1位は三崎 食べ歩きが楽しい漁港ランキング
新鮮な魚介をその場で買えて、味わえる。漁港近くの市場や鮮魚店、食堂などを巡る旅は、旅情と食欲を満たしてくれる。専門家に食べ歩きが楽しい港町を選んでもらったところ、全国で上位の水揚げを誇る漁港からひなびた風情に心引かれる港町まで、個性が際立つところが並んだ。秋から冬にかけての旬の魚も様々で、その土地ならではの味覚を楽しめそうだ。

全国上位の漁獲量があるマグロやブリ、キンメダイなどを目当てに、休日には首都圏から多くの観光客が訪れる。「食堂で働く人々はみな食のプロ。おいしくてボリュームたっぷりの献立を用意してくれる」(前田吉春さん)。近くの城ケ島は太平洋を一望でき、相模湾越しに富士山を望める景勝地。京急久里浜線三崎口駅から京急バスに乗り三崎港下車すぐ。
▼食べどころ 産直センターの「うらり」は地元の鮮魚店や三崎の水産加工品などを売る店が並ぶ。土日と祝日の昼に営業する軽食喫茶のメニューには「まぐろカツカレー」がある。三浦市が運営する水産物地方卸売市場の2階にある三崎食堂は、マグロと釜揚げシラス、三浦特産の海藻を合わせた「三崎めぐみ丼」(写真の手前)など、マグロづくしの料理のほか三浦半島の畑で採れた旬の野菜を加えたメニューがあり「産地直食」の新鮮な料理を楽しめる。

陸奥湊駅前で平日の早朝に朝市を開くほか、第1日曜は「日曜新鮮市」を開催。今は「八戸前沖サバ」と呼ぶ秋サバの漁期で、店頭で串焼きにする風景も。市場では名物キャラクターの「いさばのかっちゃ」(市場の母ちゃん)たちが「いがったらかれー」(イカ、タラ、カレイ)と威勢良く声を上げ、「良かったら買って下さい」と聞こえる。JR八戸駅から八戸線で15分の陸奥湊駅下車。
▼食べどころ 「市場には食堂がたくさんあり、買った魚を料理してくれる店もある」(竹村節子さん)。朝市から約3キロの三日町と六日町の間にある屋台村「みろく横丁」で地元の新鮮な食材を味わえる。

冬は釣り上げたばかりの透明なアオリイカなどが有名。店の前でイカを回転させる天日干しの風景が旅情を誘う。「呼子の朝市」は歴史が古く、多くの観光客でにぎわう。近くには景勝地の「虹の松原」がある。JR筑肥線の唐津駅から徒歩5分の唐津大手口バスセンターから昭和バス呼子行きで30分、呼子下車すぐ。
▼食べどころ 「虹の松原近くの『三郎寿司』などではイカの生き作りやナマコを味わえる」(川目竜央さん)。漁港の回りにはイカ刺し、焼イカ、げその天ぷらなどイカ料理のフルコースを楽しめる店が並び、漁協直営の産直センター「呼子台場みなとプラザ大漁鮮華」は安く新鮮。

