2010年度政府予算案について
小池政策委員長が談話
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日本共産党の小池晃政策委員長は25日、2010年度政府予算案について、次の談話を発表しました。
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一、本日、政府は来年度予算案を閣議決定した。わが党は、自公政権時代の反国民的な予算からの抜本的転換をはかるためには、軍事費と大企業・大資産家減税という「二つの聖域」に切り込むことが必要だと指摘してきたが、新政権がはじめて編成した予算案は、この聖域を温存した結果、雇用や社会保障、中小企業など国民生活向け予算の拡充は国民の願いから見ればきわめて不十分なものとなり、一方で巨額の国債と「埋蔵金」頼みの予算となった。
一、国民の審判を受けて、子ども手当や高校授業料無料化など、一定の改善もあるものの、厳しさを増す国民のくらしの要求に応えるものとはなっていない。後期高齢者医療制度の廃止は見送られ、来年度には保険料値上げが予定されるなど、国民の強い願いである社会保障の抜本的な拡充は「先送り」された。雇用対策も、中小企業対策も、深刻な状況に対応したものになっていない。民主党が主張していた「国民の生活が第一」とはとても言えない予算案である。
一、民主党は、「財源は無駄を削れば確保できる」といってきたが、現実には、44兆円という当初予算としては過去最高の国債発行にくわえて、1年限りの「埋蔵金」にますます多くを依存する予算となった。子ども手当などの新規施策も次年度以降の財源の保障はまったくなく、今回は先送りされた配偶者控除や成年扶養控除の廃止、消費税などの庶民増税への火種を残すものとなっている。
一、5兆円規模の軍事費はまったく手がつかず、ヘリ空母やミサイル防衛、「思いやり」予算なども温存された。とくに、グアム移転をはじめとした米軍再編経費は、500億円近くも増額された。公共事業予算は削減されたが、スーパー中枢港湾などの大型事業予算は拡充された。「租税特別措置の見直し」は小手先だけにとどまり、研究開発減税や証券優遇税制など大企業・大資産家減税も継続され、贈与税減税など資産家向けの優遇はさらに拡充された。結局、自公政権が「聖域」としてきた分野にはメスが入らないままとなっており、これを転換することが必要だということが、ますます明らかになっている。
初の鳩山予算をみる
“聖域”手つけず迷走
扶養控除やめ 消費増税示唆
記者座談会
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鳩山内閣は25日、政権交代後はじめての予算編成となる2010年度政府予算案を閣議決定しました。その中身は、自民・公明政権を退場させた国民の願いにそったものになったのでしょうか。担当記者で話し合いました。
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対照的な評価
A 鳩山予算の評価はどうだい。
B 生活保護の母子加算継続、児童扶養手当の父子家庭への支給、診療報酬の引き上げなど、国民が声をあげれば、不十分であっても前進すると実感できる面もある。
C これまで毎年2200億円の社会保障関係費の伸びを抑制してきた自民・公明政権時代の抑制路線は通用しない。
B ただ、「後期高齢者医療制度廃止を先送りなんて人をばかにしている」「子ども手当とひきかえに所得税・住民税の扶養控除を廃止しないで」と手厳しい意見も多い。
A 子ども手当の財源に地方負担を求めることは最後までもめた。地方も「地方自治と地方財政を守るためにこれをボイコットする」(松沢成文神奈川県知事)と批判が強い。政府は「地方負担は頭にない」(鳩山首相)といっていたからな。
C 対照的なのは財界の反応だ。御手洗冨士夫日本経団連会長は鳩山税制「改正」について、「エコカー減税の延長、それから研究開発減税も据え置いてもらったし、私は評価しています」と絶賛している。
