2014年9月27日の御嶽山爆発で、火口から1キロまでの地表に衝突クレーターがたくさんできた。しかしその直径はどれも小さい。せいぜい1メートルだ。上空8キロまであがった火山れきが落下してつくったとみられる。
もし火口から弾道軌道を描いて空中を飛行した火山弾がつくったのなら、直径10メートルに達する大きなクレーターができたはずだ。直径1メートルの火山弾はふつうだし、大きいほうが遠くまで飛ぶから。
大きなクレーターがみつからないことは、火山弾が地獄谷から外にほとんど出なかったことを意味する。死者63人は地獄谷から飛来した火山弾に押しつぶされたのではなく、高空から落下した火山れきにあたって絶命したと考えられる。
(表面にクレーターが生じている火山灰は火砕流によって堆積したのだろう)
9月27日の御嶽山爆発は、ごくふつうの水蒸気爆発だった。なのになぜ63人もの死者が出たか。
1) 秋の好天の土曜日の正午前だったので、山頂付近に200人もの登山者がいた。
2) 風が弱かった。上空8キロまで上がった小石が拡散せずに狭い範囲に降った。
3) 弱い風向きが、ちょうど山頂方向だった。
想像できる限り最悪の条件が3つ重なった結果だった。火口から上空8キロまで噴き上がった多数の小石が、山頂の剣が峰を目指して落下してきた。そこに登山者200人がいた。致死率3割だった。
63人の登山者を殺した火山エネルギーは、火口から飛び出した小石の運動エネルギーではなく、上空8キロまで上昇を可能にした噴煙の熱エネルギーだった。
火口上8キロにも噴煙柱が達したのは、地表に広がった火砕流の表面から発生した熱によるところが大きい。小石を8キロ(近く)まで押し上げた浮力の多くは火砕流が持っていた熱から生じた。つまり、火砕流が直接飲み込んだ登山者は1人か2人だったが、間接的に60人の登山者を死に至らしめたと言える。
ツイッターまとめ ・
御嶽山63人の死因考察 火山弾か火山れきか・
Ontake 2014 Death Toll 【“なぜ63人もの死者が出たか”の続きを読む】
開田高原木曽馬の里ライブカメラの画像は1分ごとに記録されているらしい。設置者が作成した
早送り動画から重要画像をいくつかキャプチャした。
噴火は11時52分から始まったと気象庁はいう。雲に阻まれて視界がやや悪いのが残念だが、11時57分の画像に上昇し始めたカリフラワー雲が映り始める。それは12時18分にクライマックスに達した。VAACによる噴煙柱が火口上8キロに届いた報告はこの時刻のものであろう。12時31分に二度目のカリフラワー雲上昇があった。12時43分に三度目のカリフラワー雲の上昇があった。噴火開始からクライマックスまで26分、激しい噴火の継続時間は50分だった。
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・火山れきは、火口の真上で空高くまで上がったあと、風に吹かれて横方向に移動してから地表に落ちる小石です。ヘルメットをかぶっていれば、また家や自動車の中にいればケガせずにすみます。
・火山弾は、火口から高速で投げ出された大岩です。弾道軌道を描いて空中を飛行します。最大4キロまで届きます。これに当たるとひとたまりもありません。もし火山弾の射程距離内で突然の爆発に遭遇したら、よけてください。
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長野県佐久建設事務所の黒斑山カメラが、噴火翌日の9月28日から御嶽山に向けられている。噴煙が見える画像からその高さを計測した。
9月27日は、VAACによる報告。28日以降は、長野県佐久建設事務所の黒斑山カメラ画像を見て私が判定した。見えた限り毎日の最大高度である。比較のために気象庁発表を赤で示した。
写真判定(スケールは、浅間山から見通して継子岳から王滝頂上までの水平距離が2000メートルを使った。)
9月28日13時 900メートル
9月28日21時 1200
9月29日11時 600
9月30日09時 600
10月1日
10月2日08時 800
10月3日
10月4日09時 100
10月4日18時 400
10月5日01時 300
10月6日
10月7日07時 800
10月8日
10月9日23時 600
10月10日02時 300
10月10日09時 200
10月10日18時 200
10月11日01時 600
10月12日02時 1700
10月12日11時 1700
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気象庁は、2007年12月1日から火山に噴火警戒レベルを設定して噴火予知の業務を始めた。
これまでの7年間に気象庁が出した噴火警報を詳しく読むと噴火予知を17回発表したと解釈できる。そのうち3回の直後に噴火が発生した。的中率は18%である。いっぽうこの間に予知がないまま噴火が9回発生したから、現在の気象庁による噴火予知の感度は25%である。
○予知成功 3回
●予知失敗(空振り) 14回
×予知失敗(見逃し) 9回
ただし桜島を除く
予知あり 予知なし
噴火あり 3 9
噴火なし 14 -
的中率 3/17 = 18%(予知が的中した割合)
感度 3/12 = 25%(噴火を予知した割合)
2014年10月7日
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八海山。
(左)テレビカメラの最前線。白い服を着てテントの中で立っているひとは、王滝村の消防団員。
(右)最前線から左下に降りる小道に王滝村が出した看板がある。気象庁が噴火警戒レベル3を発表したから火口から4キロの範囲が「立入禁止となっています」と書いている。
木曽町三岳羽入(黒沢口)の看板は、(長野県)木曽建設事務所が立てている。有人。
(左)ロープウェイ口は、鹿ノ湯温泉脇に木曽町建設水道課が看板を立てている。上松役場から応援に来た職員が立っていた。
(右)9月27日の噴火で降り積もった粘土
台風18号が過ぎて、1030ころの10分間だけ御嶽山が九合目まで姿を現した。9月27日に降った白い粘土と噴煙が確認できた。開田高原から。
2007年 3月 ごく小さな噴火、10トン程度
2008年3月31日
噴火予報、噴火警戒レベル導入、レベル1
2014年9月11日1020
解説情報1号、地震増加
9月12日1600
解説情報2号、11日の地震85回
9月16日1600
解説情報3号、地震やや多い状態で推移
9月27日1152 噴火開始、50万トン、死者63人
9月27日1200
噴火に関する火山観測報9月27日1236
噴火警報(火口周辺)レベル3、大きな噴石
9月28日1930
噴火警報(火口周辺)レベル3、大きな噴石、火砕流
9月27日の噴火前に気象庁は解説情報を3回出して地震増加を伝えた。このうちのどれかを噴火予報として出していればもっとよかった。気象庁の噴火警戒システムにおいて、レベルを1に据え置いたまま改めて噴火予報を出して注意喚起することは可能だ。解説情報と噴火予報は情報のレッテル(重み)が違うから、噴火予報を出していれば社会の受け止め方が変わっていただろう。
もし噴火警報(火口周辺)として出してレベルを2に引き上げていれば、1キロ以内の立入禁止が処置された。そうしてあれば今回の犠牲者はひとりも出なかったわけだが、それは後知恵だ。9月中旬には地震増加以外の異常が認められなかった。地殻変動も熱異常もなかった。あの状況でレベル2に引き上げる判断をするのはむずかしかったろう。
【“気象庁による御嶽山の火山情報発表”の続きを読む】