ズワイガニやブリ、甘エビなど、富山湾の新鮮な海の幸を水揚げする。「紅ズワイガニが並ぶ市場の様子は圧巻」(村上真一さん)。買い物は新湊フィッシャーマンズワーフ「新湊きっときと市場」などで。万葉線の射水市新湊庁舎前駅から約700メートル。
▼食べどころ 海鮮レストラン「きっときと亭」では「新湊かに丼」などが味わえる。
那珂湊おさかな市場では東日本大震災の津波で商品が流されるなどの被害があったが、現在は客足が戻ってきた。近くには国営ひたち海浜公園やアクアワールド大洗水族館がある。JR常磐線の勝田駅からひたちなか海浜鉄道湊線に乗り那珂湊駅下車、徒歩10分。
▼食べどころ 那珂湊おさかな市場では11月から「あんこう鍋」が食べられる店も。
漁協が開く魚市場は「五味の市」の愛称で親しまれている。シャコや名物の「日生カキ」で知られる。産直品店やレストランが入った「海の駅・しおじ」がある。JR赤穂線・日生駅下車、徒歩10分。日生港と小豆島を結ぶ瀬戸内海のフェリーも就航している。
▼食べどころ 地元の食堂ではカキのお好み焼き「カキオコ」が名物。
名物は「ウトロの特銀」と呼ぶシロザケ。近くの道の駅「うとろ・シリエトク」に隣接する「ごっこや」では漁期にメンメ(キチジ)やサケ、カレイなどを販売する。女満別空港からJR網走駅か知床斜里駅経由のバスで90分、ウトロ道の駅下車。
▼食べどころ 道の駅から徒歩で約10分のところにある「知床料理 一休屋」でサケとイクラの「鮭親子丼」が楽しめる。
良寛がたびたび訪れた街道沿いの漁師町の風情を残す。漁港近くの国道402号沿いにある「寺泊アメヤ横丁」には、寺泊中央水産など大型鮮魚店が軒を連ねる。佐渡島沖などでとれる新鮮な魚介が売り物。JR越後線・寺泊駅からバスで15分。
▼食べどころ アメ横の店先で買うイカの浜焼きのほか、割烹(かっぽう)旅館「枯笈庵(こきゅうあん)」で「漁師鍋」を味わえる。
房総半島を代表する漁港の一つ。沖に設置されたいかだに乗って釣りを楽しめる施設もある。漁師宿「げんべい」では海中からカゴですくい取る「がま口漁」でカワハギをとり、生き作りをふるまう。JR内房線・富浦駅から900メートル。
▼食べどころ 漁協直営の「浜の台所おさかな倶楽部」でキンメの煮付けやサザエカレーなど地魚料理を味わえる。
黒潮が日本の陸地に接近する数少ない場所。魚種が豊富なため古くから漁業が栄え、釣り客も多い。予約制で、漁船で行く足摺岬沖の海上散策、クジラやイルカのウオッチングなどもできる。車で高知市内から約3時間、四万十市内から約40分。
▼食べどころ さかなセンターの「足摺黒潮市場」で清水サバを使った「サバのぶっかけ丼」などを楽しめる。
被災地の港、徐々に復興
東日本大震災による津波被害を受けた漁港を挙げる専門家も多かった。このうち、魚市場が津波の被害を受けたものの修復が進んだ茨城県ひたちなか市の那珂湊漁港が5位に入った。

東北地方では岩手県宮古市の漁港を推す声が多かった。宮古では地元の商店街などが復興市を開くなど「地域の人が踏ん張って復興している」(旅行作家の中尾隆之さん)。今は11月のアワビ漁の解禁に向けた準備が進む。
宮城県石巻市の漁港の岸壁は現在も修復中だが、石巻魚市場は仮設のテントでセリを再開している。福島県いわき市の小名浜漁港も津波の被害などで操業が制限されるなか、市内の食堂などは早くに再開した。アンコウをはじめ、メヒカリのからあげ定食などが人気メニューだ。
このほか、鳥取県境港市の境港漁港や長崎県壱岐市の湯本、勝本の両港などをすすめる専門家もいた。
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表の見方 数字は選者の評価を点数化。選者がすすめる港内や漁港近くの食堂やレストランなど人気店とメニューなどを紹介した。
調査の方法 全国各地の漁港や漁港市場、近隣の飲食店に詳しい専門家に、比較的低料金で新鮮な魚介類を使った食事を楽しめる市場食堂などがある漁港を選んでもらい、おすすめの度合いで順位をつけた。選者は次の通り(敬称略、五十音順)
内山弘美(JTBパブリッシング「ノジュール」事業部)▽川目竜央(釣り・港町紀行作家)▽竹村節子(現代旅行研究所)▽中尾隆之(旅行作家)▽野村祐三(水産ジャーナリスト)▽前田吉春(釣り・ドライブ紀行作家)▽正木聡(昭文社出版編集部)▽村上真一(実業之日本社ブルーガイド出版部)▽矢口正子(交通新聞社旅の手帖編集部)▽柳沢美樹子(旅行ライター)
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