後々のことではありますが・・・
2021年2月25日(木) オンライン「紫の会・木曜クラス」(第7回・通算54回 №2)
第2月曜日のクラスと足並みを揃え、今日の第4木曜日のクラスも、
第10帖「賢木」の、桐壺院崩御後の残された人々の動向を伝える
場面を読みました。
朱雀帝を擁する右大臣方の勢力の増大に伴い、源氏や左大臣側は
全面的な後退を余儀なくされ、失意の日々を送ることとなってしまい
ました。
そのような状況の中でも、源氏と朧月夜は密会を重ねておりました。
ある夜、弘徽殿(今は尚侍となった朧月夜がここに住んでいる)の細殿
で朧月夜と密会をし、まだ夜明け前にお帰りになる源氏は、藤壺の女御
に仕える女房との忍び逢いをした帰りの、承香殿の女御の兄・藤少将に
目撃をされてしまいます。
右大臣方に通報されても仕方ないところだったのですが、運よくこの少将
は、そうした利害関係もなかったらしく、ここでは事なきを得ています。
この朱雀帝の「藤壺の女御」と「承香殿の女御」、ご本人たちは登場場面
も極めて少ないのですが、お二人所生の御子が次の方々となります。
藤壺の女御は、後に源氏の正妻となる女三の宮の母。承香殿の女御は、
後に東宮から今上帝(「若菜下」で即位してから、宇治十帖の最後まで)
となる皇子の母です。そしてこの皇子に入内し、中宮となるのが、源氏の
愛娘・明石の姫君(明石中宮と呼ばれる)なのです。更に付け加えるなら、
この二人の間に生まれた第3皇子が「宇治十帖」での匂宮ということに
なります。
藤壺の女御は、源氏の憧れの藤壺(同じ藤壺でややこしいのですが)や、
紫の上の父・兵部卿の宮の腹違いの妹に当たります。源氏が女三の宮
との結婚を承知したのも、紫の上同様、「藤壺の姪」ということへの期待
があったからなのですよね。
藤壺の女御は王族、承香殿の女御は兄(弟の可能性もあり)が藤少将と
あるので、藤原氏です。
ここを読むには関係のない余談ですが、口で話しただけではわかり難い
人間関係かと思い、今日のブログの記事とさせていただきました。
源氏と朧月夜の密会場面、詳しくは第10帖「賢木」の全文訳(9)をご覧
ください⇨⇨こちらから。
第2月曜日のクラスと足並みを揃え、今日の第4木曜日のクラスも、
第10帖「賢木」の、桐壺院崩御後の残された人々の動向を伝える
場面を読みました。
朱雀帝を擁する右大臣方の勢力の増大に伴い、源氏や左大臣側は
全面的な後退を余儀なくされ、失意の日々を送ることとなってしまい
ました。
そのような状況の中でも、源氏と朧月夜は密会を重ねておりました。
ある夜、弘徽殿(今は尚侍となった朧月夜がここに住んでいる)の細殿
で朧月夜と密会をし、まだ夜明け前にお帰りになる源氏は、藤壺の女御
に仕える女房との忍び逢いをした帰りの、承香殿の女御の兄・藤少将に
目撃をされてしまいます。
右大臣方に通報されても仕方ないところだったのですが、運よくこの少将
は、そうした利害関係もなかったらしく、ここでは事なきを得ています。
この朱雀帝の「藤壺の女御」と「承香殿の女御」、ご本人たちは登場場面
も極めて少ないのですが、お二人所生の御子が次の方々となります。
藤壺の女御は、後に源氏の正妻となる女三の宮の母。承香殿の女御は、
後に東宮から今上帝(「若菜下」で即位してから、宇治十帖の最後まで)
となる皇子の母です。そしてこの皇子に入内し、中宮となるのが、源氏の
愛娘・明石の姫君(明石中宮と呼ばれる)なのです。更に付け加えるなら、
この二人の間に生まれた第3皇子が「宇治十帖」での匂宮ということに
なります。
藤壺の女御は、源氏の憧れの藤壺(同じ藤壺でややこしいのですが)や、
紫の上の父・兵部卿の宮の腹違いの妹に当たります。源氏が女三の宮
との結婚を承知したのも、紫の上同様、「藤壺の姪」ということへの期待
があったからなのですよね。
藤壺の女御は王族、承香殿の女御は兄(弟の可能性もあり)が藤少将と
あるので、藤原氏です。
ここを読むには関係のない余談ですが、口で話しただけではわかり難い
人間関係かと思い、今日のブログの記事とさせていただきました。
源氏と朧月夜の密会場面、詳しくは第10帖「賢木」の全文訳(9)をご覧
ください⇨⇨こちらから。
第10帖「賢木」の全文訳(9)
2021年2月25日(木) オンライン「紫の会・木曜クラス」(第7回・通算54回・№1)
このクラスも、先月は『源氏物語』のキャスティング遊びで、本文の講読は
お休みしてしまったので、今月は12月に読了したところからの続きとなり、
第10帖「賢木」の145頁・2行目~149頁・2行目迄を読みました。前半部分
は、2月8日に書きましたので(⇨⇨こちらから)、今日はその後半部分となる
147頁・6行目~149頁・2行目までの全文訳となります。
(頁・行数は、「新潮日本古典集成 源氏物語二」による)
源氏の君は不快なことばかりが多くなりますが、朧月夜とは、密かに
お心を通わせておられるので、無理をなさりながらも長く途絶えが
あるわけではありませんでした。
五壇の御修法の始まりで、朱雀帝が女性を遠ざけて謹んでおられる
隙を窺って、源氏の君はいつものように、朧月夜とはかない逢瀬を
お持ちになります。
あの昔を思い出させる弘徽殿の細殿の局に、女房の中納言の君は、
人目を紛らわせて源氏の君をお入れ申し上げます。人目も多い頃
なので、いつもよりも端近なのが、空恐ろしく感じられます。
