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Sam Rivers / Configuration

Label: Nato
Rec. Date: March 1996
Personnel: Sam Rivers (ts, ss, fl), Noël Akchoté (g), Tony Hymas (p), Paul Rogers (b), Jacques Thollot (ds)
Rivers Sam_199603_Configuration 
1. Beatrice
2. Cheshire Hotel
3. Etchings
4. Configuration
5. Jennifer
6. Zing
7. Sketches
8. Rififi
9. Gleam
10. Ripples
11. Moonbeams
12. Nightfall

 今年最後の記事更新になりますが、Sam Rivers72歳の1996年3月にフランスで録音されたアルバムを取り上げます。
 ギターのNoël AkchotéとドラムのJacques Thollot(この二人、どう発音するのでしょう?)はフランス産、ピアノのTony HymasとベースのPaul Rogersはイギリス産のようです。Sam RiversとTony Hymasとはしばしば共演があり、他の二人も多くではありませんが、Sam Riversとは共演歴のあるミュージシャンです。

 演奏される楽曲は全曲メンバーのオリジナル(共作を含む)で、メンバーはSam Riversを含めて五人ですが、全員が一緒(クインテット)の演奏は2,4,8の3曲のみで、その他の曲はデュオ又はトリオで演奏され、編成が変わることによってサウンドもガラッと変わって、これがこのアルバムの特徴になっています。異なる編成ごとに楽曲をピックアップします。
 テナー、ギター、ピアノのトリオで演奏される冒頭曲は、Sam Rivers自身を始め多くのミュージシャンがカバーする彼の代表作"Beatrice"ですが、原曲の美しいメロディを大切にして、呆れるほど穏やかで優しい演奏に仕上げています。
 一方フルートとベースのデュオで演奏される3曲目は、ほとんど全編インプロビゼーションの少々激しい演奏ですが、ベースが図太い音で「しっかりしたフリージャズ」をやっていますし、Sam Riversのフルートはどこまでも鋭く、これはなかなか聴かせます。
 「全員参加」のタイトルチューン4曲目は約13分の長尺曲です。これもいわゆる「フリージャズ」で、イントロ部は四人のリズム陣が色々な音を出しながら混沌とした雰囲気を演出し、しばらくするとテナーが加わり、ここからは一気にSam Riversの激しいフリージャズの世界になります。7分すぎくらいからフルートに持ち替え、ややヒートダウンしますが、五人の組んず解れつのインタープレイが続いていきます。
 フルートとギターのデュオの7曲目は、リズムは「オン」ですが、二人はかなりフリーなフレーズでやり取りを繰り広げます。ベースとのデュオとは違う世界を描いており、聴いていて飽きません。
 8曲目も全員参加ですが、前半のリズム陣による混沌の世界からベースが抜け出して8ビートのリズムパターンを提示し、そこにテナーが加わり、ここまでになかったリズミカルで「黒っぽい」演奏に移っていきます。こういう明快なビートでのSam Riversも魅力的です。
 終曲12曲目は再びテナー、ピアノ、ギターのトリオで、冒頭曲と同趣のSam Riversらしい美しいメロディを優しくしっとりと演奏してアルバムを閉じます。

 このように編成ごと、楽曲ごとに雰囲気はガラッと変わり、呆れるほど優しい演奏からフリーにグッと近づく激しい演奏まで多彩なのですが、私がいつもSam Riversを聴いて感じる少しとぼけた温かみが、どのような編成の楽曲でも、或いは彼が操るどの楽器からも響いてきます。
 円熟の境地Sam Riversの味わい深いアルバムです。

Saxophone Summit / Seraphic Light

Label: Telarc
Rec. Date: Oct. 2007
Personnel: David Liebman (ss, ts, fl), Ravi Coltrane (ts, ss), Joe Lovano (ts, alto-cl, double soprano saxophone, fl), Randy Brecker (tp) [5, 10], Phil Markowitz (p), Cecil McBee (b), Billy Hart (ds)
Saxophone Summit_200710_Seraphic 
1. Transitions [Phil Markowitz]
2. The Thirteenth Floor [Ravi Coltrane]
3. Reneda [Billy Hart]
4. All About You [Cecil McBee]
5. Message to Mike [Randy Brecker]
6. Alpha and Omega [David Liebman]
7. Our Daily Bread [Joe Lovano]
8. Cosmos [John Coltrane]
9. Seraphic Light [John Coltrane]
10. Expression [John Coltrane]

 我らがDavid Liebmanが参加するSaxophone Summitというユニットのアルバムです。このSaxophone Summitは、以下に示すように本作を含めて三枚のアルバムを発表しており、本作は二番目のアルバムになります。

