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Lovano, Osby / Friendly Fire

Label: Blue Note
Rec. Date: Feb. 1999
Personnel: Joe Lovano (ts, ss, fl), Greg Osby (as, ss) [except on 5], Jason Moran (p), Cameron Brown (b) [except on 5, 8], Idris Muhammad (ds) [except on 5, 8]
Lovano Joe_199812_Friendly Fire
1. Geo J Lo [Osby]
2. The Wild East [Lovano]
3. Serene [Eric Dolphy]
4. Broad Way Blues [Ornette Coleman]
5. Monk’s Mood [Thelonious Monk]
6. Idris [Lovano]
7. Truth be Told [Osby]
8. Silenos [Osby]
9. Alexander the Great [Lovano]

 贔屓のGreg Osby(グレッグ・オズビー)と苦手のJoe Lovano(ジョー・ロヴァーノ)とのコ・リーダーアルバム『Friendly Fire』を取り上げます。

 本作はブルー・ノート60周年記念のスペシャル・プロジェクトのひとつだそうで、そう言えば『Blue Note All-Stars / Our Point of View』(ブルーノート・オールスターズ三題)は75周年記念でしたので、その15年前ということになります・・・月日の流れるのは早いものです。

 このアルバムの(私的)ポイントは以下の二点です。
 一点目はグレッグ・オズビーのプレイ。
 本作は、以前このblogで取り上げた『The Invisible Hand』(1999年9月録音)の半年ほど前の録音にあたりますが、これまでに何度か申し上げているように、90年代半ばから後半(もはや20年以上前になりますが)にかけてのグレッグは、間違いなくプレイヤーとしてのピークを迎えていたと私は思っています。言うならば「屈折しながらも力強い」上下にウネウネと動くフレージング、彼にしか表現しえない世界を描くプレイにはますます磨きがかかり、「完成」の域に達したと言ってもよいその姿をこのアルバムでも聴くことができます。

 二点目は若手・ベテラン混合のリズム・セクション。
 1997年に録音された『Greg Osby / Further Ado』あたりから当時のオズビーのパートナーであったJason Moran(ジェイソン・モラン、1975年生まれ)のピアノに、Cameron Brown(キャメロン・ブラウン、1945年生まれ、『Here and How!』で既出)のベース、Idris Muhammad(アイドリス・ムハマド、1939年生まれ、『Roots / Stablemates』で既出)のドラムというベテラン二人が加わります。
 ライナーノーツよると、キャメロン・ブラウンとアイドリス・ムハマドは当時ロヴァーノとツアーを打っていたそうで、オズビーがジェイソン・モランを、ロヴァーノがベテラン二人をそれぞれ連れてきての言わば「混成」のメンバー構成ということになります。
 ジェイソン・モランにとってはおそらく初共演の先輩二人と組んだこのリズム隊が醸し出す「ゴツゴツ」とした舌触り感が、間違いなくこのセッションの特徴であり生命線になっていると思います。例えばグラント・グリーン、ルー・ドナルドソン、ファラオ・サンダース、ハンク・クロフォード、ボブ・ジェームスなどなど、実に多彩な共演歴を持つアイドリス・ムハマドが、ここではエド・ブラックウェルを彷彿とさせるような「味のある無骨」なドラミングを披露し、ある意味このリズム陣を支配しているようにも聴こえます

 ジョー・ロヴァーノについて何も書かなかったことに深い意味はありません。ただ単に好き嫌いの問題です。
 いずれにしましても、グレッグ・オズビーのピーク期のプレイを聴くことができるだけでなく、ジェイソン・モラン、キャメロン・ブラウン、アイドリス・ムハマドの三人が叩き出す味わい深いリズムも印象に残るアルバムです。

David Binney / Point Game

Label: Owl Records
Rec. Date: Apr. 1989
Personnel: David Binney (as, ss, pitchrider), Edward Simon (p, synth), Adam Rogers (g), Lonnie Plaxico (b), Marvin “Smitty” Smith (ds)
Binney David_198904_Point
1. Point Game
2. Subjection
3. The Bronx
4. Epicycle
5. Riverside
6. Peer
[all compositions by David Binney]


 サックス奏者David Binney(デビッド・ビニー、『John Escreet / The Age We Live In』『Liebman, Binney, McCaslin, Blais / Four Visions』(David Liebman新旧サックス・アンサンブル)『David Binney / Third Occasion』で既出)の初リーダーアルバム『Point Game』を取り上げます。

 なかなか面白いメンバーですが、本作が録音された1989年(もはや30年以上前になります)当時というと、ピアノEdward Simon(エドワード・サイモン)、ベースLonnie Plaxico(ロニー・プラキシコ)、ドラムMarvin “Smitty” Smith(マービン・スミッティ・スミス)はSteve Coleman(スティーブ・コールマン)、Greg Osby(グレッグ・オズビー)、Robin Eubanks(ロビン・ユーバンクス)ら、いわゆるM-Base一派のアルバムに参加していました。一方のリーダーとギターのAdam Rogers(アダム・ロジャース)ですが、本作は二人の最初期の録音、おそらくレコーディング・デビューだったのではないかと思われます。このようにデビッド・ビニーが、ともにホヤホヤの新人だったアダム・ロジャースと、当時M-Baseで「鳴らしていた」強者三人を迎え、気合を入れて録音した初リーダーアルバムが本作『Point Game』だった・・・という感じでしょうか。

