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Greg Osby / The Invisible Hand

Label: Blue Note
Rec. Date: Sept. 1999
Personnel: Greg Osby (as, cl), Gary Thomas (fl, alto-fl, ts) [2, 5, 7, 9], Andrew Hill (p) [except 2, 6, 7], Jim Hall (g) [1, 4, 5, 7], Scott Colley (b) [except 3, 10], Terri Lyne Carrington (ds) [except 3, 10]
Osby Greg_199909_The Invisible Hand 
1. Ashes [Hill]
2. Who Needs Forever [Quincy Jones, Howard Greenfield]
3. The Watcher [Osby]
4. Jitterbug Waltz [Fats Waller]
5. Sanctus [Hall]
6. Indiana [James Hanley, Ballard MacDonald]
7. Nature Boy [Eden Ahbez]
8. Tough Love [Hill]
9. With Son [Osby]
10. The Watcher 2 [Osby]

 前回の「Gary Thomas / Pariah's Pariah」と同様にGary ThomasとGreg Osbyの共演アルバムで、今回はOsbyの方のリーダーアルバムです。

 前回に引き続いて再度寄り道しますが、「Pariah」(1997年10月録音)以降のGreg Osbyのリーダーアルバムを録音年月順に追ってみます。

 ①「Banned in New York(1997年12月、Blue Note)」
 ②「Zero(1998年1月、Blue Note)」
 ③「Inner Circle(1999年4月、Blue Note)」
 ④ 本作(1999年9月)
 ⑤「Symbols of Light (A Solution)(2001年1月、Blue Note)」
 ⑥「St. Louis Shoes(2003年1月、Blue Note)」
 ⑦「Public(2004年1月、Blue Note)」
 ⑧「Channel Three(2005年2月、Blue Note)」
 ⑨「9 Levels(2008年4月、Inner Circle Music)」

 前回の記事で、1996~97年のGreg Osbyは彼のピークと言ってよい好調さを維持していたことを述べたところですが、今世紀に入って録音された上記⑤「Symbols of Light (A Solution)」あたりからどうも雲行きが怪しくなってきて、決して悪くはないのですが個人的には今ひとつ入り込めません。あくまで好みの問題ではありますが、彼のリーダーアルバムに限れば、私が全面的に支持できる現時点で「最後」のアルバムが本作ということになります・・・贔屓のミュージシャンには色々と注文をつけたくなるものです。

 これまで(上記③あたりまで)のGreg OsbyのアルバムではJason MoranやRodney Greenなどの彼と同世代のミュージシャンが常連でしたが、この「見えない手~The Invisible Hand」と題されたアルバムでは、Andrew HillとJim Hallというベテラン二人と、名手Scott Colleyの参加が目を引きます。
 Greg Osbyは過去にAndrew HillとJim Hallのリーダーアルバムにそれぞれ参加していますが、Andrew HillとJim Hallの共演というのは、ネットに公開されていたディスコグラフィーによりますと、どうやら本作が唯一のようです。二人のポジションやキャリアを考えれば当然のような気もしますが、Greg Osbyが尊敬する大先輩二人の最初にして唯一の共演を取り持った・・・そういったところでしょうか。

 この「The Invisible Hand」の全体を包む雰囲気は「静寂な空気」で、ほとんどバラード、スローテンポの楽曲が演奏され、テンポが上がってビートが前面に出てくるのは6曲目"Indiana"くらいです。
 また「Pariah's Pariah」ではGary ThomasとGreg Osbyががっぷりと組んで、攻撃的でパワフルなソロを応酬していましたが、本作の主役はあくまでもリーダーのGreg Osbyで、相方(?)のGary Thomasは曲によってテーマ部のアンサンブルに加わる以外は、控え目なソロをとる程度の役割です。
 控え目と言えばベースのScott ColleyとドラムのTerri Lyne Carringtonも同様で、リーダーの意図するこのアルバムのサウンドを静かに支えるといったプレイに徹しています。

 上にも述べましたように、ここでのGreg Osbyは(少なくとも私にとっては)このアルバム録音前からのピークを維持しているように聴こえます。静寂のリズムに囲まれながら、彼本来の深い音色で味わいのあるアルトのプレイを聴かせ、全曲ともにクオリティの高い吹奏と言ってよい出来です・・くどいようですが私はそう思います。
 控え目な役回りのGary Thomasではありますが、7曲目"Nature Boy"でのリーダーのアルトと彼のフルートの絡みの妙はこのアルバムの特徴のひとつとなっていると思いますし、Greg Osbyのオリジナルの9曲目では、短いながらも印象的なテナーソロを聴かせます。

 ベテラン二人は全ての楽曲に参加しませんが、彼らが登場するとさすがの存在感を示します。正直申し上げて私はJim Hallというギタリストが昔からどうも苦手なのですが、このアルバムで「存在感を示している」ということに関しては否定するものでは全くありません。Andrew Hillのオリジナルの1曲目とスタンダードの7曲目"Nature Boy"でのギターソロは、紛れもなく他のギタリストでは表現できない彼の世界でしょう。
 一方のAndrew Hillですが、参加するどの楽曲でも数少ない音で忽ち自分の世界を描いてしまう・・・Jim Hallとの対比で少し褒めすぎかもしれませんが、孤高のピアニストとしての面目躍如の存在感は圧倒的です。Greg Osbyオリジナルの3、10曲目は、Greg Osbyが大先輩のAndrew Hillを深く理解していることがよくわかる味わいのあるデュオの演奏です。またFats Waller作の4曲目"Jitterbug Waltz"も、オリジナルの雰囲気を完全にGregとAndrewの作法で料理しておりなかなか聴かせます。

 Greg Osbyにとっては異色のアルバムですが、本作が録音された数年前からの好調を維持する彼のアルトはグッと深化していますし、Andrew HillもJim Hallもさすがの存在感を示しており、ベテラン二人を迎えたバラード集というGreg Osbyの意図・戦略が見事に成功していると思います。

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半世紀ジャズを聴いている新米高齢者♂です

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