予言実現への第一歩
2025年1月23日(木) オンライン「紫の会・木曜クラス」(第54回・通算101回・№2)
大寒に入った月曜日から、ずっと暖かな春のような日が
続いておりますが、まさかこのまま春になってしまうことは
ないでしょうね。
「紫の会」は第18帖「松風」の3回目。今日は3年ぶりに源氏
が明石の上と再会した場面からのご紹介となります。
上京して、大井の邸に住むようになった明石の上を、源氏
は紫の上の手前、すぐに訪問できずにおりましたが、漸く
口実を設けて、お出掛けになりました。
源氏が明石から京へと戻ってきたのが、28歳の秋。その時、
明石の上は源氏の子を身ごもっていました。翌年の3月に
姫君が誕生。それから2年半近くが経ち、源氏は数え年で
3歳となっている娘と初めて対面したのです。
源氏は、その姫君に対して、「かくこそは、すぐれたる人の
山口はしるかりけれ」(こんなふうに、美人の徴候は今から
はっきりとわかるものなのだ)と、あどけない表情で微笑む
可愛らしさに満足しています。
入道は自らの瑞夢を信じて、ひたすら突き進んで来たのです
が、源氏もまた自らが受けた宿曜の予言を、この幼児の容貌
の中に見て取って、確信したのでありましょう。「いずれは后の
位に就く娘」、そう思うと、ここから入内に向けての準備(姫君
を身分の低い母親から引き取って、二条院で紫の上に養女と
して育てさせる)を真剣に考え始めたとしても、納得できますね。
この後、源氏は明石の上の母である尼君とも語り合い、歌を
詠み交わします。全文訳ではそこまで通して書きましたので、
ご参照いただければ、と存じます(⇒こちらから)。
大寒に入った月曜日から、ずっと暖かな春のような日が
続いておりますが、まさかこのまま春になってしまうことは
ないでしょうね。
「紫の会」は第18帖「松風」の3回目。今日は3年ぶりに源氏
が明石の上と再会した場面からのご紹介となります。
上京して、大井の邸に住むようになった明石の上を、源氏
は紫の上の手前、すぐに訪問できずにおりましたが、漸く
口実を設けて、お出掛けになりました。
源氏が明石から京へと戻ってきたのが、28歳の秋。その時、
明石の上は源氏の子を身ごもっていました。翌年の3月に
姫君が誕生。それから2年半近くが経ち、源氏は数え年で
3歳となっている娘と初めて対面したのです。
源氏は、その姫君に対して、「かくこそは、すぐれたる人の
山口はしるかりけれ」(こんなふうに、美人の徴候は今から
はっきりとわかるものなのだ)と、あどけない表情で微笑む
可愛らしさに満足しています。
入道は自らの瑞夢を信じて、ひたすら突き進んで来たのです
が、源氏もまた自らが受けた宿曜の予言を、この幼児の容貌
の中に見て取って、確信したのでありましょう。「いずれは后の
位に就く娘」、そう思うと、ここから入内に向けての準備(姫君
を身分の低い母親から引き取って、二条院で紫の上に養女と
して育てさせる)を真剣に考え始めたとしても、納得できますね。
この後、源氏は明石の上の母である尼君とも語り合い、歌を
詠み交わします。全文訳ではそこまで通して書きましたので、
ご参照いただければ、と存じます(⇒こちらから)。
紫の上の嫉妬
2025年1月20日(月) オンライン「紫の会・月曜クラス」(第54回・通算101回・№2)
昨日までは最高気温が10℃に届かず、寒い毎日でしたが、
「大寒」の今日は11℃まで気温も上がり、風もなく穏やかな
一日となりました。今週は、このような3月上旬の暖かさが
続くそうです。
ちょっと余談になりますが、一昨日、昨日と「大学入試共通
テスト」が行われ、昨日の朝刊に「国語」の試験問題が掲載
されていました。「古文」のところだけを見たのですが、もう
字が小さくて小さくて、眼鏡をかけても読みづらい!
