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三谷幸喜 ~ オンリー・ミー - 私だけを

  • 2007/07/31(火) 00:00:02

 特に三谷さんのファンという訳でもなく、知人に薦められるままに、さほど期待もせずに読んだのですが、非常に面白かったです。身近な話題で、短く、軽い気持ちで読める文章は、ブログを読んでいるかのような感覚でした。照れ屋で小心者、締め切りを守れない劇作家の憎めないキャラクターがよく伝わってきました。

 特に第3章「日録」、
 午後9時。(中略)原稿20枚書くには少なくとも15時間は必要だ。(中略)午後6時に新宿ということは、5時には家を出なければならない。残された時間は約20時間。ここでの選択肢は三つだ。

  • 今から書き始めて、明日の昼までぶっ通しで書いて、それから5時間寝る。
  • 今から書き始めて、深夜2時まで頑張って、それから5時間寝て、朝7時からぶっ通しで書く。
  • 今からまず5時間寝て、2時に起き、それからぶっ通しで書く。

 躊躇なくcを選ぶことにした。理由は簡単である。眠かったのだ。(中略)
 午前9時。小鳥のさえずりと共に目覚める。これは一体どうしたことだ。(後略)
似たようなことは多くの人が体験しているのではないでしょうか。この章に限らず、原稿がなかなか進まないエピソードに、えも言われぬ共感を覚えました。開演ぎりぎりまで泥酔し、遅刻してステージに登り、曲順を覚えていないが即興演奏が大好評なギタリスト、のような爽快さでした。
 また、第2章『いかすぜ! ナイスガイ』の「馬鹿としか言いようのない話」や「追い詰められて」等の馬鹿馬鹿しさもナイスでした。
 第1章では、「政局」の中で「実は今一番注目しているのがこの小泉氏なのである。とにかくまるで偉そうに見えないのが素晴らしい。ゆくゆくは政権でも取って、総理のイメージも一新してほしいものである」と、細川政権時代に書いているところに先見性というか、洞察力の鋭さを感じました。

 気楽に、どこからでも読める肩の凝らないエッセイ集、好印象でした。