Darrell Grant / Black Art
Label: Criss Cross
Rec. Date: Dec. 1993
Personnel: Wallace Roney (tp), Darrell Grant (p), Christian McBride (b), Brian Blade (ds)
1. Freedom Dance [Grant]
2. Tilmon Tones [Grant]
3. Blue in Green [Miles Davis]
4. Black Art [Grant]
5. Foresight [Grant]
6. Einbahnstrasse [Ron Carter]
7. What is This Thing Called Love [Cole Porter]
8. For Heaven's Sake [Donald Meyer, Elise Bretton, Sherman Edwards]
9. Binkley's Blues [Grant]
前回記事「The Wallace Roney Quintet」に引き続いてのWallace Roney絡みで、Darrell Grantというピアニストのリーダーアルバムを取り上げます。
ネット情報によるとDarrell Grantは1962年ピッツバーグ生まれで、既に8枚のリーダーアルバムを出しており、本作「Black Art」はその第二作に当たるようです。ちなみに私の手元では「Greg Osby / 3-D Lifestyles(1992年録音、Blue Note)」、「Greg Osby / Art Forum(1996年録音、Blue Note)」、「Don Braden / The Voice of the Saxophone(1997年録音、RCA Victor)」に彼の名前が見えますが、正直申し上げてこれらのアルバムでの彼のプレイはほとんど印象に残っていません。
本作「Black Art」は、前回記事でも述べましたように、私が非常に好みとしているところのWallace Roneyの1990年代のプレイが、しかもワンホーン・カルテット(ただし3.7曲目はお休み)という編成で楽しむことができる私にとっては嬉しいアルバムです。
また、カルテットを構成するメンバーは他にベースChristian McBride、ドラムBrian Bladeという当時のCriss Crossらしい売れっ子二人が参加しています。
本作が録音された1993年というと、Wallace Roneyのリーダーアルバムで言えば「Munchin'」、「Crunchin'」(いずれもMuseレーベル)と同年、併行して活動していたTony Williamsクインテットでは最後のアルバムとなった「Tokyo Live(Blue Note)」の翌年にあたり、くどいようですが、私にとってはこのあたりのWallaceは完全に「ど真ん中」です。
当時Wallaceは、自己のリーダーアルバムを毎年のようにリリースし、かたやTony Williamsのクインテットで活動していたわけですが、その当時としては比較的珍しい完全他流試合のアルバムということになります。
ジャケットを見る限り、リーダーのDarrell Grantの容貌はいかにも「おっかなそうなおっさん」という感じですが、ピアノのプレイは極めてオーソドックスで、それほど強い個性は感じられないものの、これだったら趣味の良いピアニストと言ってもよいのではないでしょうか。
Christian McBrideとBrian Bladeのサポートはさすがにクオリティが高く、オーソドックスな現代(と言うか当時の)ハードバップではありますが、アップテンポの冒頭曲がその典型で、サウンドはカチッとしていて、やや饒舌に、そして少々ハードな展開になります。前回記事の「The Wallace Roney Quintet」と違い、このカルテットのサウンド自体に、私はマイルスをそれほど感じません。
バンドのサウンドはマイルスのそれとは少々離れていますが、前回記事で引用したように「マイルスのように吹くことが俺の幸せ」と語るWallaceの、このアルバムでのプレイは実に好調です・・・思いっきり贔屓目ではありますが。
特にリーダーのオリジナルの2,4曲目のオープンのラッパソロ、5曲目のハーマン・ミュートのプレイ、さらには「Uptown Conversation(1969年録音、Embryo)」収録のRon Carter曲の6曲目でのプレイなどは、ファンならずともなかなか聴かせると感じるのではないでしょうか。
そして唯一スタンダードの8曲目"For Heaven's Sake"では、ラッパとピアノとのデュオでしっとりと演奏されます。客観的にみて優れたバラード演奏かどうかはさておくとしても、これはファンにとっては嬉しいトラックです。
特に目新しいことをやっている訳でもなく、いかにもCriss Crossらしいストレートな現代ハードバップですが、私にとっては間違いなく「全盛期」であった頃のWallace Roneyを、ワンホーン・カルテットという理想的なフォーマットで味わえる忘れがたいアルバムです。
