責任感が強すぎて引継ぎができない若手部下の心理について考えた。
責任感が強すぎて引継ぎができない若手部下の心理について考えた。
責任感の塊。
僕の部署に異動してきたばかりの若手の女性部下であるAさんは、そんな言葉がぴったりです。
指示を受けたことに対しては、残業も厭わず熱心に取り組むまじめなタイプです。
しかし、気になっていることもありました。
それは、責任感が強すぎるあまり前の部署の仕事にもだいぶ入り込んでいる。ということでした。
現在の所属と2つの部署を掛け持ちするような働き方になってしまい、本人にもだいぶ負荷がかかっているように思えました。
精神をすり減らしてしまい、どちらの仕事も中途半端になってしまう状態は、非常にまずいと思い、Aさんと時間を作り、彼女の心理とその対応策について話したことをまとめたいと思います。
引継ぎができない心理はどこからくるのか?
自分の仕事への愛着
Aさんが今抱えている仕事について細かく聞いていくと、元の部署で彼女がリーダー的な役割をしていたプロジェクトの仕事がかなり負担になっていることがわかりました。
しかも、そのプロジェクトは長期的なもので、数か月後にやり終えたらそれで終わりという種類のものではありませんでした。
一方、彼女としてはその仕事にとても愛着があり、部署を離れても関わり続けたいという強い意志を持っていました。
自分の仕事への不安
彼女がプロジェクトに関わり続けたいと思うもう一つの理由は、自分にしかわからないことが多いということです。
外部の協力者との折衝や、社内調整の経緯などは、引き継ぐにも時間がかかるし、書面や口頭で伝わる内容ではないといいます。
そして、そのような部分で後任の担当者に任せっきりにして、何かミスや問題が起こってしまわないかと、とても不安な気持ちを抱えているということもわかりました。
認められたいという気持ち
若手の彼女にとって、そのプロジェクトは入社してから初めて自分が責任者という立場を与えられて任された仕事だそうです。
だからこそ、やりきることで自分に自信をつけたいし、任せてくれた元上司にも恩返しをしたい。そんな気持ちがあることを赤裸々に話してくれました。
どう働きかけるべきか?
現状の整理をする。
Aさんがリーダーを務めるプロジェクトに対する思いに対しては理解を示した上で、現状のAさんのやるべきこととそのタイムスケジュールについて整理することを提案しました。
話をしながら出勤から退社までの時間を整理していくと、やはりプロジェクト関連の仕事が入ることで、現在の業務の時間が圧迫されていることがわかりました。
やるべきことは残業をしてなんとかこなしているものの、現在の部署で覚えなければいけないことを考えると、その時間は十分ではありません。
現状の仕事バランスで今後も進んでしまうと、体や心にもよくないし、なにより現状の仕事がつまらないものになってしまう。
そんな話もしました。
引き継ぐ相手を信頼してもらう。
かといって、Aさんが急にプロジェクトから離脱する必要は全くないと、僕は思っています。
ただその中で必要なのは、後任を信頼してあげることです。
たった1回の失敗ですべてが台無しになってしまうことはありません。
むしろ、少しくらいつまずくことで後任の担当者が新たに学んでいくことも多いはずです。
その意味では、思い切って任せてしまうことで、Aさんの負担も少なくなるし、これまでなかったアイデアが生まれたりすることもあるかもしれません。
Aさんが入るべきは今後の仕組みづくりだと思います。
組織におけるプロジェクトというのは、大きな組織ほど担当者は目まぐるしく変わります。
Aさんが異動になったように後任の担当者がいつ変わるかもわかりません。
そうした場合、その都度Aさんが引継ぎをしていては参ってしまいます。
そうならないように、誰が担当になってもプロジェクトが回るような仕組みの部分だけAさんは月1回程度の進捗確認と仕組みの提案をするくらいの参加の仕方で良いのでは?という話をしました。
責任感の強い彼女はまだ十分納得がいっていない様子でしたが、
「やってみます。」という言葉を残して話は終わりました。
まとめ
その後、Aさんは以前よりはプロジェクトと距離を置き、本来の仕事も時間がとれるようになってきました。
この経験から感じたことは、「いかに本人がやりがいを持てる仕事を与えられるか?」また、「やりがいを見つけられる環境をつくれるか?」ということの大切さです。
その意味で、Aさんにプロジェクトを任命した元部署の上司はすごいなと思います。
今後のAさんの活躍の為にも、新しいやりがいを見出してあげること、そして取組みを認めてあげることが何より重要だと思っています。