11月23日総選挙の可能性が急浮上
昨日8月10日のテレビ朝日番組「サンデープロジェクト」が、韓国テレビメディアと政治との関わりを放送していた。「サンデープロジェクト」は本ブログでもこれまで記述してきたように、自民党清和会政権との強い癒着を背景に制作されているとの疑いを抱かせる番組である。その「サンデープロジェクト」が韓国メディアの政治との関わりを論じている点が興味深い。
日本のテレビメディアの政治との癒着を、内部情報を混じえて報道すれば、迫真に迫る報道を示せるのではないか。
8月10日の報道では、韓国国営KBS(韓国放送公社)とMBC(文化放送)の政治との対立の話題が取り上げられた。韓国では李明博大統領の支持率が急落している。日本の福田首相と似たような状況が韓国でも生じている。
KBS社長の人事にはこれまで政治が色濃く影を落としてきた。KBSの鄭淵珠社長は盧武鉉前政権によってリベラル系「ハンギョレ新聞」の論説主幹から抜擢(ばつてき)された。新聞社時代は反米・親北の論調を示していた。
鄭社長の下でKBSは、これまでの5年間、盧武鉉前政権の意向を代弁していると保守派が批判していた。盧武鉉大統領に対する議会の弾劾決議では「弾劾反対」のキャンペーンを展開した。
大統領選挙では政権批判の保守系紙を攻撃し、保守系の李明博候補批判を展開した。李明博政権発足後は米国産牛肉反対の大規模反政府デモを支持し、李政権を揺さぶってきた。
李政権は政権批判を主導してきたKBSの鄭淵珠社長に対して監査院を通じ辞任要求を突きつけているが、本人は拒否している。米国産牛肉輸入反対を訴えていた大規模デモが「KBS社長を守れ」のデモに転化していると伝えられている。
李明博政権は監査院によるKBS特別監査を実施して放漫経営などの経営責任を理由に「辞任要求」を決定。検察も背任容疑で捜査を始め、北京五輪開会式に出席予定の鄭社長を出国禁止にした。
これに対して鄭社長は「公営放送の独立性と民主主義を守るため」として辞任を拒否している。KBS社長は理事会の推薦で大統領が任命することになっているが、解任に関する規定はないという。
李明博政権は政権批判の国営放送を政権寄りの体制に転換させたい考えだが、政治圧力による社長交代を強引に強行すれば、政権批判の正論を一段と強める可能性が高く、躊躇していると見られる。
また、MBC(文化放送)が放送した「BSE」に関する番組が「BSE」に対する韓国国民の恐怖心をあおったとの批判が政権サイドから強まった。放送は「BSE」発症者が保有していた遺伝子を韓国国民の94%が保有しているとの内容で、これが「米国産牛肉を食べた場合、韓国国民の94%が「BSE」で発症する恐れが高い」との曲解を生んだと批判されている。
李明博政権は米国牛肉反対の大規模反政府デモの契機にもなったと言われる当該番組を、裁判や放送通信審議委員会などを通じて「歪曲(わいきよく)・誇張報道」と判定し、批判しているがMBCは謝罪を拒否している。
以上が「サンデープロジェクト」が放送した内容の概要だが、テレビメディアが政治権力に完全にコントロールされ、権力迎合放送にいそしむ御用番組、御用放送会社しか存在しない日本の現状を踏まえると、韓国の現状はうらやましい限りだ。
国営放送であるにもかかわらず、政権が交代しても新政権に擦り寄らず、従来の報道スタンスを維持して政権批判を展開する気概にジャーナリスト精神が表れている。国民が政治問題に対する客観的な判断を下すには、批判意見を封じない言論空間が不可欠だ。
民主主義が正しく機能するには、マスメディアが複数意見を国民に伝えることが不可欠だ。小泉政権が権力を奪取して以来の日本では、政府批判の意見が弾圧され、マスメディアの御用放送機関化が顕著に進んだ。
政府に予算を握られているNHKも例外ではない。拙著『知られざる真実-勾留地にて-』第2章「炎」16「消えた放送委員会」、17「政治権力に支配されるNHK」、18「テレビメディアの偏向」に「NHK問題」を記述したが、第2次世界大戦後に放送民主化のために作られた「放送委員会」が米ソ冷戦の影響でなし崩し的に消滅したために、NHKの政治からの独立が実現しなかった。
政策について総理大臣と討論するための番組「総理と語る」は、田中角栄首相の時代に、聞き手を首相官邸が選び、首相が自己PRするための番組「総理にきく」に改変されたこともあった。
昨日8月10日のNHK日曜討論は、福田政権9閣僚の生出演による政府広報番組に改変された。福田政権発足直後の8月3日放送は2時間の番組枠の1時間10分が福田政権の閣僚による広報番組とされた。
衆議院では自公が参議院では民主、共産、社民、国民新党の野党が過半数を制している。政権は衆議院の多数勢力によって作られているが、国権の最高機関である国会2院は与野党が1院ずつ制圧しているのだ。NHK政治討論番組では、与野党による論戦が提供されるべきだ。
政権発足直後で閣僚を登場させるのは理解できるが、野党論客との討論がなければ、問題点は浮き彫りにならない。政権内部の閣僚だけによる「仲良しクラブ」番組は、政権の広報PR番組以外の何者でもない。
日本のマスメディアに政権批判を正当に展開する放送局が存在すれば、国民の問題意識は飛躍的に高まる。CS放送の「朝日ニュースター」が放映している「愛川欣也パックイン・ジャーナル」などが、例外的に政権批判の論陣を正々堂々と張っているが、CS放送であるため、地上波全国放送と比較すると視聴者数が著しく少ない。
「kobaちゃんの徒然なるままに」様が本ブログをしばしば紹介してくださっている。8月10日付記事では「11月23日総選挙説が急浮上」のタイトルで総選挙が前倒しで実施される可能性があることを指摘された。
公明党は来年7月の東京都議会選挙をにらみ、早期の解散・総選挙を強く求めている。総選挙後に自公政権から離脱することも視野に入ってきているのかも知れない。
また、矢野絢也元公明党委員長に対する参議院での参考人招致を極度に警戒し始めている。福田首相が9月上旬の臨時国会召集を示唆し、公明党が臨時国会の会期圧縮を求めていることなどを踏まえると、11月23日投開票による総選挙実施の可能性を否定できない。
しかも、11月23日は3連休の中日に当たる。投票率低下を望む自公政権にとって格好の設定だ。さらに、11月23日は「大安」である。自公政権と御用メディアが執拗に複数候補による民主党代表選挙を求めていることも、このシナリオと符合する。
小沢一郎代表の求心力を総選挙前に少しでも低下させたいとの自公政権の思惑が垣間見える。
「偏向マスメディア」、「言論統制」が敷かれるなかで総選挙を闘い、政権交代を勝ち取ることは容易でない。しかし、政権交代を実現させなければ日本の「官僚主権構造」を変えることは不可能だ。「メディアコントロールの闇」を打ち破り、政権交代実現に向けて志有る者が協働しなければならないと思う。
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