 ①「Gathering of Spirits」2004年、Telarc
 ② 本作
 ③「Visitation」2011年、Artist Share

 Saxophone Summitの名前のとおり、サックスの名手(全員が「名手」かどうかはノーコメント)をフロントに置いたユニットで、第一作の①「Gatherting of Spirits」はDavid Liebman、Michael Brecker、Joe Lovanoの三人でしたが、②、③では2007年に亡くなったMichael Breckerの後任としてRavi Coltraneが参加しています。リズム陣は三作ともにPhil Markowitz、Cecil McBee、Billy Hartで、いずれもDavid Liebmanとは多くの共演がある三人が担当しています。
 本作の前後二枚のアルバムは、個人的にいくつかの「気に食わない」ところがあって100%入り込むことができなかったのですが、この「Seraphic Light」はそのような「傷」は見当たらずストレスなく楽しめる一枚です。
 CDに記載はありませんが、全曲を通じて左チャンネルRavi Coltrane、中央David Liebman、右Joe Lovanoの配置で、5曲目とラスト10曲目にはラッパのRandy Breckerが加わります。
 演奏される楽曲は1~7曲目がメンバーのオリジナル、後半の3曲はJohn Coltraneの後期のレパートリーを取り上げており、後に述べますが、これが本アルバムの最大の特徴、魅力になっています。

 David Liebmanは後回しにして、ほかの二人のサックス奏者について先に述べます。
 このブログで何回か取り上げてきたように、Ravi Coltraneは贔屓にしているサックス奏者ですが、ここでのプレイは、贔屓目を差し引いても、大先輩の二人に負けない高いクオリティの演奏を聴かせてくれます。私がいつも感じる「ザラっとした舌触りの音色」で、個性的で色気あるフレーズを吹く彼の存在感はなかなかのものです。
 もうひとりのJoe Lovanoですが、正直申し上げて私は彼をかなり苦手としています。どうも「辛気臭い」「色気がない」「キレが悪い」・・・苦手ミュージシャンに対しては悪口に事欠きませんが、これは完全に好み、相性の問題ですし、しかもこの苦手意識は克服できそうにありません。
 我らがDavid Liebmanは、参加メンバーが持ち寄ったオリジナルの1~7曲目までは他の二人を立てて(?)、ソプラノ(一部フルート)が中心のプレイとなっていますが、さすがに圧倒的な存在感を示してくれますし、アルバム後半の3曲では「待ってました!」のテナーをぶちかましてくれます。
 上でも述べましたように、このアルバムはJohn Coltraneの後期オリジナルが演奏されるラスト3曲になって、一気に温度=本気度が高まり、フロントもリズムもテンションの上がった演奏となり、風速が俄然強くなっていきます。
 8曲目"Cosmos"(「Live in Seattle」収録)のDavid Liebmanのブチ切れのテナーソロ、9曲目"Seraphic Light"(「Stellar Regions」収録)のRavi Coltraneがドラムのみをバックにした珍しくも熱いテナーソロ・・・このあたりが本アルバムの最大の聴きどころでしょう。そして終曲"Expression"(同名アルバム収録)ではRandy Breckerも加わり、四者が揃ってあのメロディを奏でて大団円という感じでアルバムを閉じます。

 この手の臨時編成ユニットのアルバムとしてはよくできた作品だと思いますし、後半に置かれたJohn Coltrane後期レパートリーでの熱演が素晴らしく、強く印象に残るアルバムになりました。

レギュラー・ビッグバンド 三題

 七回目の三題噺になりますが、「ビッグバンドは商売にならない」と言われて久しいこの時代に、レギュラー・バンドとして活動を続けている殊勝なビッグバンドのアルバムを取り上げます。

①Bob Mintzer Big Band / Latin from Manhattan
Label: Digital Music Products
Rec. Date: Jan. 1998
Personnel: Bob Mintzer (sax, arr), Bob Millikan (tp), Larry Lunetta (tp), Scott Wendholt (tp), Mike Mossman (tp), Larry Farrell (tb), Keith O'Quin (tb), Sam Bartis (tb), Dave Taylor (bass-tb), Bob Malach (sax), Lawrence Feldman (sax), Pete Yellin (sax), Roger Rosenberg (sax), Phil Markowitz (p), Jay Anderson (b), John Riley (ds), Louis Bauzo (per)
Mintzer Bob_199801_Latin Manhattan 
1. Oye Como Va  2. El Caborojeno  3. Acha  4. Ellis Island  5. Carla  6. New Rochelle  7. Chant  8. Sun Juan Shuffle  9. New Mambo  10. Mambone