Rec. Date: Dec. 1993
Personnel: Wallace Roney (tp), Darrell Grant (p), Christian McBride (b), Brian Blade (ds)
1. Freedom Dance [Grant]
2. Tilmon Tones [Grant]
3. Blue in Green [Miles Davis]
4. Black Art [Grant]
5. Foresight [Grant]
6. Einbahnstrasse [Ron Carter]
7. What is This Thing Called Love [Cole Porter]
8. For Heaven's Sake [Donald Meyer, Elise Bretton, Sherman Edwards]
9. Binkley's Blues [Grant]
前回記事「The Wallace Roney Quintet」に引き続いてのWallace Roney絡みで、Darrell Grantというピアニストのリーダーアルバムを取り上げます。
ネット情報によるとDarrell Grantは1962年ピッツバーグ生まれで、既に8枚のリーダーアルバムを出しており、本作「Black Art」はその第二作に当たるようです。ちなみに私の手元では「Greg Osby / 3-D Lifestyles(1992年録音、Blue Note)」、「Greg Osby / Art Forum(1996年録音、Blue Note)」、「Don Braden / The Voice of the Saxophone(1997年録音、RCA Victor)」に彼の名前が見えますが、正直申し上げてこれらのアルバムでの彼のプレイはほとんど印象に残っていません。
本作「Black Art」は、前回記事でも述べましたように、私が非常に好みとしているところのWallace Roneyの1990年代のプレイが、しかもワンホーン・カルテット(ただし3.7曲目はお休み)という編成で楽しむことができる私にとっては嬉しいアルバムです。
また、カルテットを構成するメンバーは他にベースChristian McBride、ドラムBrian Bladeという当時のCriss Crossらしい売れっ子二人が参加しています。
本作が録音された1993年というと、Wallace Roneyのリーダーアルバムで言えば「Munchin'」、「Crunchin'」(いずれもMuseレーベル)と同年、併行して活動していたTony Williamsクインテットでは最後のアルバムとなった「Tokyo Live(Blue Note)」の翌年にあたり、くどいようですが、私にとってはこのあたりのWallaceは完全に「ど真ん中」です。
当時Wallaceは、自己のリーダーアルバムを毎年のようにリリースし、かたやTony Williamsのクインテットで活動していたわけですが、その当時としては比較的珍しい完全他流試合のアルバムということになります。
ジャケットを見る限り、リーダーのDarrell Grantの容貌はいかにも「おっかなそうなおっさん」という感じですが、ピアノのプレイは極めてオーソドックスで、それほど強い個性は感じられないものの、これだったら趣味の良いピアニストと言ってもよいのではないでしょうか。
Christian McBrideとBrian Bladeのサポートはさすがにクオリティが高く、オーソドックスな現代(と言うか当時の)ハードバップではありますが、アップテンポの冒頭曲がその典型で、サウンドはカチッとしていて、やや饒舌に、そして少々ハードな展開になります。前回記事の「The Wallace Roney Quintet」と違い、このカルテットのサウンド自体に、私はマイルスをそれほど感じません。
バンドのサウンドはマイルスのそれとは少々離れていますが、前回記事で引用したように「マイルスのように吹くことが俺の幸せ」と語るWallaceの、このアルバムでのプレイは実に好調です・・・思いっきり贔屓目ではありますが。
特にリーダーのオリジナルの2,4曲目のオープンのラッパソロ、5曲目のハーマン・ミュートのプレイ、さらには「Uptown Conversation(1969年録音、Embryo)」収録のRon Carter曲の6曲目でのプレイなどは、ファンならずともなかなか聴かせると感じるのではないでしょうか。
そして唯一スタンダードの8曲目"For Heaven's Sake"では、ラッパとピアノとのデュオでしっとりと演奏されます。客観的にみて優れたバラード演奏かどうかはさておくとしても、これはファンにとっては嬉しいトラックです。
特に目新しいことをやっている訳でもなく、いかにもCriss Crossらしいストレートな現代ハードバップですが、私にとっては間違いなく「全盛期」であった頃のWallace Roneyを、ワンホーン・カルテットという理想的なフォーマットで味わえる忘れがたいアルバムです。