朝夕に源氏の君を見申し上げている人でさえ、見飽きぬほどのご様子
なので、ましてや時たまにしか逢えないご対面が、どうして並々のこと
と思えましょうか。朧月夜のご様子も、実に素晴らしい女盛りでいらっ
しゃいます。落ち着きと言った点ではどうでしょうか、でも美しくあでやか
で若々しい感じがして、逢いたくなる御様子でございました。
程なく夜が明けて行くのであろうかとお思いになっていると、すぐ傍で
「宿直奏の者でございます」と、咳払いをして告げているのが聞こえます。
自分の他にもこの辺りの局に忍んで来ている近衛府の上司がいるので
あろう、意地悪な同僚が教えてここに来させたのだろうよ、と源氏の君は
お聞きになります。おもしろくはありますが、煩わしいことでした。この者
はあちらこちら上司を捜しまわって、「寅の一刻」と申しているようでした。
朧月夜が、
「心からかたがた袖をぬらすかなあくとをしふる声につけても」(自分から
求めた恋ゆえに、何かにつけて涙で袖を濡らすことです。夜が明けると
教えてくれる声を聞くにつけても)
とおっしゃる姿は、心細げで、とても風情がございました。源氏の君は、
「嘆きつつわが世はかくて過ぐせとや胸のあくべき時ぞともなく」(嘆き
ながら一生このようにして過ごせと言うのだろうか。胸の思いの晴れる
時とてなくて)
と言い残して、心落ち着かぬままお帰りになりました。
まだ夜明けには間がある残月のかかる空が言いようもなく霧に被われて
いる所に、源氏の君がたいそうひどく粗末な身なりでお忍びらしくお振舞い
になられるのも、この上もなく素晴らしいご様子で、承香殿の女御のご兄弟
の藤少将が、藤壺から出て来て月が少し影になっている立蔀の傍に立って
いたのを、源氏の君が知らずに通り過ぎていらしたのはお気の毒なことでした。
藤少将が非難申し上げるようなこともあり得たに違いないでしょうにね。
このクラスも、先月は『源氏物語』のキャスティング遊びで、本文の講読は
お休みしてしまったので、今月は12月に読了したところからの続きとなり、
第10帖「賢木」の145頁・2行目~149頁・2行目迄を読みました。前半部分
は、2月8日に書きましたので(⇨⇨こちらから)、今日はその後半部分となる
147頁・6行目~149頁・2行目までの全文訳となります。
(頁・行数は、「新潮日本古典集成 源氏物語二」による)
源氏の君は不快なことばかりが多くなりますが、朧月夜とは、密かに
お心を通わせておられるので、無理をなさりながらも長く途絶えが
あるわけではありませんでした。
五壇の御修法の始まりで、朱雀帝が女性を遠ざけて謹んでおられる
隙を窺って、源氏の君はいつものように、朧月夜とはかない逢瀬を
お持ちになります。
あの昔を思い出させる弘徽殿の細殿の局に、女房の中納言の君は、
人目を紛らわせて源氏の君をお入れ申し上げます。人目も多い頃
なので、いつもよりも端近なのが、空恐ろしく感じられます。
朝夕に源氏の君を見申し上げている人でさえ、見飽きぬほどのご様子
なので、ましてや時たまにしか逢えないご対面が、どうして並々のこと
と思えましょうか。朧月夜のご様子も、実に素晴らしい女盛りでいらっ
しゃいます。落ち着きと言った点ではどうでしょうか、でも美しくあでやか
で若々しい感じがして、逢いたくなる御様子でございました。
程なく夜が明けて行くのであろうかとお思いになっていると、すぐ傍で
「宿直奏の者でございます」と、咳払いをして告げているのが聞こえます。
自分の他にもこの辺りの局に忍んで来ている近衛府の上司がいるので
あろう、意地悪な同僚が教えてここに来させたのだろうよ、と源氏の君は
お聞きになります。おもしろくはありますが、煩わしいことでした。この者
はあちらこちら上司を捜しまわって、「寅の一刻」と申しているようでした。
朧月夜が、
「心からかたがた袖をぬらすかなあくとをしふる声につけても」(自分から
求めた恋ゆえに、何かにつけて涙で袖を濡らすことです。夜が明けると
教えてくれる声を聞くにつけても)
とおっしゃる姿は、心細げで、とても風情がございました。源氏の君は、
「嘆きつつわが世はかくて過ぐせとや胸のあくべき時ぞともなく」(嘆き
ながら一生このようにして過ごせと言うのだろうか。胸の思いの晴れる
時とてなくて)
と言い残して、心落ち着かぬままお帰りになりました。
まだ夜明けには間がある残月のかかる空が言いようもなく霧に被われて
いる所に、源氏の君がたいそうひどく粗末な身なりでお忍びらしくお振舞い
になられるのも、この上もなく素晴らしいご様子で、承香殿の女御のご兄弟
の藤少将が、藤壺から出て来て月が少し影になっている立蔀の傍に立って
いたのを、源氏の君が知らずに通り過ぎていらしたのはお気の毒なことでした。
藤少将が非難申し上げるようなこともあり得たに違いないでしょうにね。
「どうしよう?」
2021年2月22日(月)
新型コロナが対岸の火事ではなく、身近な恐怖として感じられる
ようになってちょうど1年。2020年2月の第4月曜日の講読会を
最後に、溝の口を会場としている5講座は、オンラインクラスを
除き、全てが休講となったまま今に至っています。
高齢者へのワクチン接種が行き渡れば、会場での講読会は
再開可能になろうかと、ひたすらその時を待っていますが、
果たして接種はスムーズに進んでくれるのでしょうか?