 サックス奏者、作・編曲家、バンドリーダーのBob Mintzerは、1983年録音の日本制作盤「Papa Lips」以降、現時点最新の「All L.A. Band(2015、Fuzzy Music)」に至るまで、長年にわたりビッグバンドのレコーディングを続けています。
 Yellowjackesのメンバーでもあった(ある?)Bob Mintzerのビッグバンドは、このあとに取り上げる二つの「正統派」ビッグバンドとはだいぶテイストが異なり、特に初期のアルバムは80年代フュージョンの香りが色濃く漂うサウンドでした。
 本作「Latin from Manhattan」は、このビッグバンドのDigital Music Productsレーベルから発売されたアルバムの9作目にあたり、タイトルのとおり彼がたびたび取り上げる「ラテン」を前面に打ち出し、ビッグバンドによるラテン・サウンド(ただしあんまり「本物のラテン」っぽくありません)を理屈抜きで楽しめるアルバムに仕上げています。
 本作もそうなのですが、彼のビッグバンドのサウンドに私はそれほど深みを感じませんが、どのアルバムも一気に聴かせてしまう「勢い」は間違いなくあります。「勢い」という点では時代はグッと遡りますが、1950年代から60年代くらいのMarty Paichのアレンジに似ていなくもない・・・そんな風に思います。


②John Fedchock / New York Big Band
Label: Reservoir Music
Rec. Date: Sept. 1992
Personnel: John Fedchock (tb, arr), Tony Kadleck (tp, flh), Greg Gisbert (tp, flh), Barry Ries (tp, flh), Tim Hagans (tp, flh), Keith O'Quinn (tb), Clark Gayton (tb), George Flynn (tb), Mark Vinci (as), Jon Gordon (ss, as), Rich Perry (ts), Rick Margitza (ts), Scott Robinson (bs), Joel Weiskopf (p), Lynn Seaton (b), Dave Ratajckzak (ds), Jerry Gonzalez (per) [3.6.8.]
Fedchock John_199209_New York Big Band 
1. Limehouse Blues  2. The Grove City Groover  3. La Parguera  4. Ruby My Dear  5. Blues Du Jour  6. Caravan  7. Nefertiti  8. Louie's Cheese Party  9. Nightshades  10. My Foolish Heart  11. Flintstoned "Flintstones Theme"

 リーダーのJohn Fedchockは1957年生まれのトロンボーン奏者、作・編曲家、バンドリーダーで、1980年代にWoody Hermanのビッグバンドでアレンジャーとしての腕を磨いたようです。
 本作は彼が率いるNew York Big Bandの第一作で、このビッグバンドは現時点最新の「Like It is(2014、Mama Records)」まで5枚のアルバムを発表しています。
 New York Big Bandの名前のとおり、都会的で洗練され、これぞ正統派という感じのビッグバンドです。リーダーの手によるアレンジは折り目正しく実に丁寧に、そして90年代の感覚がちゃんと盛り込まれており、さらにリーダーのトロンボーンを筆頭にメンバーのソロも上記Bob Mintzer盤より一枚も二枚も上にいくクオリティです。
 逆に生真面目すぎるくらいのサウンドですが、これがJohn Fedchockアレンジの個性なのでしょう。Resevoirの見事な録音も特筆ものです。


③The Vanguard Jazz Orchestra / Monday Night at the Village Vanguard
Lebal: Planet Arts
Rec. Date: Feb. 2008
Personnel: Nick Marchione (tp), Frank Greene (tp), Terell Stafford (tp), Scott Wendholt (tp), John Mosca (tb), Luis Bonilla (tb), Jason Jackson (tb), Douglas Purviance (bass-tb), Dick Oatts (as, ss, fl, picc), Billy Drewes (as, ss, fl, cl), Rich Perry (ts, fl), Ralph Lalama (ts, cl, fl), Gary Smulyan (bs), Jim McNeely (p), Phil Palombi (b), John Riley (ds), Michael Weiss (p) [1.3.5.8.9.], John Clark (hrn) [6.]
Vangard Jazz Orchestra_200802_Monday Night 
1. Mean What You Say  2. Say It Softly  3. St. Louis Blues  4. Body and Soul  5. Mornin' Reverend  6. Las Cucarachas Entran  7. Willow Tree  8. Don't You Worry 'bout a Thing  9. Kids are Pretty People  10. The Waltz You Swang for Me  11. Little Rascal on a Rock

 The Vanguard Jazz Orchestraは、1960年代に結成されたThad Jones Mel Lewis Jazz Orchestraの後継バンドで、今回の三つのビッグバンドの中では活動歴は最も長く、サド・メル時代から始まった毎週月曜日の本拠地Village Vanguardでのライブは現在も続いているそうです・・・大したものです。
 本作は、それこそ何十年も継続してきた本拠地でのMonday Nightライブの模様がCD2枚にたっぷりと収録されています。
 大半の楽曲がThad Jones又はBob Brookmeyerのアレンジで(おそらくサド・メル時代のレパートリーなのでしょう)、上記New York Big Bandと同様に、王道を行くモダン・ビッグバンドのサウンドなのですが、息の合ったアンサンブルと各メンバーの熱いソロが強力なスウィング感を生み出し、若い頃よく聴いた60~70年代サド・メル・バンドのマインドと言うかパワーみたいなものを確かに感じさせてくれます。
プロフィール

sin-sky

Author:sin-sky
半世紀ジャズを聴いている新米高齢者♂です

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