒頭――。

 国会に参考人招致されている当事者でありながら、さほど緊張感が伝わってこない。NHK新会長の籾井勝人(七十)を見ていると、そんな特異なキャラクターを痛感させられる。
「(衆院)予算員会の答弁にあたっては、官邸の菅(義偉)官房長官から直接電話がかかって来て、細かい指示を受けてきたみたいです。籾井さんはそれを『また菅さんから電話がかかってきちゃった』と能天気に吹聴してしまう。だから周囲のNHK職員は心配し、『会長、そういうことはお話ししないほうがいいですよ』と注意する一幕もありました」
 そう打ち明けるNHK職員もいる。NHK内部では、そんな新会長をもはや庇いきれないという声まで上がっている。が、当の本人はあまり深刻にとらえていないというから、驚きだ。
 軽量級と称される籾井新会長は、一月二十五日の就任会見でおこなった自らの従軍慰安婦問題発言などにより、早々に窮地に立たされてしまった。なにしろ国際放送について「政府が右と言っているものを左というわけにはいかない」とまで言う。それでいてマスメディアのトップの意見ではなく、個人的な見解だとの言い逃れが通用するわけもない。衆院予算員会や総務委員会で追及され、右往左往するあり様がNHKの国会中継で放映されるたび、呆れた視聴者も少なくないだろう。
 おまけに問題噴出から間もない二月十二日に開かれたNHK内部の経営委員会の席上では、「発言を取り消しているし、どこが悪いのか」と開き直っていた事実まで判明。国会の集中審議で民主党の大串博志にそこを突っ込まれると、「まだ議事録が公表されていないので、コメントできない」と返答するのが精いっぱいだった。NHK職員(前出)が嘆く。
「国会では、元総務省担当記者で新たに経営企画室に異動になった秘書役が後ろに付きっきりで、二人羽織のようにペーパーを差し出しながら『(興奮せず)落ち着いてください』なんてやっている。秘書役は〝業務指定〟と称される記者以外の仕事をしながら、なんとか新会長を支えていますが、そこに官邸の指示がある。慰安婦や右向け右発言など五項目について、どれとどれを撤回するかで揉めた揚げ句、結局すべて取り消さざるを得なくなりました。そこまで官邸に振り回されています」

 それにしても官邸の介入ぶりは目にあまる。衆参の総務委員会で野党がどう出るか、見ものです。

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プロフィール

森功

Author:森功
福岡県出身のノンフィクション作家。08年「ヤメ検」09年「同和と銀行」(ともに月刊現代)の両記事で2年連続「雑誌ジャーナリズム賞作品賞」。18年「悪だくみ 『加計学園』の悲願を叶えた総理の欺瞞」(文藝春秋)が大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
主な著作は「サラリーマン政商」(講談社)、「黒い看護婦」「ヤメ検」(ともに新潮文庫)、「許永中」「同和と銀行」(講談+α文庫)、「血税空港」「腐った翼」(幻冬舎)、「泥のカネ」(文藝春秋社)、「狡猾の人――防衛省を食い物にした小物高級官僚の大罪」(幻冬舎)、「なぜ院長は『逃亡犯』にされたのか――見捨てられた原発直下『双葉病院』恐怖の7日間」、「大阪府警暴力団刑事『祝井十吾』の事件簿」(講談社)、「平成経済事件の怪物たち」(文春新書)、「紛争解決人 世界の果てでテロリストと闘う」(幻冬舎)、「現代日本9の暗闇」(廣済堂出版)、「日本を壊す政商 パソナ南部靖之の政・官・芸能人脈」(文藝春秋)、「総理の影 菅義偉の正体」(小学館)、「日本の暗黒事件」(新潮新書)「高倉健 七つの顔を隠し続けた男」(講談社)、「悪だくみ 『加計学園』の悲願を叶えた総理の欺瞞」(文藝春秋)、「地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団」(講談社)、「官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪」(文藝春秋)、「ならずもの井上雅博伝 ヤフーを作った男」(講談社)、「鬼才 伝説の編集人齋藤十一」など。最新刊「バブルの王様森下安道 日本を操った地下金融」(小学館)、「国商 最後のフィクサー葛西敬之」(講談社)

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