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早川由紀夫の火山ブログ

Yukio Hayakawa's Volcano Blog

カラパナのオーシャンエントリー 4月28日



溶岩展望台にそれぞれ自分の場所を確保して日没を待つ大勢の人たち。

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日が暮れると、このようにマグマの流れ込み口が赤く光る。この日は、流れ込み口までかなりの距離があり、向こう側の海に流れ込んでいて条件はよくなかった。それでも、ときおりスパターが飛び散って放物軌道を描くのが見えた。

4月27日のハレマウマウ

ハレマウマウからの噴煙をスチーミングブラフとジャガー博物館から撮影した。この日の噴煙の量は多かったが、火山灰を含まない水蒸気ばかりの白煙だった。日没後は、噴火口が赤く輝いた。月のない夜だったため、上空の雲に照り返す火映も確認できた。

IMGP2402s.jpg F11, 1/350, 50mm

IMGP2404s.jpg F11, 1/250, 18mm

IMGP2413s.jpg F11, 1/180, 18mm

IMGP2414s.jpg F9.5, 1/350, 55mm

F1.4, 1/4, 50mm

IMGP2510s.jpg F1.4, 2, 50mm

IMGP2547s.jpg F1.4, 15, 50mm

IMGP2551s.jpg F1.4, 15, 50mm

ヒロの上空を覆う黒雲と咳をする人



キラウエアの方向で発生してHiloの上空にかかる黒い雲。4月25日11時25分、Walmart駐車場で撮影。車は、ハイウエイ11号に平行に停まっている。

今朝のヒロは、無風で霧が深かった。宿の主人は「これはvogだ」という。Vog は volcanic fog。ハワイ島の住民が普通に使う言葉だ。今回の旅行では、コナでもヒロでも、おかしな咳をするひとをよく目にする。過去の滞在で、この特徴的な咳をこれほど多く聞くことはなかった。今月二度目の火山国立公園の閉鎖は、きょう13時に解かれた。

火山噴火と自動車保険

自動車保険の更新が近づいてきて、資料が送られてきました。それをみて気づきました。

車両保険は、「台風・こう水・高潮」の場合に補償されると書いてあります。昨年末にあった気象業務法の「画期的」改正によって火山噴火の前に警報が出るようになったというのだから、ここに「火山噴火」も加えてほしいものです。

2004年9月16日朝、浅間山に向かう途中の横川サービスエリアで、火山噴火による被害が補償されるかどうか私は保険代理店に電話で尋ねましたが、補償されないという答えをもらいました。火山監視技術が向上して火山噴火の危険を事前にアナウンスできると気象庁がいうのだから、これからは火山噴火による被害も台風や洪水による被害と同じように補償されてしかるべきです。

「テフラ」と「火山灰」の定義

ハワイ火山観測所が毎日出しているキラウエア最新情報に、次の記述がある。

Definitions of terms used in the update:
tephra: all material deposited by fallout from an eruption plume, regardless of size.
ash: tephra less than 2 mm (5/64 inches). Previous updates sometimes used the term 'ash' loosely (without regard to particle size) where 'tephra' was more appropriate.


和訳してみよう。

この最新情報で使っている用語の定義
テフラ:噴煙柱から落下する物質すべて。大きさによらない。
火山灰:2ミリより小さいテフラ。過去の最新情報では、粒の大きさを厳密に考えないで「火山灰」の語をしばしば使ったが、そこでは「テフラ」の語を使うのが適当だった。

一般向け情報なのに、なんと厳密で学術的でわかりやすい記述だろうか。そして謙虚だ。

「入山規制 気象庁」の見出し

<桜島>噴火警戒レベル2から3に 入山規制 気象庁
4月8日11時38分配信 毎日新聞


この見出しをみた読者は、気象庁が入山規制したのだと理解してしまう。これが重大な誤解だということを、記事を出稿した記者と見出しをつけたデスクは気づいているだろうか。

本文は次の通り:

 気象庁は8日、桜島(鹿児島市)の噴火警戒レベルを、火口周辺規制に当たる「2」から、入山規制に当たる「3」に引き上げたと発表した。

 桜島では同日午前0時29分、昭和火口(南岳東斜面の標高800メートル付近)で爆発的な噴火が発生。噴煙が火口上1200メートルまで上がり、噴石も5合目まで飛散、火砕流が火口から約1キロ流下した痕跡が確認された。レベル3は登山禁止や入山規制となるが、住民は避難の必要はなく通常の生活ができる。

