五輪汚職の原点「高橋兄弟」
特捜部は元電通専務にして組織委員会の理事だった高橋治之(78)の動きを中心に、捜査を組み立ててきた。その高橋について、忘れてならない存在が実弟の治則である。単なる偶然かもしれないが、今度の事件にはやたら兄弟が登場する。最初に高橋治之に対する贈賄容疑で逮捕されたのが、紳士服「AOKIホールディングス」前会長の青木拡憲(83)と副会長の青木宝久(76)兄弟だ。事件では、弟の宝久が大会組織委会長の森の接待という役回りを演じている。
続いて特捜部が挙げた大手出版「KADOKAWA」会長の角川歴彦(79)には、かつてコカインの密輸容疑で千葉県警に検挙された角川春樹(80)という一つ上の兄がいる。こちらは長らく兄弟の不仲が囁かれ、会社を追われた兄に代わって経営の舵を握った弟の焦りが、事件の遠因とみる向きもある。
そして、高橋兄弟だ。1944年4月生まれの治之に対して治則の誕生は45年10月だから、こちらも1歳違いだ。二人は角川兄弟と違い、非常に仲がいい。ともに慶応幼稚舎から慶応中高、慶大法学部に進んだ。ちなみに参考人聴取が明らかになったJOC前会長の竹田も、兄弟そろって慶応高校から慶大というエスカレーターに乗って進学してきた。高橋治則一人、高校時代に世田谷高校に転向して寄り道したているが、竹田兄弟も学生時代から高橋兄弟と親しくしてきた間柄だ。少年時代の高橋兄弟について、友人の一人が次のように打ち明ける。
「高橋兄弟は兄が東京、弟が疎開先の長崎平戸で生まれていますが、父親の義治は大変な方で、戦中、満州にわたって荒稼ぎしたといわれます。日本で初めてナイロンストッキングを輸入した人だそうで、幼少期から息子たちを慶応に通わせた。なんでも小学生がベンツで送り迎えされていたらしい」
(以下略)