まさか「大河ドラマ」の影響を受けた訳ではないでしょうが、
『源氏物語』が出題されていましたね。先ずはどんな問題
が出ているのだろうかと、そちらをちらり。問1では、語句の
意味が問われていました。「いはけなし」、「なかなか」、
「ののしる」と、これは本文を読まなくても答えられますね。
で、なぜこんな横道話を書いたかというと、本日の講読箇所
に「なかなか」が3回も出て来たからなのです。「却って」と訳
しますが、極めて頻出度の高い古語が問われているなぁ、と
思いました。次は敬語問題でしたが、これも基本的なことを
理解していればわかりますし、「共通テスト」は、やはり基礎
知識を身につけておくべきかな、と感じました(古文の設問を
見ただけですが💦)。
すみません、本題に入ります。
今月の「紫の会」は、第18帖「松風」の3回目で、父・入道を
一人明石に残し、大井の邸に着いた明石の上ですが、なまじ
同じ京に住むようになって、源氏の訪れがないのは、却って
離れていた時よりも辛く(はい、ここに「なかなか物思い続け
られて」と、出てまいりました)、源氏が明石を去る時に形見
に残していった琴(きん)の琴を掻き鳴らし、母・尼君と歌を
詠み交わすのでした。
一方の源氏もまた、明石の上が上京した今、「なかなか静心
なくおぼさるれば」(却って落ち着かない気持ちがなさるので)
←(また「なかなか」です)、大井に出かけようとしますが、
紫の上の手前、口実が必要です。例によって、源氏は紫の上
が、他所から明石の上が大井に住むようになったことを耳に
なさるよりは、自分の口から告げるほうがよいと思い、「桂の
院(源氏の別荘)への用事があり、その辺り近くで待っている
人もいるようだし、嵯峨野の御堂のこともあるので、二、三日
はかかるでしょう」と言ったのです。
紫の上は、桂の院を急に造営なさったのは、そこに明石の上
をお迎えになるためだったのか、と思います。これは誤解です
が、いずれにせよ、紫の上にとっては、面白くない話に違い
ありません。
源氏に向かって、「斧の柄さへあらためたまはむほどや、待ち
遠に」(斧の柄までも朽ち果てて、新しくなさる程でしょうか、
待ち遠しいことですわ)、と不快な様子で嫌味を言い、やんわり
と嫉妬している気持ちを見せます。紫の上のご機嫌を取るのに、
源氏も時間がかかってしまうのでした。
この「斧の柄が朽ちる」というのも、中国の故事によるものです
が、『枕草子』には、従者たちでも、主人が出先で長居をして
待たされている時に、「斧の柄も朽ちぬなめり」(斧の柄も腐っ
てしまいそうだ)と言っている、と書かれていますから、当時は
高貴な方のみならず、下々の者にまで知られていることわざ的
感覚の言葉だったようですね。
山に木を伐りに行った晋の王質が仙境に迷い込み、童子たち
が碁を打つのを見ているうちに、斧の柄が朽ちてしまうほど、
長い年月が経っていた、という浦島伝説に似た話です。
でも紫の上には、このような単純な嫉妬だけでは済まされない
ことが待ち受けています。紫の上と明石の上の関係を追って
読むだけでも、物語の奥深さを十分に味わえる気がします。
本日取り上げた箇所は、先に書きました「全文訳・松風(6)」
で通してお読みいただければ、と思います(⇒こちらから)。
昨日までは最高気温が10℃に届かず、寒い毎日でしたが、
「大寒」の今日は11℃まで気温も上がり、風もなく穏やかな
一日となりました。今週は、このような3月上旬の暖かさが
続くそうです。
ちょっと余談になりますが、一昨日、昨日と「大学入試共通
テスト」が行われ、昨日の朝刊に「国語」の試験問題が掲載
されていました。「古文」のところだけを見たのですが、もう
字が小さくて小さくて、眼鏡をかけても読みづらい!