 桜島は2月3日にレベルを「2」から「3」に引き上げたが、その後、噴火が発生しなくなったため同20日に「3」から「2」に引き下げていた。気象庁は「噴火活動が活発化する恐れがあり、火口から居住地域近くまでの広い範囲で噴石や火砕流への警戒が必要」と呼びかけている。【樋岡徹也】


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「噴火に関する火山観測報」

気象庁が本日未明、噴火に関する火山観測報というラベルの情報を突然出した。本年1月に新設した火山の状況に関する解説情報との関係は不明だ。あ、ここに説明がある。随時と適時の違いか。わかったような、わからないような。想像するに、噴火に関する火山観測報はおそらく速報なのだろう。

本日未明の桜島観測報には、ひな形にない噴石情報が盛り込まれている。

火  山:桜島
日  時:2008年04月08日00時29分(071529UTC)
現  象:爆発
有色噴煙:火口上1200m(海抜6800FT)
白色噴煙:
流  向:南東
---
A点最大振幅 :2.0μm
爆 発 音 :不明
体 感 空 振 :不明
O点空振計 :不明
D点空振計  :2.3Pa
噴 石 :中量5合目
噴 煙 :中量
火 口 :昭和火口
今年6回目


ここでいう噴石は弾道を描いて空中を飛行した大きな噴石の意味だと思われる。しかし、この程度の爆発なら、2ミリの小さな噴石は島を取り巻く一周道路のどこかに落下しただろう。つまり気象庁自身が先日定義したばかりの噴石は、5合目よりはるかに遠くまで達したことが確実だ。このような不正確な情報は、社会に利益をもたらすより、むしろ混乱させる害毒となる。

気象庁噴石にかかわる前回の文章は4月4日

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キラウエアの近未来予測

キラウエアの今後を予測してみました。3月23日予測3月25日予測に続く3回目の予測です。

(1)再び爆発するが、3月19日を越える強い爆発はない。(15%)
(2)3月19日より強い爆発が起こる。(5%)
(3)火口のそばにスコリア丘をつくりつつ、ハレマウマウを溶岩湖が満たす。(25%)
(4)スコリア丘だけができる。(5%)
(5)溶岩湖だけができる。(10%)
(6)ハレマウマウ外のキラウエアカルデラ内から新しい噴火が始まる。(5%)
(7)東リフトゾーンの新しい場所から噴火が始まる。(5%)
(8)南西リフトゾーンから新しい噴火が始まる。(5%)
(9)このままやがて沈静化する。(25%)

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ジャッガー博物館まで行けるようになったようだ

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USGS HVO (左)4月6日6時、(右)4月7日6時、いずれも日本時間。

ジャッガー博物館に、ハレマウマウを見物するたくさんのひとの姿がきのうから見える。きょうは子どもまでいる。ここまで観光客がいけるようになったとみられる。

ところでハワイ島にいくひとへ。アロハ航空は3月31日でなくなりました。もう運行していません。ホノルルからハワイ島行きのアロハ航空チケットはすでに紙くずです。もしお持ちの方は、チケット購入先にすみやかに問い合わせることを勧めます。ハワイアン航空は運航しています。

赤いレフアと金色のペレの毛

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USGS HVO

(左) ボルケーノハウスからみたハレマウマウの噴煙。いま、観光客はこの景色を見ることができる。赤い花は、オヒアの木に咲いたレフアの花。

(右) 閉鎖されたハレマウマウ駐車場の片隅に集積したペレの毛。ハレマウマウからの噴煙から2日でこれだけたまった。ハワイはいま夜で、ハレマウマウの噴出孔は赤く輝いている

直径20ミリの火山礫も火山弾?