A 財界の要望どおりというわけだ。一方で、「マニフェスト(政権公約)そのものに無理があった」とある財界幹部はいう。
混迷の末決着
B それにしても来年度予算案は決着までに混迷・迷走したな。
C 過去10年間の予算案はすべて24日に閣議決定されている。25日に閣議決定されたのは11年ぶりだ。税制「改正」大綱は遅れに遅れ、一時は越年予算編成もささやかれた。結局、小沢一郎民主党幹事長の「小沢裁定」でマニフェスト修正を決断して、一気に動きだした。
A マニフェスト絶対主義の破たんだ。なにせ概算要求段階で予算規模が約95兆円にまで膨れ上がった。景気低迷で税収も落ち込み、どうやってマニフェスト施策の財源を確保するかが迷走の始まりだった。
B その結果が借金(国債増発)と「埋蔵金」(税外収入)頼みの予算というわけか。
C 鳴り物入りで始まった行政刷新会議の「事業仕分け」でも、目標の3兆円には程遠い6000億円しかねん出できなかった。
A もともと「事業仕分け」自体、スーパー中枢港湾などの大型公共事業と軍事費は聖域にし、甘口の切り込みだった。逆にばっさり切り込んだのは暮らしや社会保障、中小企業関連の予算だった。科学予算削減への科学者の反発もすごかった。
B 税制「改正」でも大企業・大資産家減税は依然聖域だったな。大企業に大きな恩恵を与える研究開発減税の上乗せ措置は延長され、一部大資産家が巨額の減税を受ける証券優遇税制も温存された。
C 結局、予算案では、軍事費は微増とまさに「聖域」扱いされた。米軍再編関係経費は大幅増額だ。
A ゆきすぎた大企業・大資産家減税と軍事費という「二つの聖域」に手を付けないことが、混迷の大本だ。
自公と同じだ
B マニフェストの目玉だった子ども手当は、その財源として住民税の扶養控除の廃止が盛り込まれた。高校授業料「実質無償化」の財源は所得税・住民税の特定扶養控除縮小だ。これらは総選挙時の政策集ではやらないといっていた項目だ。
A 一方で、マニフェストに盛り込まれていた「後期高齢者医療制度の廃止」や中小企業向け減税は先送りだ。
B 政府税制調査会の司会を担当した峰崎直樹財務副大臣は24日の記者会見で「今後は国民に負担を求める選挙がくるし、またこなければならない」と明言した。
A 消費税増税をやるぞという宣言だな。税制「改正」大綱には「税制改革と社会保障制度改革とを一体的にとらえて、その改革を促進する」と書き込まれている。
C もともと民主党はマニフェストでも年金財源に消費税を充てるという考えだ。かつて自民党の小泉純一郎首相(当時)が「増税をしてもいいから必要な施策をやってくれという状況になってくる」といっていたことを思い出すよ。
B 財源がないから消費税増税をというのでは、自民・公明政権と変わらない。消費税を増税して、大企業の税と社会保険料負担を軽くしようとしている財界の思うつぼだ。大企業と大資産家に応分の負担を求める国民の世論と運動が大切だな。
主張
政府予算案
まだ聖域にメスが入らない
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鳩山内閣が来年度の政府予算案を決めました。鳩山由紀夫首相は「何よりも人の命を大切にし、国民生活を守る政治を実現するため」の予算だとのべています。
一部前進はあるものの
自公政権は財界とアメリカ言いなりの政治を進めるために、自ら招いた財政破たんのツケを「構造改革」の名で国民に押し付けてきました。社会保障の自然増を毎年2200億円も削減し、庶民増税を進めるなど命と暮らしをないがしろにする野蛮なやり方でした。
予算案には部分的には「構造改革」路線を改める中身が含まれています。子ども手当や「高校無償化」、診療報酬の増額、生活保護の母子加算の復活・継続や地方交付税の増額などです。自公政権を退場させた国民の審判と粘り強い運動が後押しした結果です。
それぞれ、大臣が成果を強調しています。「100点は超えたと思っている」(川端達夫文部科学相)、「200点満点の成果だ」(原口一博総務相)―。