まさか「大河ドラマ」の影響を受けた訳ではないでしょうが、
『源氏物語』が出題されていましたね。先ずはどんな問題
が出ているのだろうかと、そちらをちらり。問1では、語句の
意味が問われていました。「いはけなし」、「なかなか」、
「ののしる」と、これは本文を読まなくても答えられますね。
で、なぜこんな横道話を書いたかというと、本日の講読箇所
に「なかなか」が3回も出て来たからなのです。「却って」と訳
しますが、極めて頻出度の高い古語が問われているなぁ、と
思いました。次は敬語問題でしたが、これも基本的なことを
理解していればわかりますし、「共通テスト」は、やはり基礎
知識を身につけておくべきかな、と感じました(古文の設問を
見ただけですが💦)。
すみません、本題に入ります。
今月の「紫の会」は、第18帖「松風」の3回目で、父・入道を
一人明石に残し、大井の邸に着いた明石の上ですが、なまじ
同じ京に住むようになって、源氏の訪れがないのは、却って
離れていた時よりも辛く(はい、ここに「なかなか物思い続け
られて」と、出てまいりました)、源氏が明石を去る時に形見
に残していった琴(きん)の琴を掻き鳴らし、母・尼君と歌を
詠み交わすのでした。
一方の源氏もまた、明石の上が上京した今、「なかなか静心
なくおぼさるれば」(却って落ち着かない気持ちがなさるので)
←(また「なかなか」です)、大井に出かけようとしますが、
紫の上の手前、口実が必要です。例によって、源氏は紫の上
が、他所から明石の上が大井に住むようになったことを耳に
なさるよりは、自分の口から告げるほうがよいと思い、「桂の
院(源氏の別荘)への用事があり、その辺り近くで待っている
人もいるようだし、嵯峨野の御堂のこともあるので、二、三日
はかかるでしょう」と言ったのです。
紫の上は、桂の院を急に造営なさったのは、そこに明石の上
をお迎えになるためだったのか、と思います。これは誤解です
が、いずれにせよ、紫の上にとっては、面白くない話に違い
ありません。
源氏に向かって、「斧の柄さへあらためたまはむほどや、待ち
遠に」(斧の柄までも朽ち果てて、新しくなさる程でしょうか、
待ち遠しいことですわ)、と不快な様子で嫌味を言い、やんわり
と嫉妬している気持ちを見せます。紫の上のご機嫌を取るのに、
源氏も時間がかかってしまうのでした。
この「斧の柄が朽ちる」というのも、中国の故事によるものです
が、『枕草子』には、従者たちでも、主人が出先で長居をして
待たされている時に、「斧の柄も朽ちぬなめり」(斧の柄も腐っ
てしまいそうだ)と言っている、と書かれていますから、当時は
高貴な方のみならず、下々の者にまで知られていることわざ的
感覚の言葉だったようですね。
山に木を伐りに行った晋の王質が仙境に迷い込み、童子たち
が碁を打つのを見ているうちに、斧の柄が朽ちてしまうほど、
長い年月が経っていた、という浦島伝説に似た話です。
でも紫の上には、このような単純な嫉妬だけでは済まされない
ことが待ち受けています。紫の上と明石の上の関係を追って
読むだけでも、物語の奥深さを十分に味わえる気がします。
本日取り上げた箇所は、先に書きました「全文訳・松風(6)」
で通してお読みいただければ、と思います(⇒こちらから)。
入道の別れの言葉から見えてくるもの
2025年1月13日(月) 溝の口「紫の会」(第86回・№2)
溝の口の「紫の会」は第2月曜日なので、毎年1月は「成人の日」
です。澄み渡った青空の下、溝の口駅周辺には、色とりどりの
振り袖姿の新成人が、今年は誰一人としてマスクの着用もなく、
楽しそうに話をしながら歩いていました。
2021年は休講中。2022年、2023年はマスクをつけての晴れ着
姿だったので、コロナに対する意識は完全に変わりましたね。
今はテレビのニュースでも、インフルエンザの大流行のほうが
話題になっていますものね。
「紫の会」は、第18帖「松風」の中程を講読中です。
今回は、一人明石に残ることになった入道が娘の明石の上に、
長々と別れの言葉を告げるところから読み始めました。
入道は先ず、自分の半生を振り返って語ります。
