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David Liebman Group / Live at MCG

Label: MCG Jazz
Rec. Date: Oct. 1995
Personnel: David Liebman (ss, wooden-fl), Phil Markowitz (p, kyb), Vic Juris (g), Tony Marino (b, elb), Jamey Haddad (ds, Hadgini drum)
Liebman David_199510_Live MCG 
1. Maiden Voyage [Herbie Hancock]
2. Cut [Markowitz]
3. All Blues [Miles Davis]
4. Mine is Yours [Markowitz]
5. Beyond the Line [Liebman]
6. New Age [Liebman]

 101回目の記事は、我らがDavid Liebmanのリーダーアルバムです。
 これまでこのblogでは、Liebmanがサイドマンとして参加したアルバムのことは何回も書いてきましたが、リーダーアルバムを取り上げるのはなんだか芸がないなと思って控えてきたところです(これまでに取り上げた彼の単独リーダーアルバムは、三題噺「今世紀に入って発掘された音源 三題」の「David Liebman / Mosaic Select Pendulum」のみです)。
 でも考えてもみればLiebmanのリーダーアルバムなんて「陽のあたらない」(第一回記事「ごあいさつ」より)の典型みたいなものでしょうし、二周目(?)の101回目に入ったこともありますし、これからはボチボチと彼のリーダーアルバムのことを書いていきたいと思っています。

 1980年代のDavid LiebmanのレギュラーバンドはRichie Beirachらが参加したゴリゴリ・アコースティックのQuestが中心でしたが、90年代に入るとメンバーを一新してPhil Markowitz、Vic Jurisらが参加し、エレクトリックを取り入れたレギュラーバンドでの活動を始めます。このメンバーによる録音は手元では「Turn It Around(1992年録音、Owl)」が最初のアルバムで、本ライブアルバムが録音されたのはそれから3年後ということになります。
 演奏される楽曲は、ハンコックの"Maiden Voyage"とマイルスの"All Blues"以外はリーダー又はキーボードのPhil Markowitzのオリジナルですが、全て以前にこのメンバーで録音されたアルバムから選ばれています。

 Phil Markowitz、Vic Juris、Tony Marino、Jamey Haddadによる当時のレギュラーバンドのサウンドは、私にとって充分に魅力的だったかは正直申し上げて少々疑問符が付くのですが、彼らの手馴れたレパートリーを取り上げたこのコンサートでは、初出のスタジオ録音でのそれに比べて、当然ながらより自発的で熱い演奏が繰り広げられます。
 例えば聴き慣れた"Maiden Voyage"と"All Blues"での彼ら流のアレンジを施した演奏は完全に熟れていて、このバンドが良い塩梅に熟成しているのがよくわかります。もちろんそれら以外のオリジナル楽曲についても同様で、Phil Markowitzの多彩な(色んな音が出てくる、という意味で)キーボードも実に気が利いています。レギュラーバンドとしての完成度がここに極まっている、といった印象を受けます。

 そういう完成度の高いレギュラーバンドをバックにして、どのトラックでもDavid Liebmanのソプラノは冴え渡っています。「Conrad Herwig / New York Breed」の記事で述べましたように、本アルバムの2ヶ月後に録音された「John Coltrane's Meditation(1995年12月録音、Arkadia Jazz)」でおよそ15年ぶりに彼は本格的に再びテナーを手にするのですが、このアルバムが録音された時点までの彼のソプラノの集大成、或いは「ソプラノはこれでやり尽くしたね」とさえ感じてしまうくらいのクオリティで、これは見事と言うしかありません。

 CDの帯に「90年代デイブ・リーブマンのレギュラーバンドによる白熱のライブ!」なんてコピーが付くようなアルバムで、もちろん決して間違ってはいませんがそれだけで片付けては勿体ないくらい、ここでのLiebmanのソプラノはキレキレで、それがこのアルバムの宝でしょう。

Tim Berneの三つのユニット

 一昨年2016年7月にこのblogを始めて今回が100回目の記事更新になります。2年弱で100回というのは速いのか遅いのかよくわかりませんが、これからもこんなペースで続けていきたいと思っています。