そのような状況下で、もっと個人的レベルで「どうしよう?」と
悩んでいることもあります(そんなくだらないこと、悩みの内に
入らないわよ、って言われそうですが💦)。
3年前の9月1日のブログに、「1,500円貯金の開始!」と題した
記事を書いています(その記事は⇨⇨こちらから)。3年間毎月
1,500円ずつ貯金して54,000円。1枚25,000円のチケットを2枚
購入して、残りの4,000円でお食事を、との計画で、毎月欠かさず
頑張って1,500円を箱に入れてきました(チケットが1枚27,000円に
値上がりしたので、お食事代は出なくなってしまいましたが)。
そして先日、主催者のNBSから、開催決定の日程と出演予定の
ダンサー名を記したメールが送られてきました。
8月13日~8月22日迄で、Aプロ、Bプロ各4回ずつ、すべてマチネ
公演となっています。
まだチケットは発売になっていませんが、チケットを求めるべきか
止めておくべきか、1,500円貯金の仲間と「どうしよう?」で、結論が
出せずにいます。一度購入したチケットはキャンセル不可ですし、
間際になってからでは当然手に入れるのは困難ですし・・・。
3年毎に、トップダンサーが一堂に会する「世界バレエフェスティバル」、
1988年から欠かさず鑑賞していますが、さて、どうしたものでしょう?
貯金箱に同封しているメモ。
毎月1,500円入れたら○をつけています。
新型コロナが対岸の火事ではなく、身近な恐怖として感じられる
ようになってちょうど1年。2020年2月の第4月曜日の講読会を
最後に、溝の口を会場としている5講座は、オンラインクラスを
除き、全てが休講となったまま今に至っています。
高齢者へのワクチン接種が行き渡れば、会場での講読会は
再開可能になろうかと、ひたすらその時を待っていますが、
果たして接種はスムーズに進んでくれるのでしょうか?
そのような状況下で、もっと個人的レベルで「どうしよう?」と
悩んでいることもあります(そんなくだらないこと、悩みの内に
入らないわよ、って言われそうですが💦)。
3年前の9月1日のブログに、「1,500円貯金の開始!」と題した
記事を書いています(その記事は⇨⇨こちらから)。3年間毎月
1,500円ずつ貯金して54,000円。1枚25,000円のチケットを2枚
購入して、残りの4,000円でお食事を、との計画で、毎月欠かさず
頑張って1,500円を箱に入れてきました(チケットが1枚27,000円に
値上がりしたので、お食事代は出なくなってしまいましたが)。
そして先日、主催者のNBSから、開催決定の日程と出演予定の
ダンサー名を記したメールが送られてきました。
8月13日~8月22日迄で、Aプロ、Bプロ各4回ずつ、すべてマチネ
公演となっています。
まだチケットは発売になっていませんが、チケットを求めるべきか
止めておくべきか、1,500円貯金の仲間と「どうしよう?」で、結論が
出せずにいます。一度購入したチケットはキャンセル不可ですし、
間際になってからでは当然手に入れるのは困難ですし・・・。
3年毎に、トップダンサーが一堂に会する「世界バレエフェスティバル」、
1988年から欠かさず鑑賞していますが、さて、どうしたものでしょう?
貯金箱に同封しているメモ。
毎月1,500円入れたら○をつけています。
ちょっとしたヤキモチ?