しかし、例えば診療報酬の本体は1・55%の引き上げにとどまりました。小泉内閣以降、トータルで8%近くも削られており、もっと明確な引き上げが必要です。「医療崩壊」の阻止には、まったく不十分です。おまけに「開業医から勤務医に振り向ける」という、実態を無視した「事業仕分け」の議論にもとづいて、開業医の再診料を引き下げようとしています。関係者の分断を図るのは、「構造改革」路線をひきずった卑劣なやり方にほかなりません。
後期高齢者医療制度の廃止も、障害者自立支援法の応能負担の廃止も先送りしています。生活保護の母子加算は復活しても老齢加算は復活させていません。切実な雇用保険の全国延長給付にも踏み切りませんでした。
何より、全体に共通する大きな懸念は財源です。
公立高校の授業料無料化など「高校無償化」の財源には、民主党のマニフェストで廃止しないと明記している「特定扶養控除」を縮減して回します。
92兆円の歳出に対して税収は37兆円、新規国債が44兆円で、その差を埋める10兆円以上を特別会計の「埋蔵金」から引っ張ります。特別会計を見直して無駄遣いを正すことは大事ですが、巨額の「埋蔵金」が毎年わいて出るわけではありません。今後は財源をどうするのか、極めて不透明です。
加えて2011年度には、子ども手当の全額支給、高速道路の段階的な無料化など、数兆円規模で歳出を増やしていく計画です。いまのままでは、行き詰まりが目に見えています。
高まる増税への不安
総選挙のときにも、民主党の公約を実現する財源に「不安を感じる」人が8割を超えていました。いずれ消費税の増税が待っているのではないかという不安です。
鳩山内閣は任期中の消費税増税を封印していますが、来年度予算案を見る限り、国民の不安はいっそう高まらざるを得ません。
根本の問題は、自公政権が聖域にしてきた軍事費にも、大企業・大資産家を優遇する税制にもメスを入れられなかったことです。二つの聖域にメスを入れ、将来とも消費税増税に頼らずに暮らしの予算を充実させる財政運営へと、大きく転換する必要があります。
予算92兆2992億円 過去最大
米軍再編経費が大幅増
財源は借金と埋蔵金頼み
政府案を閣議決定
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鳩山内閣は25日、新政権発足後初の予算編成となった2010年度政府予算案を閣議決定しました。子ども手当や高校授業料の「実質無償化」など、民主党のマニフェスト(政権公約)施策を盛り込み、総額は92兆2992億円と過去最大規模に膨れ上がりました。
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軍事費は09年度当初予算と比べ0・3%増の4兆7903億円となりました。自公政権時と変わらず5兆円規模を維持しています。
米軍再編関係経費が前年度比481億円増の1320億円と初めて1000億円を超え、このうち在沖縄米海兵隊のグアムへの移転事業に472億円も計上しています。
公共事業関係費はダム関係予算の抑制などで、対前年度当初予算比18・3%減の5兆7731億円となりました。港湾関係費全体も同24・6%減となりました。しかし中身は地方港湾にかかわる事業が縮減される一方、スーパー中枢港湾への「重点配分」が行われています。
歳入のうち税収は37兆3960億円となり、25年前に匹敵する水準となりました。92兆円規模の歳出を、過去最大の税外収入(=埋蔵金、10兆6002億円)と過去最大の国債発行(44兆3030億円)で支えます。
子ども手当や高校授業料の「実質無償化」の財源は、来年度税制「改正」に盛り込まれた所得税・住民税増税で賄います。
一方、大企業・大資産家優遇税制は温存。研究開発減税の上乗せ措置は2年延長します。
政権の鳴り物入りで実施された行政刷新会議の「事業仕分け」では、3兆円削減を目標に実施されたものの、軍事費やスーパー中枢港湾整備などには大胆に切り込まず、「だいたい6000億円ぐらい」(財務省幹部)の歳出削減となりました。
(出所:日本共産党HP 2009年12月26日(土)「しんぶん赤旗」)