 ビンビンと響くベースとパワフルなドラムが叩き出す16ビートに乗ってメカニカルに上下するテーマ部に続いて、音を歪ませながらブロウするアルト、エフェクターを通してヤクザな音色で切り裂くギター・・・かなり行きっぱなしの「元気の良い」サウンドで聴き手を圧倒するオープナーです。続く2曲目はテンポを落としてスペイシーなサウンドが展開されますが、相変わらずベースはビンビンと弦を弾き(チョッパー)、スミッティのドラムは手数・足数をかけてオカズ・ショットを繰り出すといった塩梅です。
 全6曲中、2、5曲目はややクールダウンするものの、他の4曲は冒頭曲と同傾向のアップテンポのリズムが躍動する楽曲によって構成され、約40分という収録時間がアッという間に過ぎてしまう実に勢いのあるアルバムです。
 このアルバムでのデビッド・ビニーは、迷うことなく、弱みを見せずに、一心に力強いブロウを聴かせ、これは初リーダーアルバムにして、飛び切りの好演と言ってよい出来だと思います。さらにアダム・ロジャースは後年の彼の(どちらかと言うとクールなテイストの)プレイからはかなり離れたところにいる、言われないとわからないくらいホットで元気いっぱいなプレイを披露しますし、他の三人だって、同様に気合満点でクオリティの高いプレイでデビッドの初リーダーアルバムに花を添えて(?)います。
 本作のサウンドを乱暴に括ってしまうと、やはり「M-Base」ということになるのでしょうが、当時のM-Baseを牽引したスティーブ・コールマンやグレッグ・オズビーらのそれとは少し舌触りの違うサウンド・・・うまく表現できませんが、ともすると「血が通っていない」或いは「屈折してるね」と感じさせた「本家」よりもずっとストレートで素直に聴き手に訴えかけているとでも言えばよいのでしょうか。まあ、2022年の今日になってみると、このアルバムのサウンドがM-Baseだろうが何だろうが、本当にどうでもよいことですが。

 デビッド・ビニーを聴くんだったらこれは外せないなと私が思っている彼のデビュー・アルバムです。少々時代を感じさせるサウンドではありますが、リーダーだけでなく参加メンバーの気合満点のプレイも強く印象に残る力作です。

Monder, Malaby, Rainey / Live at the 55 Bar

Label: Sunnyside
Rec. Date: Mar. 2020
Personnel: Tony Malaby (ts, ss), Ben Monder (g), Tom Rainey
Monder Ben_202003_55 Bar
SUITE 3320
1. Part I
2. Part II
3. Part III

 今年も昨年(2021年)聴いた新譜から一枚選んでblogをスタートしたいと思います。
 ギターBen Monder(ベン・モンダー)、サックスTony Malaby(トニー・マラビー)、ドラムTom Rainey(トム・レイニー)という互いに共演歴のある三人によるNYのクラブでのライブ盤です。サックス、ギター、ドラムというベースのいない編成は、トニーの参加アルバムでは他にはなかったように記憶します。
 収録されている“SUITE 3320”(2020年3月3日録音)と題された三つの長尺トラック(パート1/16:54, パート2/29:17, パート3/15:27)で構成された本アルバムは、基本的に全編フリーのインプロで構成されたステージです。

 冒頭パート1では、ベン・モンダーが「通奏低音」を弾きながら、その上空でギターが浮遊するというパターンが多用され、これはクセになるような気持ち良さがあります。一方のトニー・マラビーは、ベンが用意する空間でトム・レイニーの繰り出すショットに呼応しながら、終始フリー・ブローウィングを続ける・・・三人の濃密な交感は聴き手に伝わってきますが、演奏の態様はかなりアブストラクトです。
 29分超のパート2ではトニー・マラビーはソプラノでスタートします。
 パート1(テナー)よりも聴き手にやや近づいたサウンドになると感じるのは気のせいでしょうか。ここでのトニーのソプラノは味があります。トム・レイニーが飄々とビートを刻んでいるところは、ティム・バーンのユニットでのプレイを思い出します。一方このトラックでもベン・モンダーは超低音から高音まで広い音域と多彩な音使い(ギター・シンセ?)を聴かせます・・・今さらではありますが、この人はなかなかの才人ですね。
 20分あたりからトニーはテナーに持ち替えますが、依然としてパート1よりも具体的な(とは言ってもあくまでも「それなりに」ではありますが)サウンドです。パート1に比べてはるかにスッと入ってくるのは、メンバーの暖機運転が効いてきたせいでしょうか、それともこちらの耳が慣れてきたせいでしょうか。
 パート3は攻撃的なサウンドの出だしからトニーのテナーの咆哮、サウンドが少々穏やかな局面になっても三人の温度(熱気)は保たれており、演奏の根底に流れるのはいつものようにトニーの「情念」と言ったところでしょうか。

 三つのパートを私なりに総括するならば、思索的に三人が絡み合うパート1、彼らなりに聴き手に近づき演奏が具体化する(ように聴こえる)パート2、「情念」が炸裂するパート3・・・なんとも稚拙で乱暴な総括ではありますが。

 当然ながら聴き手を選ぶサウンドですし、フリージャズに免疫のあるリスナーでも気合を入れて聴く心構えが必要なアルバムでしょう。個人的にはこういう真摯なフリージャズを(たまぁ~に)聴くと気分がシャキッとします。三人の持ち味は充分に出ていますし、なかでもベン・モンダーの高度な「技」が冴えわたっているのが聴きどころです。
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sin-sky

Author:sin-sky
半世紀ジャズを聴いている新米高齢者♂です

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