2021年2月19日(金) オンライン『枕草子』(第7回 通算第48回)
数日前から本格的な花粉の飛散が始まったようで、昨年、一昨年
が楽だったこともあり、今年は呑気に構えていたら、くしゃみ、鼻水、
目の痒み、総攻撃で攻められています😢
本日のオンライン「枕草子」は、少し長めの第274段を読みました。
村上天皇の孫にあたる源成信は、母方の伯母が道長の正妻だった
関係で、道長の猶子となったイケメン貴公子です。作者とは気が合い、
始終やってきて座り込んでは、人物批評などもはっきりとする人でした。
その頃、内裏は焼失したため、一条院が今内裏と呼ばれる仮の内裏と
なっていました。作者はそこの東の小廂がお気に入りで、式部のおもと
という同輩と二人で昼夜そこで過ごしていました。
大雨の夜、清少納言たちが小廂を離れ、少し奥で寝ていると、成信が
訪ねてきました。面倒だと感じた清少納言は、兵部という女房が起こし
に来ても、狸寝入りを決め込んで返事もしませんでした。
それでも聞き耳を立てていると、成信はその取次役の兵部と喋り込んで
帰る気配を見せません。とうとう二人は明け方まで話し続け、やっと
成信は帰って行きました。
日頃、成信は兵部のことを、「あんなのが中宮さまの前をウロウロしては
みっともない」なんて言っているのに、一晩中語り明かすなんて、どういう
料簡なの?もう口を利いてあげない、と清少納言が思っているところへ、
兵部がやって来て、同僚たちに「大雨の中を訪ねてきてくれる男の人には
心惹かれるわ。ずっと音信不通で辛い思いをしていても、雨でびしょ濡れ
になって来てくれたら、恨みは全部忘れちゃうでしょうよ」と、得意気に
話しているのが聞こえてきます。
「ふん、普段悪口を言われていることも知らず、よく言うわ。そりゃぁ、毎夜
欠かさず訪ねて来る男が、そんな大雨にも拘らず来てくれたなら、ああ私と
一晩だって離れていたくないんだわ、としみじみするでしょうけど、わざわざ
雨の夜に限って来るなんてわざとらしいじゃないの」というのが、それに
対する作者の言い分でした。
自分が出て応対することを拒否していながら、成信が、いつもは馬鹿にして
いるような女を相手に夜明かしまでしたことに、悔しさが滲み出てしまう作者
です。そこに嫉妬の気持ちもチラッと感じられますよね。
ところで、講読後、「今日は高尾山のシモバシラの写真を見せていただける
ことになっていませんでした?」とお尋ねになった方がおられ、「そうでした!
ゴメンナサイ、忘れていました」(メモしておかないと何でもすぐに忘れて
しまうのです💦)と、先月お約束した写真を見せていただきました。その写真
を終わってからメールに添付して送っていただいたので、ご覧ください。
シモバシラという名の植物に立った霜柱
神秘の自然現象に感動ですね
次はリモートの利点を活かして三島から参加している姉が写した富士山。
今冬の富士山は異常に雪が少ない、と言われていた
そうですが、先日の雨でようやく綺麗に冠雪とのこと
数日前から本格的な花粉の飛散が始まったようで、昨年、一昨年
が楽だったこともあり、今年は呑気に構えていたら、くしゃみ、鼻水、
目の痒み、総攻撃で攻められています😢
本日のオンライン「枕草子」は、少し長めの第274段を読みました。
村上天皇の孫にあたる源成信は、母方の伯母が道長の正妻だった
関係で、道長の猶子となったイケメン貴公子です。作者とは気が合い、
始終やってきて座り込んでは、人物批評などもはっきりとする人でした。
その頃、内裏は焼失したため、一条院が今内裏と呼ばれる仮の内裏と
なっていました。作者はそこの東の小廂がお気に入りで、式部のおもと
という同輩と二人で昼夜そこで過ごしていました。
大雨の夜、清少納言たちが小廂を離れ、少し奥で寝ていると、成信が
訪ねてきました。面倒だと感じた清少納言は、兵部という女房が起こし
に来ても、狸寝入りを決め込んで返事もしませんでした。
それでも聞き耳を立てていると、成信はその取次役の兵部と喋り込んで
帰る気配を見せません。とうとう二人は明け方まで話し続け、やっと
成信は帰って行きました。
日頃、成信は兵部のことを、「あんなのが中宮さまの前をウロウロしては
みっともない」なんて言っているのに、一晩中語り明かすなんて、どういう
料簡なの?もう口を利いてあげない、と清少納言が思っているところへ、
兵部がやって来て、同僚たちに「大雨の中を訪ねてきてくれる男の人には
心惹かれるわ。ずっと音信不通で辛い思いをしていても、雨でびしょ濡れ
になって来てくれたら、恨みは全部忘れちゃうでしょうよ」と、得意気に
話しているのが聞こえてきます。
「ふん、普段悪口を言われていることも知らず、よく言うわ。そりゃぁ、毎夜
欠かさず訪ねて来る男が、そんな大雨にも拘らず来てくれたなら、ああ私と
一晩だって離れていたくないんだわ、としみじみするでしょうけど、わざわざ
雨の夜に限って来るなんてわざとらしいじゃないの」というのが、それに
対する作者の言い分でした。
自分が出て応対することを拒否していながら、成信が、いつもは馬鹿にして
いるような女を相手に夜明かしまでしたことに、悔しさが滲み出てしまう作者
です。そこに嫉妬の気持ちもチラッと感じられますよね。
ところで、講読後、「今日は高尾山のシモバシラの写真を見せていただける
ことになっていませんでした?」とお尋ねになった方がおられ、「そうでした!