大臣家の息子として生まれながら、自ら近衛中将という官職を
投げ打って、「播磨の守」という受領階級になり下がったのも、
娘の明石の上を思い通りに育てたいためであったのだが、思う
ように事は運ばず、美しく成長した明石の上を、こんな田舎に
埋もれさせてしまうのか、と嘆いていたところに、住吉明神の
お導きで、源氏の君とのご縁を得て、姫君まで誕生したので、
自分はもう思い残すこともなくなった、と、これ迄の明石の物語
を要約して、読者にも確認させるような会話内容となっています。
更に「君達は世を照らしたまふべき光しるければ」(あなた方は
現世を照らしなさるご立派な運勢がはっきりとしているのです
から)と語るに至っては、まるで源氏が「三人の子どものうちの
一人は后になる」と予言されているのを知っているかのようです。
もちろん、入道が知る由もなく、なぜそうした予見めいたことが
可能であったかが明かされるのは、10年後、34帖「若菜上」で、
姫君が東宮の第1皇子を出産した際に、入道から明石の上の
許に届けられた遺書によってなのです。
ここに至るまでのまとめをし、この先の明石一族の繁栄を予感
させている場面かと思います。長編物語として紡いでいく心憎い
までの作者のストーリーテラーとしての資質を見せつけられて
いる気がいたしますね。
詳しい話の流れは、先に書きました「全文訳・松風(5)」でお読み
いただければ、と思います(⇒こちらから)。
溝の口の「紫の会」は第2月曜日なので、毎年1月は「成人の日」
です。澄み渡った青空の下、溝の口駅周辺には、色とりどりの
振り袖姿の新成人が、今年は誰一人としてマスクの着用もなく、
楽しそうに話をしながら歩いていました。
2021年は休講中。2022年、2023年はマスクをつけての晴れ着
姿だったので、コロナに対する意識は完全に変わりましたね。
今はテレビのニュースでも、インフルエンザの大流行のほうが
話題になっていますものね。
「紫の会」は、第18帖「松風」の中程を講読中です。
今回は、一人明石に残ることになった入道が娘の明石の上に、
長々と別れの言葉を告げるところから読み始めました。
入道は先ず、自分の半生を振り返って語ります。
大臣家の息子として生まれながら、自ら近衛中将という官職を
投げ打って、「播磨の守」という受領階級になり下がったのも、
娘の明石の上を思い通りに育てたいためであったのだが、思う
ように事は運ばず、美しく成長した明石の上を、こんな田舎に
埋もれさせてしまうのか、と嘆いていたところに、住吉明神の
お導きで、源氏の君とのご縁を得て、姫君まで誕生したので、
自分はもう思い残すこともなくなった、と、これ迄の明石の物語
を要約して、読者にも確認させるような会話内容となっています。
更に「君達は世を照らしたまふべき光しるければ」(あなた方は
現世を照らしなさるご立派な運勢がはっきりとしているのです
から)と語るに至っては、まるで源氏が「三人の子どものうちの
一人は后になる」と予言されているのを知っているかのようです。
もちろん、入道が知る由もなく、なぜそうした予見めいたことが
可能であったかが明かされるのは、10年後、34帖「若菜上」で、
姫君が東宮の第1皇子を出産した際に、入道から明石の上の
許に届けられた遺書によってなのです。
ここに至るまでのまとめをし、この先の明石一族の繁栄を予感
させている場面かと思います。長編物語として紡いでいく心憎い
までの作者のストーリーテラーとしての資質を見せつけられて
いる気がいたしますね。
詳しい話の流れは、先に書きました「全文訳・松風(5)」でお読み
いただければ、と思います(⇒こちらから)。
「夜光りけむ玉」
2024年12月19日(木) オンライン「紫の会・木曜クラス」(第53回・通算100回・№2)
今日は気温が8℃位までにしか上がらない、真冬の寒さと
なりました。朝方、東京では初雪が降ったそうですが、この
辺りは雪の気配は見えず、空気の乾燥も一段と進んでいる
気がします。インフルエンザも流行期に入ったと言われて
いますし、火の元にもいっそうの注意が必要ですね。
「紫の会」は、会場クラス、オンライン2クラス、全て年内の