 今回は三回目の特集記事(初回は「追悼Geri Allen」、2回目は「Bill Stewart with JB Horns」)になりますが、私の大好きなアルトサックス奏者Tim Berneが率いた三種類のユニットのアルバムを取り上げたいと思います。
 このblogを始めた時からずっとTim Berneのことを書かなきゃいけないなと実は思っていたのですが、彼の演奏を文章にするのがどうにもうまくいかず、放っぽらかしてズルズルと2年ほどが経ってしまいました。
 そこで100回目の節目の機会ですのでここは踏ん切りをつけて、特集記事として我が愛すべきTom Berneを取り上げる次第です。

 サックス奏者としてのTim Berneの魅力は何よりもその音色にあると私は思っています。腹筋のチカラで肺から吐き出された息がマウスピースを通じて100%楽器の音になって出てくる・・・うまく表現できませんが、アルトから出てくる音の「濃密さ」と「艶っぽさ」が私にとってTim Berneの最大の魅力です。さらにそのフレーズは強く、激しく、深く、美しく・・・小学生並みの言葉しか出てきませんが、上に書いたように彼の演奏を文章にするのは私の能力では無理のようです。

 ここに取り上げる三つのユニットは、Tim Berne、Marc Ducret、Craig Taborn、Tom Raineyの四人(ベーシストがいません!)が参加しています。そのサウンドは異論を待たない「フリージャズ」ですが、どの演奏も骨格(リズムと言ってもよいでしょう)がしっかりしているので、フリージャズにありがちな冗長さは全く感じられず、聴きやすいとは決して申しませんが、私にとってはこれ以上ない刺激と快感が得られる「聴いて楽しいフリージャズ」です。
 1990年代にTim Berneを意識して以来、かなりムキになって彼のアルバムを聴き漁ってきましたが、理想的な共演者との濃厚なインタープレイが展開される以下の8組10枚のCDこそ、Tim Berneというミュージシャンの魅力が凝縮されていると信じるものです。
(なお本記事でのアルバムタイトルの表記は、それぞれのCDの「背表紙」に記載されているものとしています。)

① Big Satan
 最初はTim Berne、Marc Ducret、Tom Raineyの三人によるBig Satanです。
 Tom Raineyがビートを提示し続けバンドのベースとなる部分をつくり、その上部の広大なスペースをサックスとギターが相互に触発し合いながら自在に、或いは変態的に泳ぎ回る・・・彼らの演奏の基本的な構造を下手くそな文章で表現するとこんな感じです。
 このメンバーには3組のアルバムがありますが、第一作「Big Satan」に比べてその8年後に録音された第二作「Souls. Savedhear」ではグッとサウンドに彩りが増して、三作目「Livein Cognito」では、このトリオの集大成とでも言うべき濃密なライブの模様が2枚組CDにたっぷりと収められています。
 このblogで何回か取り上げたフランス人の異才ギタリストMarc Ducretですが、このBig Satanは、彼の危険かつ変態度マックスのプレイを楽しむには最適なフォーマットだと思いますし、終始バンドを下支えするTom Raineyの健闘ぶりも見事です。

Personnel: Tim Berne (as, bs), Marc Ducret (g), Tom Rainey (ds)
①-1 Big Satan
Berne Tim_199602_Big Satan
Label: Winter & Winter
Rec. Date: Feb. 1996
1. Bobby Raconte Une Histoire
2. Dialectes
3. The 12 1/2 % Solution
4. Scrap Metal
5. Yes, Dear
6. Description Du Tunnel

①-2 Souls. Savedhear
Berne Tim_200406_Souls Saved Hear
Label: Thirsty Ear
Rec. Date: June 2003
1. Ce Sont Les Noms Des Mots
2. Hostility Suite
3. Geez (For Craig)
4. Rampe
5. Emportez-Moi
6. Deadpan
7. Mr. Subliminal
8. Property Shark
9. Plantain Surgery

①-3 Livein Cognito
Berne Tim_200599_Cognito
Lebal: Screwgun Records
Rec. Date:  2005
Disc 1: DESPERATE
 1. Deadpan
 2. L'Ombra Di Verdi
 3. Untitled
 4. Ce Sont Les Noms Des Mots
 5. Un Peu D'Histoire
Disc 2: MORE DESPERATE
 1. Mechanicals Failure
 2. Mr. Subliminal
 3. Untitled
 4. The Mini-Bar Incident
 5. Cause And Reflect
 6. BG UH OH