ゴメンナサイ、忘れていました」(メモしておかないと何でもすぐに忘れて
しまうのです💦)と、先月お約束した写真を見せていただきました。その写真
を終わってからメールに添付して送っていただいたので、ご覧ください。
シモバシラという名の植物に立った霜柱
神秘の自然現象に感動ですね
次はリモートの利点を活かして三島から参加している姉が写した富士山。
今冬の富士山は異常に雪が少ない、と言われていた
そうですが、先日の雨でようやく綺麗に冠雪とのこと
幻の銘菓「若紫」
2021年2月14日(日)
私が三日も続けてブログを更新することは珍しいのですが、
幻の銘菓を戴いたからには、書きたくなってしまいますよね。
このお菓子を贈ってくださった方から少し前にメールを頂いて、
和菓子司「ときわ木」の「若紫」と名付けられたお菓子の存在
を初めて知りました。
一度食べてみたいけど、年に数回、予約販売されるのみで、
場所も千代田橋(住所は日本橋ですが)と遠く、ましてや今は
コロナ禍で、電車にも殆ど乗ってない状態とあっては、これは
やはり幻の銘菓だなぁ、と思っていました。
それがです。今日のお昼頃「ピンポ~ン」とチャイムの音がして、
「レターパックのお届けです」との声が。「何が届いたのかしら?」
と思いましたが、受け取ったレターパックの送り主の名前を見て、
すぐに「ピ~ン」ときました。「若紫だわ、きっと!」と。
飛び上がるほど嬉しくて、直ぐに開封。幻の銘菓が現実の銘菓
として目の前に姿を現した時の喜びは、「言ふもおろかなり」です。
半生干菓子(こんな言い方はないでしょうが)という感じですが、
お干菓子よりもずっと滑らかな口当たりで、ふわーっと溶け出す
上質の甘味が堪りませんね!小豆、手亡、砂糖だけで作られて
いるようですが、素材の良さがこの上なく品の良い味わいとなって
伝わってくる和菓子だと思います。
愛らしい若紫の描かれた蓋を開けたところ。
「若紫」の名に相応しい蘇芳色が上品な色目です。
この切れ目の入れ方も何とも芸術的で素敵ですね!
お抹茶か濃い目に入れたお煎茶で戴くのがベストかと。
私が三日も続けてブログを更新することは珍しいのですが、
幻の銘菓を戴いたからには、書きたくなってしまいますよね。
このお菓子を贈ってくださった方から少し前にメールを頂いて、
和菓子司「ときわ木」の「若紫」と名付けられたお菓子の存在
を初めて知りました。
一度食べてみたいけど、年に数回、予約販売されるのみで、
場所も千代田橋(住所は日本橋ですが)と遠く、ましてや今は
コロナ禍で、電車にも殆ど乗ってない状態とあっては、これは
やはり幻の銘菓だなぁ、と思っていました。
それがです。今日のお昼頃「ピンポ~ン」とチャイムの音がして、
「レターパックのお届けです」との声が。「何が届いたのかしら?」
と思いましたが、受け取ったレターパックの送り主の名前を見て、
すぐに「ピ~ン」ときました。「若紫だわ、きっと!」と。
飛び上がるほど嬉しくて、直ぐに開封。幻の銘菓が現実の銘菓
として目の前に姿を現した時の喜びは、「言ふもおろかなり」です。
半生干菓子(こんな言い方はないでしょうが)という感じですが、
お干菓子よりもずっと滑らかな口当たりで、ふわーっと溶け出す
上質の甘味が堪りませんね!小豆、手亡、砂糖だけで作られて
いるようですが、素材の良さがこの上なく品の良い味わいとなって
伝わってくる和菓子だと思います。
愛らしい若紫の描かれた蓋を開けたところ。
「若紫」の名に相応しい蘇芳色が上品な色目です。
この切れ目の入れ方も何とも芸術的で素敵ですね!