小池政策委員長が談話
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日本共産党の小池晃政策委員長は25日、2010年度政府予算案について、次の談話を発表しました。
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一、本日、政府は来年度予算案を閣議決定した。わが党は、自公政権時代の反国民的な予算からの抜本的転換をはかるためには、軍事費と大企業・大資産家減税という「二つの聖域」に切り込むことが必要だと指摘してきたが、新政権がはじめて編成した予算案は、この聖域を温存した結果、雇用や社会保障、中小企業など国民生活向け予算の拡充は国民の願いから見ればきわめて不十分なものとなり、一方で巨額の国債と「埋蔵金」頼みの予算となった。
一、国民の審判を受けて、子ども手当や高校授業料無料化など、一定の改善もあるものの、厳しさを増す国民のくらしの要求に応えるものとはなっていない。後期高齢者医療制度の廃止は見送られ、来年度には保険料値上げが予定されるなど、国民の強い願いである社会保障の抜本的な拡充は「先送り」された。雇用対策も、中小企業対策も、深刻な状況に対応したものになっていない。民主党が主張していた「国民の生活が第一」とはとても言えない予算案である。
一、民主党は、「財源は無駄を削れば確保できる」といってきたが、現実には、44兆円という当初予算としては過去最高の国債発行にくわえて、1年限りの「埋蔵金」にますます多くを依存する予算となった。子ども手当などの新規施策も次年度以降の財源の保障はまったくなく、今回は先送りされた配偶者控除や成年扶養控除の廃止、消費税などの庶民増税への火種を残すものとなっている。
一、5兆円規模の軍事費はまったく手がつかず、ヘリ空母やミサイル防衛、「思いやり」予算なども温存された。とくに、グアム移転をはじめとした米軍再編経費は、500億円近くも増額された。公共事業予算は削減されたが、スーパー中枢港湾などの大型事業予算は拡充された。「租税特別措置の見直し」は小手先だけにとどまり、研究開発減税や証券優遇税制など大企業・大資産家減税も継続され、贈与税減税など資産家向けの優遇はさらに拡充された。結局、自公政権が「聖域」としてきた分野にはメスが入らないままとなっており、これを転換することが必要だということが、ますます明らかになっている。
初の鳩山予算をみる
“聖域”手つけず迷走
扶養控除やめ 消費増税示唆
記者座談会
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鳩山内閣は25日、政権交代後はじめての予算編成となる2010年度政府予算案を閣議決定しました。その中身は、自民・公明政権を退場させた国民の願いにそったものになったのでしょうか。担当記者で話し合いました。
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対照的な評価
A 鳩山予算の評価はどうだい。
B 生活保護の母子加算継続、児童扶養手当の父子家庭への支給、診療報酬の引き上げなど、国民が声をあげれば、不十分であっても前進すると実感できる面もある。
C これまで毎年2200億円の社会保障関係費の伸びを抑制してきた自民・公明政権時代の抑制路線は通用しない。
B ただ、「後期高齢者医療制度廃止を先送りなんて人をばかにしている」「子ども手当とひきかえに所得税・住民税の扶養控除を廃止しないで」と手厳しい意見も多い。
A 子ども手当の財源に地方負担を求めることは最後までもめた。地方も「地方自治と地方財政を守るためにこれをボイコットする」(松沢成文神奈川県知事)と批判が強い。政府は「地方負担は頭にない」(鳩山首相)といっていたからな。
C 対照的なのは財界の反応だ。御手洗冨士夫日本経団連会長は鳩山税制「改正」について、「エコカー減税の延長、それから研究開発減税も据え置いてもらったし、私は評価しています」と絶賛している。
