「52ヘルツのクジラたち」 綺麗なものだけ見ていたい人って・・・。
祖母が住んでいた空き家に引っ越し、
田舎ならではの距離のつめ方や、
噂話に辟易としている様子の主人公貴瑚。
物語は大分県の小さな海辺の町から始まるのですが、
一人の虐待されていた少年と出会い、
貴瑚の生い立ちがだんだんとわかっていく。
幼い頃は毒親に虐待され、
義父に介護が必要になったら、
ヤングケアラーとして、
縛りつけられている主人公貴瑚。
この毒母がズルいなと思うのが、
ずっと貴瑚が欲しかった優しい言葉と、
労わりの言葉でがんじがらめにして、
搾取しているところだ。
高校の友人だった美晴と再会した時、
貴瑚は母親の酷い言葉で、
もう死んでしまってもいいと、
心は死んだも同然の状態になっていた。
不思議だったのが友人の美晴で、
いくらどんな状況で音信不通になっていたのかわかっても、
ここまで介入してくれるものなのか?というところ。
そして美晴の会社の同僚のアンさん。
なぜ仲が良い友人でもない、
ただの同僚の友人のことに親身になってくれるのか?
なぜ美晴とアンさんには、
誰にも届かない52ヘルツの声を聴くことが出来たのか、
そういうことかとグイグイ物語に引き込まれました。
52ヘルツの声が聴こえない人。
いや聴こうとしない人というか、
綺麗なものだけ見ていたい人って、
自分の視界からいなくなればどうでもいいって、
見て見ぬふりをして耳も塞いでいるんだろう。
虐待にヤングケアラー難しい問題だよね。
「助けて」と言えない子供の気持ちもあるし。
重いテーマではあるものの、
ラストは希望が見える展開だったので、
読み終えてホッとした。
スポンサーリンク