(類型1)中心点からの距離で警戒範囲を決めた火山浅間山。レベル3は山頂火口から4キロ。
草津白根山(湯釜)。レベル3は湯釜火口から2キロ。
新燃岳。レベル3は火口から3キロもしくは4キロ。
桜島。レベル3は南岳火口と昭和火口から2キロ。
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裁判で原告は、噴火する前に御嶽山の噴火警戒レベルを2に上げなかった過失が気象庁にあったと主張しているが、被告である気象庁はそれを否定している。あの噴火は予知できなかったということらしい。
訴えられたとき気象庁が原告の主張を受け入れて、みずからに過失があったと素直に認めていれば、御嶽山2014年9月27日に限り予知に失敗したことになって、気象庁が法律を改正して2007年12月から始めた噴火警戒レベルと噴火警報は合理的に存続できた。少なくとも2018年1月23日の本白根山噴火までは。
年内に出るだろう判決で、もし気象庁の言うとおりに過失はなかったことになって原告が敗訴すれば、気象庁はかえって窮地に追い込まれる。噴火予知ができないことが明らかになり、噴火警戒レベルに基づいた噴火警報に根拠がなくなるからだ。
もし原告が勝訴すれば、国家賠償して、気象庁の上層部に若干の手入れをするだけで噴火警戒レベルと噴火警報が継続できてしまう。気象庁にとっては、むしろこうなったほうが利益が大きい。この裁判はねじれている。
第三者としての私は、この裁判が原告敗訴ですみやかに結審することを望む。噴火予知はできません。できなくても仕方ありません。誰にも責任ないです、の司法判断を受け取って、噴火警戒レベルと噴火警報を撤廃する道に早く進みたい。
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直径 3, 6, 12, 25, 50 cm の粒子を火口から 45度、 150 m/s で射出したときの空中軌道。6 cm 以下は空気抵抗を強く受けるが、12 cm 以上は空気抵抗をほとんど受けずに放物線に近い軌道を描く。火山学では、6 cm 以下を火山れき(lapilli)、それ以上を火山岩塊(blocks)と区別する。
放物軌道を描いて空中を飛行した火山岩塊を(温度や形態によらず)すべて火山弾と呼ぶことにすると、防災情報が誤解されることなく当事者に伝わる。
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御嶽山の2014年9月27日噴火で、山頂付近にいた登山者63人が死亡した。噴火警報を出して噴火警戒レベルを2に上げなかった気象庁に過失があったかどうかを争う裁判が、いま長野地裁松本支部で進行中である。裁判では、過失がいつどこにあったかを特定することが焦点となる。
噴火の2週間前、1日の地震数が50回を超えた日が2日続いた。そのとき気象庁がレベル2に上げるべきだったが原告の主張だ。レベル2に上げるためには噴火警報が必要となる。気象庁には噴火警戒レベルの判定基準が各火山についてあって、御嶽山の場合はレベル2に上げる基準のひとつに、1日の地震回数が50回を超えたとき、がある。被告である気象庁は、他の条件も加味した総合判断によってレベル2に上げるのを見合わせたことに過失はなかったと弁明している。
1日の地震が50回を超えたときレベル2に上げなかったことを気象庁の過失とみなすことがはたしてできるだろうか。私の考えは否定的だ。気象庁のような官庁で噴火警戒レベルを上げ下げするには上司の決済が必要となる。この案件の決済権は火山課長にあったとみられる。内規で定めた判定基準を満たしても、火山課長が総合的に判断してその日レベル2に上げなかったことに過失があったとまでは言えない。そこでは正当な行政がなされたとみる。
では、気象庁に過失はなかったのだろうか。いや、あった。気象業務法13条は、一般の利用に適合する噴火警報を出すことを気象庁に課している。結果的に死者63人を出したのだから、その前に噴火警報を出さなかった不作為が一般の利用に適合していたとはとうてい言えない。
少なくとも前日の26日までにレベル2に上げて、現場への立ち入りを禁じるよう地元市町村を促す責務が気象庁にはあった。気象庁の過失は、
2014年9月26日までに御嶽山の噴火警戒レベルを2に上げなかった不作為にある。結果的に63人が死亡したからこそ、気象庁に過失がある。
どんなに密に観測しようとも、現在の火山学では噴火警報を一般の利用に適合するようには出せない。だから、2週間前に立てた予想が外れたからといって、そこに過失があったとは言えない。しかし法律は、それを出せと気象庁に課している。できないことを気象庁に課しているいまの法律が不適切なのである。いかに不適切な法律であろうとも、司法はそれに即した判断を下すことになっている。