A 財界の要望どおりというわけだ。一方で、「マニフェスト(政権公約)そのものに無理があった」とある財界幹部はいう。
混迷の末決着
B それにしても来年度予算案は決着までに混迷・迷走したな。
C 過去10年間の予算案はすべて24日に閣議決定されている。25日に閣議決定されたのは11年ぶりだ。税制「改正」大綱は遅れに遅れ、一時は越年予算編成もささやかれた。結局、小沢一郎民主党幹事長の「小沢裁定」でマニフェスト修正を決断して、一気に動きだした。
A マニフェスト絶対主義の破たんだ。なにせ概算要求段階で予算規模が約95兆円にまで膨れ上がった。景気低迷で税収も落ち込み、どうやってマニフェスト施策の財源を確保するかが迷走の始まりだった。
B その結果が借金(国債増発)と「埋蔵金」(税外収入)頼みの予算というわけか。
C 鳴り物入りで始まった行政刷新会議の「事業仕分け」でも、目標の3兆円には程遠い6000億円しかねん出できなかった。
A もともと「事業仕分け」自体、スーパー中枢港湾などの大型公共事業と軍事費は聖域にし、甘口の切り込みだった。逆にばっさり切り込んだのは暮らしや社会保障、中小企業関連の予算だった。科学予算削減への科学者の反発もすごかった。
B 税制「改正」でも大企業・大資産家減税は依然聖域だったな。大企業に大きな恩恵を与える研究開発減税の上乗せ措置は延長され、一部大資産家が巨額の減税を受ける証券優遇税制も温存された。
C 結局、予算案では、軍事費は微増とまさに「聖域」扱いされた。米軍再編関係経費は大幅増額だ。
A ゆきすぎた大企業・大資産家減税と軍事費という「二つの聖域」に手を付けないことが、混迷の大本だ。
自公と同じだ
B マニフェストの目玉だった子ども手当は、その財源として住民税の扶養控除の廃止が盛り込まれた。高校授業料「実質無償化」の財源は所得税・住民税の特定扶養控除縮小だ。これらは総選挙時の政策集ではやらないといっていた項目だ。
A 一方で、マニフェストに盛り込まれていた「後期高齢者医療制度の廃止」や中小企業向け減税は先送りだ。
B 政府税制調査会の司会を担当した峰崎直樹財務副大臣は24日の記者会見で「今後は国民に負担を求める選挙がくるし、またこなければならない」と明言した。
A 消費税増税をやるぞという宣言だな。税制「改正」大綱には「税制改革と社会保障制度改革とを一体的にとらえて、その改革を促進する」と書き込まれている。
C もともと民主党はマニフェストでも年金財源に消費税を充てるという考えだ。かつて自民党の小泉純一郎首相(当時)が「増税をしてもいいから必要な施策をやってくれという状況になってくる」といっていたことを思い出すよ。
B 財源がないから消費税増税をというのでは、自民・公明政権と変わらない。消費税を増税して、大企業の税と社会保険料負担を軽くしようとしている財界の思うつぼだ。大企業と大資産家に応分の負担を求める国民の世論と運動が大切だな。
主張
政府予算案
まだ聖域にメスが入らない
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鳩山内閣が来年度の政府予算案を決めました。鳩山由紀夫首相は「何よりも人の命を大切にし、国民生活を守る政治を実現するため」の予算だとのべています。
一部前進はあるものの
自公政権は財界とアメリカ言いなりの政治を進めるために、自ら招いた財政破たんのツケを「構造改革」の名で国民に押し付けてきました。社会保障の自然増を毎年2200億円も削減し、庶民増税を進めるなど命と暮らしをないがしろにする野蛮なやり方でした。
予算案には部分的には「構造改革」路線を改める中身が含まれています。子ども手当や「高校無償化」、診療報酬の増額、生活保護の母子加算の復活・継続や地方交付税の増額などです。自公政権を退場させた国民の審判と粘り強い運動が後押しした結果です。
それぞれ、大臣が成果を強調しています。「100点は超えたと思っている」(川端達夫文部科学相)、「200点満点の成果だ」(原口一博総務相)―。
