台風18号の大雨による避難勧告の最中に、自宅でツイッタ―三昧に耽る(ふける)橋下大阪市長の“倒錯した”リーダーシップと責任感、堺市長選の分析(その14)、改憲勢力に如何に立ち向かうか(44)

 これほど無責任極まる人物に大阪市政は任せておけない! まして台風18号の大雨による避難勧告の最中に隣の堺市長選のツイッターにうつつを抜かすとはーーー。『日刊ゲンダイ』(9月17日)や朝日新聞(9月19日)を読んだ人々は皆そう思ったのではないか。災害時など緊急事態ほどリーダーの資質や真価が問われるときはない。福島第1原発事故発生直後の東京電力首脳部の無責任な対応がどれほど原発周辺地域の住民の生命を危険にさらしたか、放射能汚染水対策の杜撰(ずさん)さがどれほど原発災害を拡大させて福島県民を苦しめ続けているか、いまもなお、私たちが日々痛感していることだ。

 報道は、まず「JCASTニュース」(ビジネス・メディアウォッチ、9月16日17時48分)から始まった。「橋下大阪市長「久しぶりのツイッター」で「堺市長選」語る 「避難勧告さなかの話題か」とネットで怒りの声」というタイトルだ。その内容は極めて重大なので、以下、詳しく紹介しよう。

 「久しぶりのツイッターだな〜。以前の感覚、忘れちゃった。徐々に取り戻します」——―大阪市が台風18号の暴風域に入り避難勧告などが出された2013å¹´9月16日午前、橋下徹市長がおよそ1か月弱ぶりにツイッターを更新した。最初は台風18号に関連したツイートだったのだが、話は堺市長選へ。危険な状況の続くさなかにする話題かと、ネットユーザーの怒りを買うことになってしまった。

 橋下市長がツイートを開始したのは16日9時半すぎ。大阪市と堺市の境界を流れる大和川流域の水位が上がり避難勧告が出される中、それを告知した上で「市長が個人的にツイッターで知らせるものではありません。これは市役所として組織対応していきます」と宣言した。大和川の状況が落ち着くまで自宅待機で役所と連絡をとるといい、その間に堺市長選挙(15日告示、29日投開票)についてツイートしはじめた。

 「状況が落ち着いてから、堺市長選挙のために堺市内に入ります。ゆえにツイッターで、堺市長選挙について述べます。久しぶりのツイッターだな〜。以前の感覚、忘れちゃった。徐々に取り戻します」

 ツイートは現職の竹山修身堺市長の批判からはじまり、堺市を巻き取った大阪都構想へ。ところが、台風の大阪での勢力がもっとも強いタイミングだったため、「この感覚に驚き」「いいかげんにしろ!状況考えろよ!」などと市民からは怒りのツイートが相次いだ。市長選で維新側の候補と「一騎打ち」する形になる竹山市長がさっそく氾濫した河川の視察に出ていたことがツイッターで伝えられたことなどもあって、「うち(大阪)の市長ときたら」と呆れ返る声も出た。

 こうした批判に対し、橋下市長は「同時に複数の仕事ができるくらいでないと市長などできません。危機管理はちゃんとやっています」と反論。その上で、竹山市長の視察についても持論を展開した。「今回は大きな被害が出ていない。大和川の堤防の状況を見るには、専門的な知識が必要。ゆえにまずは土木担当の副市長が視察に行き、必要な現場指揮をしながら、現場の状況や問題点、そして判断を求める事項等を市長に報告。これが組織マネジメント。今、市長が堤防を見るのは何の目的??」「必要性の乏しいトップ現場視察は現場を混乱させるだけ」(以下略)

 次は、『日刊ゲンダイ』(9月17日)の「人命より選挙か」「橋下大阪市長に避難殺到」「避難勧告も真っ只中でもツイッター三昧で「堺市長選」に没頭」との見出しを付けた辛辣な記事だ。これもJCASTニュースと同様に、橋下市長のツイッターを時間経過に沿って正確に伝えている。

 住民の安全よりそんなに選挙が大事か。「天下分け目の戦」と位置づける堺市長選が15日に告示され、シャカリキになっている日本維新の会の橋下大阪市長。選挙戦にかまけ、災害対策を軽んじるような姿勢に有権者から批判の声が上がっている。日本列島に大きな惨禍を残した台風18号。大阪市でも市内を流れる大和川が氾濫する恐れがあるとして、16日午前8時半に平野区や住吉区などを合わせて13万1000世帯、約30万人に避難勧告が出された。