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浅間山釜山火口中心から500メートル地点。前掛火口内。
草津白根山志賀草津道路の富士見台。湯釜火口中心から1.5キロ地点。2018年9月23日撮影
御嶽山御嶽山頂直下、地獄谷火口中心から500メートル地点。2018年9月28日撮影
霧島山大浪池登山口
桜島有村展望台。昭和火口から3キロ地点。
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空から見た御嶽山頂。狭い。小屋の向こう側に行って地獄谷を望むことが、ロープに阻まれてできない。まるで、見せたくないものを隠しているかのようだ。登山者は、4年前に63人も殺した噴火口の縁に自分が立っている事実を知らない。そのときも、いまも、噴火警戒レベルは1だ。
南東から見た御嶽山頂。石段の下にコンクリート製のシェルターが3基置かれている。山頂の建物の屋根は補強されているが、それ以外の建物には4年前の噴火の傷跡がまだ残る。
山頂へ登る石造りの立派な階段の脇に、4年前の粘土の厚い断面が露出している。火山れきを含む。成層してないので悠長に降り積もったのではなく、横殴りの火砕流の堆積物だといってよい。火山れきに当たった階段の一箇所が欠けていて、手すりはボコボコ。
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白子隆志(2016)御嶽山噴火による噴石外傷の経験。日本救急医学会雑誌、27(12)、770-775
要旨 2014年9月27日午前11時52分に御嶽山が噴火し,山頂付近にいた多くの登山者が被災した。岐阜県側の山頂山小屋に負傷者を含む26名の登山者が避難したため,翌朝DMATと山岳救助隊が傷病者救出活動を実施した。被災者のうち,重症者1名,中等症者2名をヘリ搬送し当院に収容した。症例1:39歳女性。左鎖骨・肋骨・肩甲骨開放骨折を受傷しており,全身麻酔下にデブリドマンを施行した。症例2:52歳男性。左上腕骨開放骨折を受傷しており,洗浄・固定術を施行した。症例3:46歳男性。左体幹部に広範な打撲による皮下血腫,腫脹と高CK血症を認めた。3例とも高速飛来物に起因する鈍的外傷および穿通損傷であり,損傷形態は二次あるいは四次爆傷と考えられた。比較的まれな火山噴火による噴石外傷を経験したので報告する。
この噴火による死者63人ほとんどの死因が、大きな噴石に当たったのではなく小さな噴石(火山れき)に当たったことによると、これら症例も強く示唆する。
以下は外傷写真。閲覧注意。
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湯釜の噴火警戒レベルが1になって志賀草津道路が開通したので、8ヵ月前の本白根山噴火で降り積もった火山灰を見に行った。
白色粘土質だった。草津白根山ではごくふつうだ。噴火地点が本白根山と特異だったが、噴火様式はとくに変わったものではなかった。過去1万年間に何度も繰り返したタイプの噴火だった。
青葉山駐車場脇の1月23日火山灰。駐車場アスファルトから人為によって集められたと思われる。
富士見台の地表。自然のままだと厚さ5ミリほど。自然のままだと言っても厚い積雪の上に降り積もった火山灰だから、地表に定着する前に動いている。厳密な意味で降り積もったまま、ではない。
新しくできた噴火口から960メートル地点にある富士見台駐車場につくられたコンクリート・シェルター。
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▼2018年6月
1日
2日
3日
0600 火山情報#27(火砕流が発生した。噴煙6キロ。火砕流がフエゴ火山のすべての谷を降る可能性を却下できない。)
1005 火山情報#28(フエゴ火山のすべての谷を火砕流が下る可能性があるから、谷の中やそばにとどまるべきでない。)
1051 噴煙9キロ、火砕流
1322 噴煙15キロ、火砕流が村に達する。死者300人
1345 火山情報#29(最近で最大の噴火が起こって火砕流が発生した。噴煙は10キロまで上昇した。衝撃波が観測された。Sangre de Cristoの人々は避難を考えなさい。)
4日
5日
6日
7日 NHK が当局から許可を得て火砕流に埋まった村をカメラ取材して放送。
8日
9日 朝日新聞が当局から許可を得て火砕流に埋まった村を取材して掲載。
10日 Jozef Stano によるドローン空撮
11日
12日
13日 Jozef Stano によるドローン空撮(2回目)
14日
15日
16日
17日
【“グアテマラ・フエゴ火山の2018年6月3日火砕流とその後”の続きを読む】