講読会は終了しました。第18帖「松風」の2回目で、明石の
入道、母君、明石の上が、別れの朝に歌を唱和する場面迄
を読みました。
入道にとっては、目に入れても痛くない孫娘との別れとなり
ます。この先、可愛くて堪らない孫娘を見ることなく過ごすの
かと思うと、既に出家して、俗世のことには関りを持つべき
ではない身でありながら、涙を禁じ得ません。
これまで孫娘は、「夜光りけむ玉」(夜光ったという玉のような
秘宝)の心地のする存在でした。
ここには、今我々が使っている「完璧」という言葉の由来に
まつわる中国の故事が引かれております。
中国の戦国時代に、趙の国に夜光る「和氏の璧」(かしのへき)
という「璧」(たま=中央に孔のある平らな宝玉)があり、秦の国
の昭王がそれを欲して、15の城(=町のこと)と交換したいと
言って来ました。
使者として秦の国に赴いた藺相如は、昭王には「和紙の璧」
の代償として15の城を与える意志のないことを見抜き、一旦
は昭王に手渡した「和氏の璧」を奪い返して、趙の国へと持ち
帰ったのです。
「完璧而帰」(璧を完うして帰らん)と藺相如の言った言葉から、
「大事な事を成し遂げる」、「全く欠点がない状態」を、「完璧」
というようになったので、この故事を知っていれば、「完壁」など
と漢字を間違えて書くこともありませんね。
それにしても、紫式部はこうした中国の故事にも通じていて、
『源氏物語』の中に様々織り込んでいるのには、その知識の
深さに感嘆するばかりです。
本日は物語の本筋からは離れた記事になりましたので、話の
展開は、先に書きました「全文訳・松風(4)」にてご覧下さい
ませ(⇒こちらから)。
今日は気温が8℃位までにしか上がらない、真冬の寒さと
なりました。朝方、東京では初雪が降ったそうですが、この
辺りは雪の気配は見えず、空気の乾燥も一段と進んでいる
気がします。インフルエンザも流行期に入ったと言われて
いますし、火の元にもいっそうの注意が必要ですね。
「紫の会」は、会場クラス、オンライン2クラス、全て年内の
講読会は終了しました。第18帖「松風」の2回目で、明石の
入道、母君、明石の上が、別れの朝に歌を唱和する場面迄
を読みました。
入道にとっては、目に入れても痛くない孫娘との別れとなり
ます。この先、可愛くて堪らない孫娘を見ることなく過ごすの
かと思うと、既に出家して、俗世のことには関りを持つべき
ではない身でありながら、涙を禁じ得ません。
これまで孫娘は、「夜光りけむ玉」(夜光ったという玉のような
秘宝)の心地のする存在でした。
ここには、今我々が使っている「完璧」という言葉の由来に
まつわる中国の故事が引かれております。
中国の戦国時代に、趙の国に夜光る「和氏の璧」(かしのへき)
という「璧」(たま=中央に孔のある平らな宝玉)があり、秦の国
の昭王がそれを欲して、15の城(=町のこと)と交換したいと
言って来ました。
使者として秦の国に赴いた藺相如は、昭王には「和紙の璧」
の代償として15の城を与える意志のないことを見抜き、一旦
は昭王に手渡した「和氏の璧」を奪い返して、趙の国へと持ち
帰ったのです。
「完璧而帰」(璧を完うして帰らん)と藺相如の言った言葉から、
「大事な事を成し遂げる」、「全く欠点がない状態」を、「完璧」
というようになったので、この故事を知っていれば、「完壁」など
と漢字を間違えて書くこともありませんね。
それにしても、紫式部はこうした中国の故事にも通じていて、
『源氏物語』の中に様々織り込んでいるのには、その知識の
深さに感嘆するばかりです。
本日は物語の本筋からは離れた記事になりましたので、話の
展開は、先に書きました「全文訳・松風(4)」にてご覧下さい
ませ(⇒こちらから)。
明石の上の母君の思い
2024年12月16日(月) オンライン「紫の会・月曜クラス」(第53回・通算100回・№2)
今日は最高気温が13℃。風も弱かったせいか、少し寒さの
和らいだ感がありましたが、相変わらず一日中晴れ渡って、
雨の気配は全く無し。いつまでこの空気の乾燥状態は続く
のでしょうか?日本海側では連日雨や雪の予報なのに、
皮肉な今の日本列島の気象状況です。