火山麓の市町村が、車道の上に落下したわずか20ミリの火山礫も火山弾と呼んで住民に広報した事実がここにある。2004年のことだ。風に流されて空中を移動した火山礫を火山弾と呼んでしまうと、弾道軌道を描いて空中を飛行して着地点にクレーターをつくるようなほんとうの火山弾を何と呼べばよいか、専門家は当惑してしまう。火山礫も、頭上にまともにくらえば生命の危険があるが、ほんとうの火山弾の破壊力はそれとは比べものにならない。両者を言語で明確に区別することが、火山防災のために必須である。

2004年9月1日の浅間山噴火で、後者のきわめて破壊的な火山現象が発生したが、気象庁はこれを一般に熱心に周知しようとしなかった。むしろそのような破壊的現象があったことを隠そうとしたようにみえる。そういった種類のリスクはまるでひとつもないかのような情報提供を、気象庁は続けた。正確な意味がわからない中規模噴火という語を多用し、いまの浅間山の噴火リスクは深刻なものではないことを発表文中に匂わせた。説明会では職員がはっきりそう述べた。2000年8月の三宅島噴火でも気象庁の姿勢は同様だった。伊ヶ谷の都道に突き刺さった直径50センチの火山弾には、結局言及しなかった。

このような近い過去の歴史的事実と、上に掲げたリーフレットにみられる市町村の無知、そしてそれを教育せずに放置する気象庁をみると、気象庁による噴石という語のいまの使い方は、単なる言葉遣いの不器用に起因するものではないように思われる。気象庁は意図してこの使い方を選んでいるのだろう。その意図は、防災の目的とは相反しているように私には感じられる。

気象庁噴石にかかわる前回の文章は4月3日

気象庁による今日の噴石定義

本日12時に気象庁が発表した桜島解説情報15号には、次の記述が含まれている。

・弾道を描いて飛散する大きな噴石
・風の影響を受ける小さな噴石(火山れき)

したがって、気象庁による今日の噴石定義は次のようだと解釈される。

火山れきあるいはそれより大きいもの、すなわち直径2ミリ以上の粒子を噴石と呼ぶ。そのうち火山れきサイズを「小さな噴石」と呼ぶ。これは空中を飛行する際に風の影響を受ける。火山れきより大きい粒子、すなわち直径64ミリ以上の粒子を「大きな噴石」と呼ぶ。これは風の影響を受けずに弾道軌道を描いて飛行する。

火山学には64ミリ以上の粒子に対して火山岩塊(がんかい)という確固たる呼び名がある。英語ではblocksという。今日の気象庁がいう大きな噴石は火山岩塊に等しく、小さな噴石は火山れき(lapilli)に等しい。これらについて、大きな噴石、小さな噴石とわざわざ煩雑でわかりにくい呼び方をする必要性はどこにも認められない。新しい概念の提出がそこにあるわけでもない。また、昨年(2007年)12月に発表した噴火警戒レベル表では、噴石を一貫して大きな噴石の意味で使っている。この表をこのまま放置すると、次の火山危機のときに深刻な誤解が生じるだろう。

すでに確立している火山用語体系を使うことを拒絶して、気象庁内部だけで使ってきた隠語(jargon)の使用を社会に無理やり押し付けるこの行為は、健全なリスク・コミュニケーションの姿ではない。もし気象庁が、(出先機関である軽井沢測候所が明治以来つい最近まで使ってきた慣習を尊重して)噴石を火山岩塊の意味に限って使うというのなら、火山岩塊に代えて噴石の語を防災用語として一般に普及することに意義が見出せるかもしれない。しかし、そう定義せずに2ミリの石粒も噴石だといま新たに呼ぼうとするのなら、それは社会をわざわざ混乱させる愚かな行為である。防災用語の不適切な使用は、無念の犠牲者を生むことに直結する。気象庁は、火山監視機関としての責任を十分に果たしているとは言えない。

火山名 桜島 火山の状況に関する解説情報 第15号
平成20年4月3日12時00分 福岡管区気象台・鹿児島地方気象台

**(本 文)**
<火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)が継続>

 本日(3日)10時55分頃、桜島の昭和火口(南岳東斜面、標高800m)でごく小規模な噴火が発生しました。監視カメラによると、灰色の噴煙を火口縁上高さ800mまで上げています。火砕流、弾道を描いて飛散する大きな噴石の飛散は確認されていません。

 昭和火口からの噴火は、2008年2月6日以来です。

 今後しばらくは噴火活動が継続し、南岳山頂火口及び昭和火口の周辺に弾道を描いて飛散する大きな噴石を噴出する程度の小規模な噴火が発生すると予想されますので、これらの火口周辺では噴火に対する警戒が必要です。また、風下側では降灰及び風の影響を受ける小さな噴石(火山れき)に注意して下さい。

<火口周辺警報(噴火警戒レベル2、火口周辺規制)が継続>


気象庁噴石にかかわる前回の文章は3月20日