お抹茶か濃い目に入れたお煎茶で戴くのがベストかと。
高校部活仲間との「リモートカフェタイム」
2021年2月13日(土)
春の陽射しが暖かな一日となりました。
これまでずっと年に一度、幹事役回り持ちで、会食+αの集まりを
行ってきた高校部活の同期会仲間ですが、去年からはコロナ禍で
中止状態になっています。この先ワクチン接種が始まっても、皆で
会食を楽しめるようになるまでには時間がかかりそうですし、ここで
一度オンラインでの顔合わせは如何でしょう?と、今期の幹事さん
と相談して、今日の午後、2時間の「リモートカフェタイム」が実現
しました。
今は継続的なメンバーは10名ですが、そのうちの5名の参加で、
近況報告から、株価の動向の話(私は株は全く保有していません
が、こういう話を聞くと、視野が広がったって感じがして嬉しいです)
まで、幅広い話題で楽しいひと時を過ごしました。
コロナ禍での過ごし方、で、お母様が残されたお着物を、いろいろな
ものにリフオームして、マスクなどを作っているとおっしゃった方の
手作りマスクは、使ってしまうのが勿体ないような素敵なマスクでした。
Zoomの会員になっている私がホスト役を務めさせていただきましたが、
昨日、招待メールを送る時に「飲食物は適宜ご用意くださいね」と書き
添えるつもりだったのを忘れ、今日はブログ用に写真を、と思っていた
のを撮り忘れました。歳のせい?コロナ禍のせい?いずれにしても
危うくなっていますね、ワ・タ・ク・シ(-_-;)
春の陽射しが暖かな一日となりました。
これまでずっと年に一度、幹事役回り持ちで、会食+αの集まりを
行ってきた高校部活の同期会仲間ですが、去年からはコロナ禍で
中止状態になっています。この先ワクチン接種が始まっても、皆で
会食を楽しめるようになるまでには時間がかかりそうですし、ここで
一度オンラインでの顔合わせは如何でしょう?と、今期の幹事さん
と相談して、今日の午後、2時間の「リモートカフェタイム」が実現
しました。
今は継続的なメンバーは10名ですが、そのうちの5名の参加で、
近況報告から、株価の動向の話(私は株は全く保有していません
が、こういう話を聞くと、視野が広がったって感じがして嬉しいです)
まで、幅広い話題で楽しいひと時を過ごしました。
コロナ禍での過ごし方、で、お母様が残されたお着物を、いろいろな
ものにリフオームして、マスクなどを作っているとおっしゃった方の
手作りマスクは、使ってしまうのが勿体ないような素敵なマスクでした。
Zoomの会員になっている私がホスト役を務めさせていただきましたが、
昨日、招待メールを送る時に「飲食物は適宜ご用意くださいね」と書き
添えるつもりだったのを忘れ、今日はブログ用に写真を、と思っていた
のを撮り忘れました。歳のせい?コロナ禍のせい?いずれにしても
危うくなっていますね、ワ・タ・ク・シ(-_-;)
薫の計略
2021年2月12日(金) 溝の口「オンライン源氏の会」(第8回・通算148回)
1月は『源氏物語』のキャスティング遊びで潰してしまったので、
このクラスも、今日は12月の続きから読みました。いよいよ宇治
の姫君たちに転機が訪れることになる、第47帖「総角」の中盤に
かかる所です。
薫は大君と結ばれるチャンスを、既に二度逃しています。最初は
八の宮の一周忌も近づいた頃に宇治に出掛けた折、夜を徹して
大君をかき口説き、ついに隔ての屏風を押しのけて大君に迫った
時です。必死に抵抗する喪服姿の大君のいじらしさに心打たれ、
名香や樒の香りに薫は我に返り、思いとどまりました。これが
不首尾の一回目。
このままでは、まともに受け入れてはもらえまい、と考えた薫は、
女房の弁に頼んで姫君たちの寝所へと案内を請いました。薫の
気配をいち早く察した大君は姿を隠し、そこに残された中の君と、
薫は何事もなく一夜を過ごしたのでした。これが不首尾の二回目。
大君は、自分ではなく妹の中の君を薫と結婚させたいと考えて
います。薫はそれなら、中の君が別の男と結婚してしまえば、
大君も薫との結婚を承知するであろう、と考えます。
そこで、予てより中の君にご執心の匂宮を宇治へ伴い、忠実な
女房の弁もだまし、匂宮を自分に成りすまさせて、中の君のもと
へと導かせたのでした。
その間に、薫は大君と語ります。あとで知られて怨みを買うよりは、
と思い、「匂宮がついて来てしまわれたので、断り切れず、ここへ
一緒に参りました。弁が匂宮に頼み込まれてお味方したのでしょう。
こっそりと中の君のもとにお入りになりました。このままでは、私は
あなたには嫌われ、中の君も匂宮に奪われ、世間の物笑いの種に
なってしまいます」と、薫は事実を脚色して大君に話し、諦めた
大君が自分のものになってくれるはず、と期待していました。
その話を聞いた大君のショックは並大抵のものではありません。
父宮という庇護者を喪い、今は薫の厚意に甘えるしかない境遇
だから馬鹿にされてしまうのか、と、こうして直接薫の応対をして
いることさえ悔やまれるのでした。
さてこの結果、薫にとって三度目の正直となるのでしょうか。
それとも二度あることは三度ある、で、今回も不首尾に終わるの