師走も半分過ぎてしまいました。年末年始の準備が何もでき
ていないので、今年も気忙しさが、日毎に募って来ております。
今月の「紫の会」は、第18帖「松風」に入って2回目。
大井の邸の修築も済み、いよいよ明石の上が上京することと
なって、入道、母君、明石の上、それぞれの別れの寂しさが
描かれます。
入道や明石の上の思いは、これまでも取り上げて来ましたが、
今回は、入道と尼君の夫婦生活を総括しているとも言えそうな、
母君の思いを記しておきましょう。
母君の祖父は中務の宮。皇族の血を引く高貴な出自で、大臣
の息子である入道と結婚したものの、入道が自ら近衛中将の
官位を捨て、受領となって播磨の国に下向したので、共に京を
離れることになったのです。
おそらく入道の出家と同時に尼となったらしく、長年、入道とは
別居生活をしてきました。ですから、娘と孫娘が上京すると
なった今、明石に留まる意味は無く、京へと戻ることにしました。
入道は偏屈な変わり者。。源氏と娘を何としても結びつけようと
する夫に、母君はその無謀を諫め、反対したこともありました。
しかし、いざ別れの時が近づくと、同じ明石の地で別居している
のとは違い、この地で添い遂げる覚悟をしていただけに、これが
今生の別れになるかもしれないという、心細さがこみ上げてくる
のでした。
これも、愛とか恋とかとは異なる、長年連れ添った夫婦の心情
として、頷けるものがありますね。
この尼君、感情だけに流されず、現状を見極める判断力も身に
つけている人で、それが後々の幸せに繋がって行くことになる
のですが、そこは次の「薄雲」の巻を読む時にまたご紹介したい
と思います。
明石の上を迎えるための源氏の配慮や、明石の上、入道の思い
なども含めて、詳しくは先に書きました「全文訳・松風(3)」をご覧
いただければ、と存じます(⇒こちらから)。
今日は最高気温が13℃。風も弱かったせいか、少し寒さの
和らいだ感がありましたが、相変わらず一日中晴れ渡って、
雨の気配は全く無し。いつまでこの空気の乾燥状態は続く
のでしょうか?日本海側では連日雨や雪の予報なのに、
皮肉な今の日本列島の気象状況です。
師走も半分過ぎてしまいました。年末年始の準備が何もでき
ていないので、今年も気忙しさが、日毎に募って来ております。
今月の「紫の会」は、第18帖「松風」に入って2回目。
大井の邸の修築も済み、いよいよ明石の上が上京することと
なって、入道、母君、明石の上、それぞれの別れの寂しさが
描かれます。
入道や明石の上の思いは、これまでも取り上げて来ましたが、
今回は、入道と尼君の夫婦生活を総括しているとも言えそうな、
母君の思いを記しておきましょう。
母君の祖父は中務の宮。皇族の血を引く高貴な出自で、大臣
の息子である入道と結婚したものの、入道が自ら近衛中将の
官位を捨て、受領となって播磨の国に下向したので、共に京を
離れることになったのです。
おそらく入道の出家と同時に尼となったらしく、長年、入道とは
別居生活をしてきました。ですから、娘と孫娘が上京すると
なった今、明石に留まる意味は無く、京へと戻ることにしました。
入道は偏屈な変わり者。。源氏と娘を何としても結びつけようと
する夫に、母君はその無謀を諫め、反対したこともありました。
しかし、いざ別れの時が近づくと、同じ明石の地で別居している
のとは違い、この地で添い遂げる覚悟をしていただけに、これが
今生の別れになるかもしれないという、心細さがこみ上げてくる
のでした。
これも、愛とか恋とかとは異なる、長年連れ添った夫婦の心情
として、頷けるものがありますね。
この尼君、感情だけに流されず、現状を見極める判断力も身に
つけている人で、それが後々の幸せに繋がって行くことになる
のですが、そこは次の「薄雲」の巻を読む時にまたご紹介したい
と思います。
明石の上を迎えるための源氏の配慮や、明石の上、入道の思い
なども含めて、詳しくは先に書きました「全文訳・松風(3)」をご覧
いただければ、と存じます(⇒こちらから)。
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