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Kenny Werner / Live at Visiones

Label: Concord
Rec. Date: Aug. 1995
Personnel: Kenny Werner (p), Ratzo Harris (b), Tom Rainey (ds)
Werner Kenny_199508_Visiones 
1. Stella by Starlight [Victor Young, Ned Washington]
2. Fall [Wayne Shorter]
3. All the Things You are [Jerome Kern, Oscar Hammerstein II]
4. Blue in Green [Miles Davis]
5. There Will Never be Another You [Harry Warren, Mack Gordon]
6. Blue Train [John Coltrane]
7. Windows [Chick Corea]
8. Soul Eyes [Mal Waldron]
9. I Hear a Rhapsody [George Frajos, Jack Baker, Dick Gasparre]

 今回の記事は、ピアニストKenny Werner(ケニー・ワーナー)のトリオによる「Live at Visiones」です。
 Kennyは1951年NY産で、ネット情報によりますと1977年に既に最初のリーダーアルバムを録音しているようですが、私が彼と付き合い始めたのは1989年録音の「Introducing the Trio(Sunnyside)」からということになります。
 本作「Live at Visiones」は、この「Introducing the Trio」録音時からレギュラー活動をしていた彼のトリオの最後のアルバムで、ベースRatzo Harris(ラッツォ・ハリス)とTom Rainey(トム・レイニー、Tim Berneの三つのユニットなどに参加)とのトリオによるNYのジャズ・クラブでのライブアルバムです。

 アルバムのサブタイトル「Standards」のとおり、トラックリストにはスタンダードやジャズメン・オリジナルの有名どころがズラッと並んでいます。本作でこのトリオに初めて接するリスナーは、手慣れた楽曲を選んでのリラックスしたライブ・セッションだろうと期待するわけですが、冒頭のスタンダード” Stella by Starlight”が始まった途端、それを大きく裏切る展開になっていきます。
 その冒頭曲は、アブストラクトなピアノのイントロからリズムが入ってきますが、原曲からはかなり離れたコード・チェンジで、トラックリストを見なければあの”ステラ”にはとても聴こえないくらい大胆な解釈でアルバムがスタートします。
 2曲目ショーターの”Fall”は、上記”ステラ”に比べれば幾分か「素直に」演奏されます。ず~んと腹に響くベースに淡々とリズムを刻むベースに支えられて、Kennyの指が上下に動き回り硬質なタッチでフレーズを叩き出し、このあたりで、リスナーは「このトリオはなかなか良いじゃん」といった感触を掴んでいきます。
 全体的に、1, 3, 5, 9曲目のスタンダードは、かなり原曲から離れた彼ら流を貫く独善的解釈で押し通し、その他のジャズメン・オリジナルは、比較的素直な解釈で原曲に寄り添いつつ、自分たちの個性を主張している、といったところでしょうか。
 そして、どのトラックでも聴き手の耳を惹きつけるRatzo Harrisのベースの圧倒的な存在感が、このトリオの特徴の一つでしょう。なかでも、マイルス作の4曲目”Blue in Green”では、 広い音域を使った粘っこくて技巧的なベースが「これでもか」或いは「ここまでやるか」と大フィーチャーされ、出色のプレイを聴かせてくれます。

 Kenny Wernerというピアニストは、1960、70年代の少しフリーに傾いた頃のチック・コリアあたりを「源流」として、よく指が動いて、時に大きくアウトする強面のフレーズを一気に弾いてしまう技巧派のピアニストで、本作でのプレイにも、その彼の特徴がハッキリと表れていると思います。
 本作の後にも、新たなトリオで意欲的なアルバムを出したり、リーブマン、デイブ・ホランド、ジャック・ディジョネットとフリージャズのアルバム(「David Liebman / Fire(2016年録音、Jazzline)」)を出したり、一方で我が国のレコード会社に付き合って「ちょっとなぁ」というアルバムを出したりと、精力的な活動を続けているわけですが、彼が最初に取り組んだこのレギュラートリオでの演奏には、他にはない圧倒的な勢いを感じます・・・すなわち、これが「旬」ということなのでしょう。

 このトリオの三作目(その他にこのトリオにゲストが参加するアルバムが2枚あります)にして最終作となったこの「Live at Visiones」は、有名曲を素材にしながらも彼らがやりたいことを徹底してやり切っているということが聴き手に伝わってくる力作です。さらに、このトリオでのRatzo Harrisの素晴らしいプレイゆえに、彼の名前は強く記憶に残ることになりました。

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Author:sin-sky
半世紀ジャズを聴いている新米高齢者♂です

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