でしょうか(もう皆さまご存知ですけどね)。
そこは来月に持ち越しですが、人は何とか活路を見出そうとする
時、少々後めたさが伴うようなことでも策略を巡らしてしまうもの
なのだなぁと、思い知らされます。真面目で誠実な薫でさえ、
こうなのですから。
1月は『源氏物語』のキャスティング遊びで潰してしまったので、
このクラスも、今日は12月の続きから読みました。いよいよ宇治
の姫君たちに転機が訪れることになる、第47帖「総角」の中盤に
かかる所です。
薫は大君と結ばれるチャンスを、既に二度逃しています。最初は
八の宮の一周忌も近づいた頃に宇治に出掛けた折、夜を徹して
大君をかき口説き、ついに隔ての屏風を押しのけて大君に迫った
時です。必死に抵抗する喪服姿の大君のいじらしさに心打たれ、
名香や樒の香りに薫は我に返り、思いとどまりました。これが
不首尾の一回目。
このままでは、まともに受け入れてはもらえまい、と考えた薫は、
女房の弁に頼んで姫君たちの寝所へと案内を請いました。薫の
気配をいち早く察した大君は姿を隠し、そこに残された中の君と、
薫は何事もなく一夜を過ごしたのでした。これが不首尾の二回目。
大君は、自分ではなく妹の中の君を薫と結婚させたいと考えて
います。薫はそれなら、中の君が別の男と結婚してしまえば、
大君も薫との結婚を承知するであろう、と考えます。
そこで、予てより中の君にご執心の匂宮を宇治へ伴い、忠実な
女房の弁もだまし、匂宮を自分に成りすまさせて、中の君のもと
へと導かせたのでした。
その間に、薫は大君と語ります。あとで知られて怨みを買うよりは、
と思い、「匂宮がついて来てしまわれたので、断り切れず、ここへ
一緒に参りました。弁が匂宮に頼み込まれてお味方したのでしょう。
こっそりと中の君のもとにお入りになりました。このままでは、私は
あなたには嫌われ、中の君も匂宮に奪われ、世間の物笑いの種に
なってしまいます」と、薫は事実を脚色して大君に話し、諦めた
大君が自分のものになってくれるはず、と期待していました。
その話を聞いた大君のショックは並大抵のものではありません。
父宮という庇護者を喪い、今は薫の厚意に甘えるしかない境遇
だから馬鹿にされてしまうのか、と、こうして直接薫の応対をして
いることさえ悔やまれるのでした。
さてこの結果、薫にとって三度目の正直となるのでしょうか。
それとも二度あることは三度ある、で、今回も不首尾に終わるの
でしょうか(もう皆さまご存知ですけどね)。
そこは来月に持ち越しですが、人は何とか活路を見出そうとする
時、少々後めたさが伴うようなことでも策略を巡らしてしまうもの
なのだなぁと、思い知らされます。真面目で誠実な薫でさえ、
こうなのですから。
桐壺院崩御後の人々の動向
2021年2月8日(月) オンライン「紫の会・月曜クラス」(第7回・通算54回・№2)
先程の全文訳のところにも書きましたが、先月は新年会と称して、
『源氏物語』のキャスティング遊びに興じてしまいましたので、今日
は12月からの続きを読むこととなりました。
第10帖「賢木」の中盤に掛かるところですが、前年の11月に桐壺院
が崩御され、残された人々の動向が書かれている箇所です。
左大臣、紫の上、朝顔、朱雀帝、と続きますが、それぞれの立場や
性格が、読者に対して説得力を持って伝わってくるところに、改めて
『源氏物語』の奥行きの深さを感じます。
例えば、源氏の兄の朱雀帝。ちょっと長くなりますが、原文をそのまま
引用しますね。
「帝は、院の御遺言違へず、あはれにおぼしたれど、若うおはします
うちにも、御心なよびたるかたに過ぎて、強きところおはしまさぬなる
べし、母后、祖父大臣とりどりにしたまふことは、え背かせたまはず、
世のまつりごと、御心にかなはぬやうなり」(朱雀帝は、父・桐壺院の
御遺言を守り、源氏の君を重用したいとしみじみお考えになっています
が、お若くていらっしゃる上に、ご性格が柔和過ぎて、毅然としたところが
おありではないのでしょう、母・弘徽殿の大后と祖父・右大臣がそれぞれ
の思うままになさることには、背くことがお出来にならず、天下の政治は
帝のお心通りには動かせないようでありました)。
実に朱雀帝のお人柄を端的に記していると思われる一文です。
皆さまにしていただいた『源氏物語』のキャスティングの中で、朱雀帝に
複数の方が選ばれた俳優さんは次の方々です(敬称略)。
髙橋一生、松本幸四郎、小泉孝太郎、井浦新。
わかりますよね。
この部分も含め、「桐壺院崩御後の人々の動向」につきましては、
第10帖「賢木」の全文訳(8)をお読みいただければ、と思います。
⇨⇨こちらから
先程の全文訳のところにも書きましたが、先月は新年会と称して、
『源氏物語』のキャスティング遊びに興じてしまいましたので、今日
は12月からの続きを読むこととなりました。
第10帖「賢木」の中盤に掛かるところですが、前年の11月に桐壺院
が崩御され、残された人々の動向が書かれている箇所です。
左大臣、紫の上、朝顔、朱雀帝、と続きますが、それぞれの立場や
性格が、読者に対して説得力を持って伝わってくるところに、改めて
