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Greg Osby / Further Ado

Label: Blue Note
Rec. Date: Mar. 1997
Personnel: Greg Osby (as), Jason Moran (p), Calvin Jones (b) [8], Lonnie Plaxico (b) [except on 8], Eric Harland (ds), Tim Hagans (tp) [4, 6, 8, 10], Mark Shim (ts) [4, 6, 8, 10], Cleave Guyton (fl, alto-fl, cl) [2, 7], Jeff Haynes (per) [4, 9, 10]
Osby Greg_199703_Further Ado 
1. Six of One [Osby]
2. Transparency [Osby]
3. Mentor's Prose [Osby]
4. Heard [Osby]
5. The 13th Floor [Osby]
6. Soldan [Osby]
7. Of Sound Mind [Osby]
8. The Mental [Osby]
9. Tenderly [Walter Gross, Jack Lawrence]
10. Vixen's Vance [Osby]

 「Gary Thomas / Pariah's Pariah」の記事で触れましたように、アルトサックス奏者Greg Osby(グレッグ・オズビー)は、Blue Note移籍第一弾となった「Man-Talk for Moderns Vol. X(1990年録音)」に続いて発表した「ヒップホップ血迷い盤」の2枚、すなわち「3-D Lifestyles(1992年録音)」と「Black Book(1994年録音)」で私を含む多くのリスナーを失望させた(?)ところですが、「こんなことやってちゃいかん!」と本人が思ったかどうかは知りませんが、「血迷い後」第一弾の「Art Forum」(1996年録音、本記事の最下段にジャケット写真を掲載)を皮切りに「The Invisible Hand」(1999年録音)に至る力作6枚を次々に発表・・・このようにいま振り返ってみますと、彼のキャリアのピーク真っただ中と言ってもよい1997年に、今回取り上げる「Further Ado」は録音されました。
 いまさらという気もしますが、やはりGreg Osbyのファンとしては触れておかなければならない一枚であり、さらに、このふざけたジャケットによって多くのリスナーにきっとシカトされているんだろうなと思い、今回ここに取り上げる次第です。

 コアとなるリズム陣は、ピアノJason Moran(ジェイソン・モラン)、ベースLonnie Plaxico(ロニー・プラキシコ)、ドラムEric Harland(エリック・ハーランド)のお馴染みの三人、4曲にラッパTim Hagans(ティム・ヘイゲンス)やテナーMark Shim(マーク・シム)らが加わるメンバーです。

 前作「Art Forum」もそうなのですが、このアルバムでのGregもとにかく脂が乗っていると言うか、彼の持ち味である深く艶やかな音色でウネウネと上下に動くフレーズを「吹き切っているな」と感じさせるプレイです。彼のキャリアのピーク云々ということを上に述べましたが、彼のアルトサックス奏者(このアルバムでは全編アルトで通しています)としての正にピークを捉えた演奏の一つと断言できる快演です。彼のアドリブ・ラインと表裏一体のような自身のオリジナルを中心とした選曲で、例えばアップテンポでブロウする冒頭曲、グッとテンポを落としてかなり屈折したバラードの2、3、5曲目、M-Baseライクなホーンとパーカスが入るラテン・ビートの4、10曲目、拍子が掴みにくい不思議チューンの8曲目などなど・・・どのような場面でも、Gregのアルトはキレています。唯一のスタンダードの9曲目”Tenderly”での、前後の流れとはちょっと変わって素直な(とは言っても「それなりの素直さ」ではありますが)バラード吹奏もしんみりと聴かせます。

 そしてもう一つ特筆すべきは、リズム陣のクオリティの高さ、中でもJason Moranの存在です。私の手元では、本作がJasonの最も古い録音(おそらく彼の最初のレコーディングと思われます)で、この後Gregと共演を重ねる二人の初顔合わせとなるセッションですが、ソロ、バッキングともにGregの「屈折感」にピタリと呼応するJasonのプレイで、初顔合わせにして二人の相性はバッチリです。そして、各曲でフィーチャーされるピアノソロは、短いながらも自信に満ちた風格さえ感じさせるようなプレイです。このレコーディングでスタートしたGregとJasonのコンビは、私が大好きなMark Turner(マーク・ターナー)とEthan Iverson(イーサン・アイバーソン)とのそれと同レベルの高み・深みを感じます。

 最後にもう一点、6、10曲目ではMark Shimが短いながらも彼らしいソロをGregと交換する場面があり、贔屓の二人のサックス奏者を同時に味わえるというのも、個人的には嬉しい限りです。

 トホホなジャケットからは想像できないようなシビアな演奏が繰り広げられる力作で、何度も申し上げますように、Greg Osbyのピークを捉えた会心のアルバムです。

「Art Forum」(1996年録音、Blue Note)
Osby Greg_199602_Art Forum

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半世紀ジャズを聴いている新米高齢者♂です

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