地元保守と革新リベラルの連携がなければ、橋下維新(ハシズム)に勝利することはできなかった、堺市政の新しい1頁が開かれた、堺市長選の分析(その24)、改憲勢力に如何に立ち向かうか(54)

 橋下維新の“雪崩的大敗”とまではいかなかったが、6万票(有効投票数の17%)近い大差をつけて竹山陣営が勝利した今回の堺市長選の政治的意義は大きい。橋下氏は昨夜の突然の記者会見で、敗北の理由として「堺市民が大阪都構想を“誤認”した」ことを挙げ、「堺が無くなる」という竹山陣営の選挙キャンペーンを打ち破れなかったと総括した。

 大差で敗北しながらその理由に“堺市民の誤認”を挙げるとは、堺市民を侮辱することこのうえないが、「大阪都構想」そのものが敗因と認めれば、大阪維新の会の存在自体を否定することになるだけに、そう言わざるを得なかったのであろう。それにしてもこのような総括であれば、再選された竹山市長は「堺市民が誤認して選んだ市長」だということになり、地方自治・民主主義の観点からも見過ごすことのできない発言(暴言)ではないか。

 今回の堺市長選の最大の特徴は、地元保守(自民など)と革新リベラル(共産など)が「反橋下維新=反ハシズム」を掲げて連携したことであり、「堺の自治・自由」を守る戦いに無党派層を含む過半数の有権者が参加したことだ。以前にも書いたように、堺市長選挙は平成に入ってからの過去7回のうち5回までが30%台(有権者3人のうち1人しか投票しない)であり、40%を超えたのは前回市長選の44%だけだ。それが一挙に51%と過半数の大台に乗り、有効投票数も前回の29万5千票から33万9千票へ4万4千票も増えたのである。

 NHKの出口調査によれば、竹山候補は自民・民主・公明支持者の8割、共産の9割、無党派の7割から得票し、維新候補は維新支持者の9割、その他各政党支持者から1〜2割、無党派の3割を得票したとされる。また堺市選挙管理委員会の発表によれば、竹山候補は南区(泉北ニュータウンの所在地)を除いた6区でいずれも得票数第1位となった。

 一方それにしても、維新候補が2ヶ月前の参院選(堺市)から4万票も上積みしたことが注目される。これは一騎打ち選挙のため「反竹山票」が全て維新側に流れた結果であろうが、同時に行われた中区・西区・南区の市議補欠選挙では自民2人、維新1人が当選し、3区の有効投票数15万9千票の内訳は、維新6万7千票(42%)、自民5万6千票(36%)、共産3万1千票(19%)となって、得票数・率では維新がトップになった(得票数にくらべて維新の当選者数が少ないのは、中区・西区で自民が僅差で当選したため)。

 このことは、維新は一騎打ちとなった市長選では敗北したものの、堺市の政党対決では依然として力を失っていないことを示している。私がブログで「橋下維新は“雪崩的大敗”必至」と書いたことに対して、竹山陣営からこのような楽観論は「有害で危険」との批判が寄せられたのは、地元選挙通の現実にもとづく厳しい見方を反映したものと改めて認識した。

 今回の堺市市長選がどれほど全国的な政治的意義を持つ選挙であるかについては、これまで繰り返し述べてきた。現在、まだ今朝の朝刊を読んでいないのでこの点については次回あたりで論評したい。だがしかし、いま強調したいことは、再選された竹山市長そして竹山陣営の主力になった自民党は、この選挙は革新リベラル(共産、無党派層など)との連携なくしては絶対に勝利できなかったという事実である。

 この厳然たる現実を忘れて、竹山市政がもし“旧態依然”とした市政に戻るときは、次回市長選挙は今回とは全く違った政治構図で行われる可能性があり得るということだ。私は、竹山候補が選挙事務所で語った当確の弁、「今回の選挙は大阪維新の会と堺市民との戦いでした」という一節を忘れてほしくない。堺市民を背にして戦ったのであれば、これからの4年間は堺市民に対して「背を向ける」ことは許されない。堺市長選挙史上、稀に見る激戦となり過半数の有権者が参加した今回の選挙は、堺市政の新しい歴史の1頁を開く選挙でもあったのである。(つづく)