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John Escreet / The Epicenter of Your Dreams

Label: Blue Room Music
Rec. Date: May 2023
Personnel: Mark Turner (ts), John Escreet (p), Eric Revis (b), Damion Reid (ds)
Escreet John_202305_Epicenter
1. Call It What It is [Escreet]
2. The Epicenter of Your Dream [Escreet]
3. Departure No. 1 [Stanley Cowell]
4. Meltdown [Escreet, Turner, Revis, Reid]
5. Trouble and Activity [Escreet]
6. Erato [Andrew Hill]
7. Lifeline [Escreet]
8. Other Side [Escreet]

 前回に引き続き昨年聴いた新譜から、このblogではお馴染みジョン・エスクリートの十枚目のリーダーアルバムとなる『The Epicenter of Your Dreams』を取り上げます。
 メンバーは、前作『Seismic Shift』と同じベースのエリック・レヴィスとドラムのダミオン・リードとのトリオにマーク・ターナーが加わるカルテット編成です。

 リーダーのオリジナルが5曲、メンバー四人の共作の4曲目はインプロのトラック、3曲目のスタンリー・カウエル作”Departure No.1”は、”Departure”というタイトルでカウエル自身の初リーダーアルバム『Blues for the Viet Cong』(1969年録音、Polydor、後に『Travellin' Man』のタイトルでも再発)やチャールズ・トリバーの『Music Inc.』(1970年録音、Strata East)に収録された楽曲です。また6曲目”Erato”は、1965年に録音され2006年になってリリースされた『Andrew Hill / Pax』というアルバムに収録された楽曲です。前作でもスタンリー・カウエルのオリジナルを取り上げたジョン・エスクリートですが、この二曲もマニアックですね。

 非4ビート主体の比較的オーソドックスなサウンドで、カルテット編成ということもあって前作トリオ盤よりはやや穏当に響くような気がします。とは言っても、いかにもジョン・エスクリートらしい屈折と尖りは充分に感じられます。さらにリーダーのオリジナルがしっかりと作り込まれているというのも彼らしいところです。
 そして、ダミオン・リードが手数多く暴れて、エリック・レヴィスが堅実に支えるという構図は前作トリオ盤と同じです。特に5曲目でのマーク・ターナーが退きピアトリオになる場面(この曲に限ったことではありませんが)は、一気に前作のような「リズミカルなピアノトリオによるフリージャズ」になります。ジョン・エスクリートの、或いはこのトリオの本領発揮というところでしょう。

 マーク・ターナーについてですが、ここでのプレイが殊更優れているという訳では決してありませんし、まあ言ってみれば「いつもの調子」(私は決して嫌いではありません、念のため)なのですが、リーダーと彼の屈折感がうまい具合にシンクロしていて、おそらく初共演と思われる本作を聴く限り、この個性的な二人の相性の良さが伝わってきます。

 一方、スタンリー・カウエルとアンドリュー・ヒルの上記二曲(3, 6曲目)ですが、どちらかと言えば無機質、或いはメカニカルに響くリーダーのオリジナルの中にあって、絶妙なアクセントになっています。
 オリジナルよりもやや早いテンポで演奏される(私には耳タコの)3曲目も悪くありませんが、アンドリュー・ヒルの6曲目は、(ピアノトリオで演奏された)オリジナルのムードを尊重しながら、マーク・ターナーが(彼なりに)優しいソロを聴かせ、本作中最も情緒的でしっとりとした演奏に仕上げていて印象的です。

 ほぼほぼ予想したとおりの音が出てきて、新たな感動みたいなものはやや希薄ですが、それでもこの「ジョン・エスクリート・ピアノトリオ」は二作目にしてグッと熟してきた感がありますし、マーク・ターナーの参加、さらに2曲の非オリジナルも強く印象に残る私には嬉しい新譜になりました。

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半世紀ジャズを聴いている新米高齢者♂です

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