② Hard Cell
 上記Big SatanのMarc Ducretがピアノ・キーボードのCraig Tabornに交代したフリージャズの王道を行く(?)サックス・ピアノ・ドラムのベースレストリオの編成です。最初のアルバム「The Shell Game」に記載はありませんでしたが、2、3作目でHard Cellというユニット名(?)が付けられています。
 時にキーボードの低音部(左手)がベースに近い役回りを演じることによって、Big Satanよりもサウンドの骨格は幾分か明快になっているように聴こえます。
 Craig Tabornは「The Shell Game」ではエレピ、「Hard Cell Live」では生ピアノとエレピが半々、「Hard Cell Feign」では全編で生ピアノを弾いていますが、生ピアノを弾いてもエレクトリックを操っても、この人は痒いところに手が届くと言うか、どうすればサウンドがグッと刺激的或いは「危険」になるかということがわかっているなと思わせるプレイを聴かせます。
 Tim Berneのどこまでも深く激しいアルト、危険なチョッカイを出し続けるCraig Taborn、そしてBig Satanと同じようにバンドをしっかり支えるTom Rainey・・・濃密なトリオです。

Personnel: Tim Berne (as), Craig Taborn (p. kyb), Tom Rainey (ds)
②-1 The Shell Game
Berne Tim_200101_Shell Game
Label:  Thirsty Ear
Rec. Date: Jan. 2001
1. Hard Cell (for Tom)
2. Twisted/Straight Jacket
3. Heavy Mental (for Wayne Krantz)
4. Thin Ice

②-2 Hard Cell Live
Berne Tim_200499_Hard Cell Live 
Label: Screwgun Records
Rec. Date: 2004
1. Van Gundy's Retreat
2. Huevos
3. Traction
4. Manatee Woman

②-3 Hard Cell Feign
Berne Tim_200505_Hard Cell Feign
Label:  Screwgun Records
Rec. Date: May 2005
1. I Do It (For Brookti)
2. Time Laugh
3. Brokelyn
4. Mechanicals Failure
5. My First Phone
6. BG .....Uh....OH
7. I Thought You Had It
8. Pan/Ex


③ Science Friction

 Science Frictionは、ここまでの四人の登場人物が勢ぞろいします。
 Tom Raineyが鋭いリズムを叩き続けることでバンドのベースを形成しているのはここまでの二つのトリオと同様ですが、ここにはキーボードのCraig TabornとギターのMarc Ducretの二人がいますので、当然ながらサウンドはグッと厚みが増してきます。CraigとMarcは空間の埋め方の「役割分担」みたいなものを相互が意識して、サウンドをより多彩なものにしている、といったところでしょうか。これまで散々聴いてきた私の耳からすると、誤解を恐れずに言えば、多彩に躍動するリズムに「ポップ」なテイストさえ感じてしまいます。
 メンバーが四人になっても演奏の濃密さが低下することは全くなく、上記二つのトリオと併せて、各メンバーのキャリアのピークと言ってもよいプレイを披露してくれるカルテットです。

Personnel: Tim Berne (as), Craig Taborn (kyb), Marc Ducret (g). Tom Rainey (ds)
③-1 Science Friction
Berne Tim_200112_Science Friction
Label: Screwgun Records
Rec. Date: Dec. 2001
1. Huevos
2. iHornet
3. Sigh Fry
4. Manatee Woman
5. Mikromaus
6. Jalapeño Diplomacy
7. The Mallomar Maneuvre
8. Clown Finger

③-2 The Sublime and. Sciencefrictionlive
Berne Tim_200304_Sublime
Label: Thirsty Ear
Rec. Date: Aprl 2003
Disc 1:
 1. Van Gundy's Retreat
 2. The Shell Game
 3. Mrs. Subliminal/Clownfinger
Disc 2:
 1. Smallfry
 2. Jalapeño Diplomacy/Traction
 3. Stuckon U (for Sarah)
プロフィール

sin-sky

Author:sin-sky
半世紀ジャズを聴いている新米高齢者♂です

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