 なにしろ、大阪市が河川の氾濫を理由に避難勧告を出したのは初めてのこと。市民の不安が最高潮に達していた頃、橋下が何をしていたかというと、自宅でツイッター三昧だったのである。16日の午前9時34分、こんな投稿から始まった。「大和川の状況が落ち着くまで、僕も知事も、自宅で役所との連絡。状況が落ち着いてから、堺市長選挙のために堺市内に入ります」。橋下は「久しぶりのツイッターだな〜」とノンキなもので、その後の投稿は選挙のことばかり。現職の竹山堺市長を攻撃し続けた(略)。

 これが大阪が台風の影響を最も受けていた時間帯だったため、さすがに市民から怒りの声が殺到。ツイッターで「氾濫に備えて水防組織が活動しているのに選挙活動をしている場合なのか」などと苦情が寄せられると、橋下はこう反論した。「こういうことは組織対応するのです。組織マネジメントを勉強するように」、「同時に複数の仕事ができるくらいでないと市長などできません。危機管理はちゃんとやっています」、「市長の仕事は危機管理監への指揮。危機管理監から報告を受けて、判断を求められたら判断をする。それがトップの仕事」。

 大阪府政関係者が言う。「橋下市長の主張にも一理ありますが、竹山市長は予定していた選挙活動を中止し、氾濫した河川の視察に出かけています。堺市長選は維新の会が掲げる大阪都構想への参加の是非が最大の争点で、現職と維新新人の一騎打ち。負ければ、橋下市長の求心力低下は避けられない。後がないのは分かりますが、市民の不安を考えたら、もう少し配慮があってもよかったと思います」。トップの資質が問われる。

 次の「災害時、我こそリーダー」と題する朝日新聞の短い記事は、「堺・竹山市長、現場行き判断」「大阪・橋下市長、慌てずに自宅で」と皮肉たっぷりの見出しを付けて、次のように解説している。

 台風18号で合計34万人に避難を勧告した大阪市の橋下市長と堺市の竹山修身市長が、災害時の「リーダーシップ」を巡ってさや当てを演じている。大和川は大阪市と堺市の境界を流れる。16日の大雨で氾濫の恐れが出たため、大阪市は29万9千人、堺市も4万2千人に避難勧告した。堺市竹山市長は16日午前8時半ごろから川の増水状態を視察し、避難勧告を決めた。同日、記者団に「現場主義がリーダーシップの大きな要。リーダーが判断するにあたって現場を知っていることが一番大事だと思う」と語った。一方の橋下市長は「フリーになるのがトップの役割。ドタバタ慌てふためくのは最悪」と自賛。避難勧告中、自宅からツイッターで堺市長選の話題を連続投稿していたが、「それだけ余裕があるということ」と強調した(略)。

 なお、この間の読売新聞(ディジタル版、9月18日)は、「橋下氏「嫌ならフォローやめれば」…市民批判に」というタイトルで、「橋下氏は、台風接近中も自身の簡易投稿サイト「ツイッター」に堺市長選に関する書き込みを続けたことに市民らから批判が出たことについて、「嫌ならフォローをやめればいい。それだけ余裕があったということだ」と語った」と事実関係のみを(コメント抜きで)報じている。

 これら4つのニュースは、いずれも各社の性格が出ていて非常に興味深いものになっているが、報道されている事実はただひとつでそれのもつ重みは限りなく大きい。読者諸兄(姉)は、これらのニュースを読んで自治体首長たる者の責任やリーダーシップのあり方をどのように判断されるであろうか。私はこの報道に接した時、2011年1月に災害復興調査のために訪れたアメリカルイジアナ州のニューオーリンズ市での出来事(NPО関係者の話)を思い出した。それは2005年8月にニューオーリンズを襲った史上空前の台風「ハリケーン・カトリーナ」の対するジョージ・ブッシュ大統領の対応である。彼は地元州知事やニューオーリンズ市長から必死の思いの救援要請を受け取りながら、テキサス州クロスフォードの自分の牧場から一歩も外に出ようとせず、長い休暇を楽しんでいたのである。(つづく)