しかし、例えば診療報酬の本体は1・55%の引き上げにとどまりました。小泉内閣以降、トータルで8%近くも削られており、もっと明確な引き上げが必要です。「医療崩壊」の阻止には、まったく不十分です。おまけに「開業医から勤務医に振り向ける」という、実態を無視した「事業仕分け」の議論にもとづいて、開業医の再診料を引き下げようとしています。関係者の分断を図るのは、「構造改革」路線をひきずった卑劣なやり方にほかなりません。
後期高齢者医療制度の廃止も、障害者自立支援法の応能負担の廃止も先送りしています。生活保護の母子加算は復活しても老齢加算は復活させていません。切実な雇用保険の全国延長給付にも踏み切りませんでした。
何より、全体に共通する大きな懸念は財源です。
公立高校の授業料無料化など「高校無償化」の財源には、民主党のマニフェストで廃止しないと明記している「特定扶養控除」を縮減して回します。
92兆円の歳出に対して税収は37兆円、新規国債が44兆円で、その差を埋める10兆円以上を特別会計の「埋蔵金」から引っ張ります。特別会計を見直して無駄遣いを正すことは大事ですが、巨額の「埋蔵金」が毎年わいて出るわけではありません。今後は財源をどうするのか、極めて不透明です。
加えて2011年度には、子ども手当の全額支給、高速道路の段階的な無料化など、数兆円規模で歳出を増やしていく計画です。いまのままでは、行き詰まりが目に見えています。
高まる増税への不安
総選挙のときにも、民主党の公約を実現する財源に「不安を感じる」人が8割を超えていました。いずれ消費税の増税が待っているのではないかという不安です。
鳩山内閣は任期中の消費税増税を封印していますが、来年度予算案を見る限り、国民の不安はいっそう高まらざるを得ません。
根本の問題は、自公政権が聖域にしてきた軍事費にも、大企業・大資産家を優遇する税制にもメスを入れられなかったことです。二つの聖域にメスを入れ、将来とも消費税増税に頼らずに暮らしの予算を充実させる財政運営へと、大きく転換する必要があります。
予算92兆2992億円 過去最大
米軍再編経費が大幅増
財源は借金と埋蔵金頼み
政府案を閣議決定
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鳩山内閣は25日、新政権発足後初の予算編成となった2010年度政府予算案を閣議決定しました。子ども手当や高校授業料の「実質無償化」など、民主党のマニフェスト(政権公約)施策を盛り込み、総額は92兆2992億円と過去最大規模に膨れ上がりました。
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軍事費は09年度当初予算と比べ0・3%増の4兆7903億円となりました。自公政権時と変わらず5兆円規模を維持しています。
米軍再編関係経費が前年度比481億円増の1320億円と初めて1000億円を超え、このうち在沖縄米海兵隊のグアムへの移転事業に472億円も計上しています。
公共事業関係費はダム関係予算の抑制などで、対前年度当初予算比18・3%減の5兆7731億円となりました。港湾関係費全体も同24・6%減となりました。しかし中身は地方港湾にかかわる事業が縮減される一方、スーパー中枢港湾への「重点配分」が行われています。
歳入のうち税収は37兆3960億円となり、25年前に匹敵する水準となりました。92兆円規模の歳出を、過去最大の税外収入(=埋蔵金、10兆6002億円)と過去最大の国債発行(44兆3030億円)で支えます。
子ども手当や高校授業料の「実質無償化」の財源は、来年度税制「改正」に盛り込まれた所得税・住民税増税で賄います。
一方、大企業・大資産家優遇税制は温存。研究開発減税の上乗せ措置は2年延長します。
政権の鳴り物入りで実施された行政刷新会議の「事業仕分け」では、3兆円削減を目標に実施されたものの、軍事費やスーパー中枢港湾整備などには大胆に切り込まず、「だいたい6000億円ぐらい」(財務省幹部)の歳出削減となりました。
(出所:日本共産党HP 2009年12月26日(土)「しんぶん赤旗」)