人事異動によって仕事のやりがいを見失ってしまった部下にしたアドバイス。
人事異動によって仕事のやりがいを見失ってしまった部下にしたアドバイス。
「最近、何のために仕事をやっているかわからない」
それは、僕の部下の一人であるBさんからの相談でした。
彼女は、これまで現場の第1線で販売業務を行っていたのですが、半年前に現場担当から後方の事務業務を担当するようになったばかりでした。
現場担当時代に、活き活きと仕事をしていた彼女の姿はいまや影を潜め、ややうつむき加減で仕事をしている様子がありました。
「人には向き不向きがある」
そのようにバッサリ割り切った考え方で、元の担当に戻すという決断は簡単です。
しかし、組織で働いている以上、少しやってみて違うと思ったらやめる。好きな仕事だけをやり続ける。ということだけでは、全体のバランスが取れない場合があります。
本人にとって嫌なことを強制的にやらせるということではなく、それぞれに期待されている役割を正しく認識してもらうということが大切なのだと思います。
仕事の分断
彼女と話をしていて感じた仕事に対するモチベーション低下の原因は、「仕事の分断」ということが考えられると感じました。
「仕事の分断」とはどのようなことか?というと、本来すべて「線」としてつながっているはずの仕事が、目の前の「点」でしか仕事しか見えなくなってしまうということです。
この「仕事の分断」には、いくつかの有名な例え話があります。
椅子職人の話
椅子工場に勤める職人たちは、元々一人の職人が椅子の足から背もたれまですべてを作っていました。その時は、自分たちが作った椅子に誇りを持ち、より良いものを作ろうと切磋琢磨していました。
しかし、その工場にも大量生産とオートメーション化の波が訪れ、次第に職人の作業は分業化されていくようになりました。
ある職人は足だけを作り、ある職人は背もたれだけを作るようになります。
そんな時、椅子が全く売れなくなってしまうという状態が訪れました。
しかし、職人たちは、「それはきっと他の部分を作っている誰かが手を抜いていることが原因」だと決めつけ、自分事で考えることやめてしまったのです。
組織化による仕事の分断によって、働き手の目的やモチベーションは大きく変化するという示唆を与えてくれます。
レンガ職人の話
あるところに3人のレンガ職人がいました。
「あなたは何の仕事をしているんですか?」と聞くと
1人は、「見ての通りレンガを積んでいるんだ」と答えました。
もう一人は、「レンガで壁を作って家族を養っているんだ。」と答えました。
最後の一人は。「偉大な聖堂をつくっているんだ。」と答えました。
全く同じ仕事をしているレンガ職人でも、目的の持ち方によって仕事に対するモチベーションは大きく異なるという示唆を与えてくれる話です。
Bさんに置き換えて考えてみる
では、Bさんの場合はどうでしょうか。
彼女は販売を担当していた時代に、お客さんからの笑顔や感謝を最大のモチベーションにしていましたが、今の担当においては、それを直接見ることや感じることができません。
ですが、それはあくまでBさん自身が直接経験していないだけで、今も同じように現場の誰かがお客さんと同じような経験をしています。
そして、その経験は、Bさんが今担っている事務的な業務があってこそ、成り立っているとも言えます。
自分の仕事がどのような形で最終的な顧客満足につながっているのか?
そこを再認識することで、仕事の見え方は大きく変わってくるはずです。
まとめ
Bさんの訴えは、組織の配置と役割における難しさを痛感した出来事でした。
しかし、どんな仕事でも最終的なゴールは「顧客のため」という一言に尽きます。
自分の仕事を分断された1区切りの仕事と捉えず、つながりとして認識することは、簡単なようで非常に難しいことです。
だからこそ、自分の仕事はどのような形で、「意味を持たせることができるのか?」ということを僕自身も忘れてはいけないな。と思います。