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2025-01

携帯電話料金引き下げ「菅政権」のチグハグな言い分

 菅政権の看板政策である携帯電話料金の引き下げ要請には、根本的な矛盾をはらんでいます。市場競争原理主義の菅さんやその経済ブレーンたちは、あたかも大手3社による寡占状態が携帯料金の高止まりの元凶であるかのように非難しています。それが既得権益であり、打ち破らなければならない、と。
 その一方、携帯の電波は公共インフラなので、これを利用する業者は極めて公的事業の性格が強いと言います。したがって3社が政府の言うことをきかなければ電波使用料を引き上げるぞ、とブラフをかけています。自由競争を謳いながら、完全な規制の強化。いったいどっちをやりたいのでしょうか。
 携帯料金が下がるのは誰もが歓迎するのでキャッチ―な政策ではあります。菅さんは楽天のような新規参入業者の意見を聞き入れ、料金を引き下げることができる、と単純に考えているのでしょうが、そう簡単ではありません。ことは障害のない電波の安定供給、さらにこの先の通信事業に対する国家戦略の問題でもあります。
 携帯料金は電力の自由化問題と似ていいます。たしかに公共性の強い業種であり、だからこそ規制も必要。欧米のように自由化した挙句に新規参入業者か淘汰され、逆に寡占化して電気料金が高止まりする危険性もある。単に人気が出るから、というだけの政策では行き詰ってしまいますよ。

ウーバーの限界「欧州では嫌われ者」

 カリフォルニアで流行り、全米に広がった廃車アプリ「ウーバーテクノロジーズ」の苦境。今度はロンドンで運転手のなりすましが問題になり、営業できなくなりそうな雲行きです。たしかにウーバーはサンフランシスコなどで日常的に使われ、「ドライバーの評価がシステムに組み込まれているのでむしろタクシーよりサービスがいい」なんて持ちあげる人もいました。
 ただ、実際のウーバー人気は米国や東南アジアにとどまっているようで、米国好きの日本人が囃し立てているに過ぎない気もします。たとえばタクシーやバスが有名なロンドンに行くと、ウーバーの必要性は感じませんし、利用者も年間350万人と大したことはありません。そこへもってきて今度の1万4000件のなりすまし。雲助の心配が的中――。

浜松市の水道民営化「延期」の裏事情

 浜松市の鈴木康友市長が、予定していた上水道事業の民営化計画を延期すると発表しました。いわゆるコンセッションと呼ばれる新たな公共事業民営化の仕組みで、日本中にいろんな計画があります。コンセッションについての詳細は、週刊ポストの短期集中連載記事「偽装民営化の罠」を参照していただきたく思いますが、問題が多いのはたしかです。
 とりわけ水道については、水メジャーの仏「ヴェオリア」と「スエズ」をはじめ、外資企業がインフラ資産120兆円といわれる日本の水道民営化市場を虎視眈々と狙っています。外資に公共事業を任せることを含め、検討課題はけっこうありますが、加えて内閣府や官邸主導の進め方にも問題ありかも。
 浜松市は一足先に昨年来、下水道事業のコンセッション方式による民営化を始めており、上水道はその延長線上のようなもの。これに対し東京都は民営化を拒否しています。今度の浜松市の民営化計画延期は、来る4月の市長選対策ともいわれますので、そのあたりも要注意でしょう。

移民政策よりまずは国内環境の改善

 閣議決定された入管法の改正により、外国人労働者受け入れ問題の議論が活発になっています。人手不足している業種に外国人を受け入れるという、誰が見ても移民政策。介護、農業、飲食、サービス――。つまるところ、賃金が安いので日本人が働きたがらないから、そこを移民で埋めようとしているだけにすぎません。たとえば介護師を志そうとする人たちはいますが、あまりに給料が安いのでなり手がない。外国人なら安い給料でも文句は言わないだろう、という発想です。
 これでは欧州と同じ分断国家、格差社会ができるのは目に見えています。労働問題を唱えるなら、その人手不足の業種に関する環境整備が先。国内問題なのです。
 財源問題、消費税の使い道を含め、そこを避けるための移民政策という政府のすり替えは、将来に禍根を残すというほかありません。ここでも、儲かるのは総理のお友だちという話。

格差社会を広げる働き方改悪

 働き方の選択肢を広げるという旗印の下、働き方改革として高プロなどを含む関連法が成立しました。これに対し、ある専門家に意見をうかがうと、改革どころか改悪だと憤っていました。労働の自由化はこの20年のあいだどんどん進められ、同一労働賃金という謳い文句に乗せられてマスコミも批判はしません。が、その実、20年間で非正規雇用が2割から4割に増え、全労働者の8割の中小企業社員の賃金はまったく上がらっていないといいます。生産性が下がっている原因も中小企業の賃金が上がらないからであり、労働の根本問題はそこにある……。
 大企業の従業員のベアや給料アップばかりがクローズアップされていますけど、中小には労働組合も少なく、賃金が抑えられているから、いくら日銀が金融緩和政策をとっても日本全体の購買力にはほとんど影響なく、物価があがるわけがありません。そんなことは少し考えれば誰もがわかりそうなものですが。
 

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プロフィール

森功

Author:森功
福岡県出身のノンフィクション作家。08年「ヤメ検」09年「同和と銀行」(ともに月刊現代)の両記事で2年連続「雑誌ジャーナリズム賞作品賞」。18年「悪だくみ 『加計学園』の悲願を叶えた総理の欺瞞」(文藝春秋)が大宅壮一ノンフィクション賞受賞。
主な著作は「サラリーマン政商」(講談社)、「黒い看護婦」「ヤメ検」(ともに新潮文庫)、「許永中」「同和と銀行」(講談+α文庫)、「血税空港」「腐った翼」(幻冬舎)、「泥のカネ」(文藝春秋社)、「狡猾の人――防衛省を食い物にした小物高級官僚の大罪」(幻冬舎)、「なぜ院長は『逃亡犯』にされたのか――見捨てられた原発直下『双葉病院』恐怖の7日間」、「大阪府警暴力団刑事『祝井十吾』の事件簿」(講談社)、「平成経済事件の怪物たち」(文春新書)、「紛争解決人 世界の果てでテロリストと闘う」(幻冬舎)、「現代日本9の暗闇」(廣済堂出版)、「日本を壊す政商 パソナ南部靖之の政・官・芸能人脈」(文藝春秋)、「総理の影 菅義偉の正体」(小学館)、「日本の暗黒事件」(新潮新書)「高倉健 七つの顔を隠し続けた男」(講談社)、「悪だくみ 『加計学園』の悲願を叶えた総理の欺瞞」(文藝春秋)、「地面師 他人の土地を売り飛ばす闇の詐欺集団」(講談社)、「官邸官僚 安倍一強を支えた側近政治の罪」(文藝春秋)、「ならずもの井上雅博伝 ヤフーを作った男」(講談社)、「鬼才 伝説の編集人齋藤十一」など。最新刊「バブルの王様森下安道 日本を操った地下金融」(小学館)、「国商 最後のフィクサー葛西敬之」(講談社)

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