「衣かたしき今宵もや」の持つ意味
2024年12月23日(月) 溝の口「湖月会」(第187回)
187回の講読を重ねて来た溝の口の「湖月会」ですが、
この夏、定期的に出席可能な方が7名となってしまった
ところで、同じ箇所を講読している第2金曜クラスとの
統合をご提案し、来年1月から実施の運びとなりました。
もともと、「湖月会」は第2金曜日クラスの人数が増えた
ために分けたクラスですので、ここで最初の形に戻る
ことになったのですが、やはり長年独立したクラスとして
やってきただけに、しみじみとしたものを感じております。
「湖月会」として記事を書くのも今回が最後です。
匂宮と浮舟が結ばれたのは、薫27歳の正月中旬過ぎ。
薫が宇治を訪れたのが2月の初旬。そして2月10日頃に
宮中で詩宴が催され、匂宮も薫も参加しました。
折から雪が急に降り乱れ、風も強くなったので、管弦の
遊びは中止となり、匂宮のお控え所に、皆が集まって
おりました。
匂宮は横になっておられ、人に用を言いつける為、端近
に出て来た薫は、このような時も身体から芳香を放って
います。そんな薫の口ずさんだのが「衣かたしき今宵もや」
でした。
これはき引き歌で、もとの古歌は、「さむしろに衣かたしき
今宵もや我を待つらむ宇治の橋姫」(筵の上に衣の片袖を
敷いて一人寂しく寝ながら、今夜も宇治の橋姫は私を待っ
ているのだろうか)という『古今集』(恋四)の読人しらずの
歌です。
「言しもこそあれ」(よりによってこんな歌を口にするとは)と、
寝たふりをしながら耳にした匂宮の心は騒ぎます。こんな
思いを浮舟に対して馳せているのは自分だけの積りだった
のに、薫も同じ思いだったと知ると、匂宮は居ても立っても
いられない気持ちに駆られます。
匂宮の心情の根幹にあるのは、薫に対するコンプレックス
です。浮舟にこのような愛情を抱いている薫を差し置いて、
浮舟が「わが方にまさる思ひは、いかでつくべきぞ」(私に
どうして薫に対する以上の愛を抱いてくれることがあろうか、
いやあるまい)と、匂宮は残念で堪らないのでした。本当の
ところは、浮舟が今心惹かれているのは、薫ではなく匂宮
なのですが、そこまで匂宮が知る由もありません。
そうなると、匂宮は薫と異なり、無茶苦茶な手段も厭わず、
実行に移してしまいます。そこからはオンラインクラスで
読んだ時に取り上げますが、この「匂宮の心の内に潜む
薫への劣等感」につきましては、12/4の記事をご参照頂け
れば、と思います(⇒こちらから)。
187回の講読を重ねて来た溝の口の「湖月会」ですが、
この夏、定期的に出席可能な方が7名となってしまった
ところで、同じ箇所を講読している第2金曜クラスとの
統合をご提案し、来年1月から実施の運びとなりました。
もともと、「湖月会」は第2金曜日クラスの人数が増えた
ために分けたクラスですので、ここで最初の形に戻る
ことになったのですが、やはり長年独立したクラスとして
やってきただけに、しみじみとしたものを感じております。
「湖月会」として記事を書くのも今回が最後です。
匂宮と浮舟が結ばれたのは、薫27歳の正月中旬過ぎ。
薫が宇治を訪れたのが2月の初旬。そして2月10日頃に
宮中で詩宴が催され、匂宮も薫も参加しました。
折から雪が急に降り乱れ、風も強くなったので、管弦の
遊びは中止となり、匂宮のお控え所に、皆が集まって
おりました。
匂宮は横になっておられ、人に用を言いつける為、端近
に出て来た薫は、このような時も身体から芳香を放って
います。そんな薫の口ずさんだのが「衣かたしき今宵もや」
でした。
これはき引き歌で、もとの古歌は、「さむしろに衣かたしき
今宵もや我を待つらむ宇治の橋姫」(筵の上に衣の片袖を
敷いて一人寂しく寝ながら、今夜も宇治の橋姫は私を待っ
ているのだろうか)という『古今集』(恋四)の読人しらずの
歌です。
「言しもこそあれ」(よりによってこんな歌を口にするとは)と、
寝たふりをしながら耳にした匂宮の心は騒ぎます。こんな
思いを浮舟に対して馳せているのは自分だけの積りだった
のに、薫も同じ思いだったと知ると、匂宮は居ても立っても
いられない気持ちに駆られます。
匂宮の心情の根幹にあるのは、薫に対するコンプレックス
です。浮舟にこのような愛情を抱いている薫を差し置いて、
浮舟が「わが方にまさる思ひは、いかでつくべきぞ」(私に
どうして薫に対する以上の愛を抱いてくれることがあろうか、
いやあるまい)と、匂宮は残念で堪らないのでした。本当の
ところは、浮舟が今心惹かれているのは、薫ではなく匂宮
なのですが、そこまで匂宮が知る由もありません。
そうなると、匂宮は薫と異なり、無茶苦茶な手段も厭わず、
実行に移してしまいます。そこからはオンラインクラスで
読んだ時に取り上げますが、この「匂宮の心の内に潜む
薫への劣等感」につきましては、12/4の記事をご参照頂け
れば、と思います(⇒こちらから)。
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No title
鍵コメさま
コメントを戴き、有難うございます。
三島の「桜家」でうなぎを召し上がっていらしたとのこと。姉にも報告しておきますね。
熱海は父が晩年を過ごした地で、その頃はよく行っておりましたが、近年はとんとご無沙汰です。一時は閑散としておりましたが、観光地としてすっかり復活したようですね。
こちらこそお忙しい中をいつもご訪問頂き、有難うございました。
また来年もよろしくお願いいたします。
コメントを戴き、有難うございます。
三島の「桜家」でうなぎを召し上がっていらしたとのこと。姉にも報告しておきますね。
熱海は父が晩年を過ごした地で、その頃はよく行っておりましたが、近年はとんとご無沙汰です。一時は閑散としておりましたが、観光地としてすっかり復活したようですね。
こちらこそお忙しい中をいつもご訪問頂き、有難うございました。
また来年もよろしくお願いいたします。
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