目に優しいLEDが家庭でも、バルミューダ参入
新興家電メーカーのバルミューダ(東京都武蔵野市)は6日、子供用の卓上ライト「ザ・ライト」を10月下旬に発売すると発表した。美術館などでの採用にとどまる「太陽光発光ダイオード(LED)」と呼ばれる次世代品を採用。ブルーライトを大幅にカットし、目に優しい光を実現したという。蛍光灯に比べ省エネ性能に優れる点から普及が進んだLEDが光の質を競う時代に入った。
「子供の目を守ることは多くの親の願いだ」。2人の子供を持つバルミューダの寺尾玄社長は、開発の狙いをこう語った。価格は税別3万7000円と卓上ライトとしてはかなり高額だが、親心に訴えることで同社の一番の売れ筋のトースターを超えるヒット商品になると期待する。
新製品では、現在主流の青色LEDの代わりに紫色LEDチップを採用。まだ生産量が少なく、高単価だが、紫色LEDチップに赤・青・緑の蛍光体を組み合わせることで、太陽光に近い光を再現。室内にあるものが自然に見えるようにした。目の疲れや睡眠への影響が懸念されるブルーライトを半減させた。
一方、従来のLEDは青色LEDチップと黄色の蛍光体を組み合わせて白色を再現するため、ブルーライトを多く放出する。ブルーライトを長時間浴びると目の疲労など負担が大きくなるとされる。
バルミューダは韓国のソウル半導体と東芝マテリアルが共同開発した太陽光LEDを採用。ソウル半導体は太陽光LED事業を20年に1億ドルの事業に育てる方針を打ち出している。
卓上ライトは典型的な成熟商品だ。従来品に機能の向上はみられず、家電販売店で売り場の隅に追いやられている。
バルミューダは成熟商品を進化させてヒットを生み出す手法を得意とする。最初にヒットした10年発売の扇風機ではモーターやファンを工夫して自然な風を再現。大手メーカーもこぞって追随した。15年発売のトースターでは水蒸気を加えることで、焼きたての味を再現した。
照明でも同様に存在感を高めることで、同社は2018年の売上高を100億円超と予想する。来年は新たに2種類の照明を追加投入する。空調家電やキッチン家電に続く第3の柱に育てる。
太陽光LEDには青色LEDの研究でノーベル賞を受賞した中村修二氏も注目する。08年にベンチャー企業の米ソラーを立ち上げ生産している。まだ生産量が少なく高価なため「光の質」にこだわる美術館やデパート、高級飲食店などの利用が中心だ。日本ではアイリスオーヤマなどが扱っている。
京セラは太陽光LEDを「セラフィック」と名付けて事業展開しておりビルや工場などに採用されている。家庭用の照明器具も販売するが、高額のため広く普及するには至っていない。このほかに工業用照明メーカーのシーシーエス(京都市)なども手掛けている。
LEDはこれまで価格や省エネ性能ばかりが注目されてきた。寺尾社長は「安くなって普及した後には品質向上が新たな競争軸になる」と指摘する。今後は省エネ性能に加えて光の質も備えた次世代のLEDの開発競争が本格化しそうだ。
富士経済は太陽光LEDを今後の有望製品と位置付けており、25年までに金額ベースで年平均20%以上の成長が続くと予測する。(河合基伸)