『源氏物語』の奥行きの深さを感じます。
例えば、源氏の兄の朱雀帝。ちょっと長くなりますが、原文をそのまま
引用しますね。
「帝は、院の御遺言違へず、あはれにおぼしたれど、若うおはします
うちにも、御心なよびたるかたに過ぎて、強きところおはしまさぬなる
べし、母后、祖父大臣とりどりにしたまふことは、え背かせたまはず、
世のまつりごと、御心にかなはぬやうなり」(朱雀帝は、父・桐壺院の
御遺言を守り、源氏の君を重用したいとしみじみお考えになっています
が、お若くていらっしゃる上に、ご性格が柔和過ぎて、毅然としたところが
おありではないのでしょう、母・弘徽殿の大后と祖父・右大臣がそれぞれ
の思うままになさることには、背くことがお出来にならず、天下の政治は
帝のお心通りには動かせないようでありました)。
実に朱雀帝のお人柄を端的に記していると思われる一文です。
皆さまにしていただいた『源氏物語』のキャスティングの中で、朱雀帝に
複数の方が選ばれた俳優さんは次の方々です(敬称略)。
髙橋一生、松本幸四郎、小泉孝太郎、井浦新。
わかりますよね。
この部分も含め、「桐壺院崩御後の人々の動向」につきましては、
第10帖「賢木」の全文訳(8)をお読みいただければ、と思います。
⇨⇨こちらから
第10帖「賢木」の全文訳(8)
2021年2月8日(月) オンライン「紫の会・月曜クラス」(第7回・通算54回・№1)
先月は『源氏物語』のキャスティング遊びで、本文の講読はしなかった
ため、今月は2ヶ月ぶりに原文を読み進めました。第10帖「賢木」の
145頁・2行目~149頁・2行目までを読んだので、今回はその前半部分
(145頁2行目~147頁・5行目)の全文訳となります。後半部分は25日
に同じ所を読みますので、その時に書く予定です。
(頁・行数は、「新潮日本古典集成 源氏物語二」による)
左大臣も面白くないお気持ちがなさって、特に内裏にも参内なさいません。
亡き葵の上を、東宮(現朱雀帝)を避けてこの源氏の君に娶せなさった
左大臣のお考えを、弘徽殿の大后は根に持っておられて、快くも思って
おられないのでした。右大臣との間も、もとよりよそよそしいところがおあり
だった上に、桐壺院の御代には左大臣の思い通りになさっていたのを、
時世が変わって、右大臣が得意顔でいらっしゃるのを、左大臣が苦々しく
お思いなのも、ごもっともなことでございました。
源氏の君は以前と変わらず左大臣邸に足をお運びになって、葵の上に
お仕えしていた女房たちのことも、今のほうが却って細やかなお心遣いを
なさって、若君(のちの夕霧)を大切におかわいがりになるのはこの上も
ないので、しみじみと有難い奇特なお心だと、左大臣がいっそう源氏の君
に気を配ってお尽くしになることも昔と同じ様子でした。
源氏の君は桐壺院のこの上ないご寵愛の為、世間からももてはやされて、
物騒がしい程までお忙しそうにお見えでしたが、お通いになっていた女君
のところも、あちらこちらと途絶えなさることもあり、軽々しいお忍び歩きも、
つまらなく思われるようになって特になさいませんので、とてものんびりと
して、今のほうが却って理想的なご様子でいらっしゃいました。
紫の上のお幸せを、世間の人も賞賛申し上げております。少納言の乳母
なども、人知れず、亡き尼君(紫の上の祖母)が祈っておられた効験だと
思っておりました。父の兵部卿の宮も思いのままに紫の上とお便りの
遣り取りをなさっています。
兵部卿の宮の正妻腹で、この上なく恵まれた結婚を、とお思いになって
おられる姫君は、これといったご結婚も出来ずにいらっしゃるので、忌々
しく思うことが多くて、紫の上の継母に当たる兵部卿の宮の北の方は、
おだやかならぬお気持ちでいらっしゃるようです。継子いじめの物語に
わざと作り出したようなご様子でした。
斎院(弘徽殿の大后所生の女三の宮)は、父・桐壺院の服喪の為、退下
なさったので、朝顔の姫君が替わって斎院にご就任になりました。賀茂の
斎院には、女王がお就きになることは多くはありませんでしたが、適当な
内親王がおいでにならなかったのでしょうか。
源氏の君は、もう何年も経っておりますが、いまだに朝顔の姫君にはご執心
でいらっしゃったのに、このような特別なご身分になってしまわれたので、
残念だとお思いになっておりました。女房の中将に手紙をお託けになることも
変わりなく、朝顔の姫君への御文は途絶えることがなかったようでございます。
昔とは変わってしまった今のご境遇を、源氏の君は特に気にもなさっておらず、
このようなちょっとした恋情を、暇に任せて、あちらこちらのお相手に抱いては
思い悩んでおられるのでした。
朱雀帝は、父・桐壺院の 御遺言を守り、源氏の君を重用したいとしみじみお考え
になっています が、お若くていらっしゃる上に、ご性格が柔和過ぎて、毅然とした
ところが おありではないのでしょう、母・弘徽殿の大后と祖父・右大臣がそれぞれ
の思うままになさることには、背くことがお出来にならず、天下の政治は 帝のお心
通りには動かせないようでありました
先月は『源氏物語』のキャスティング遊びで、本文の講読はしなかった
ため、今月は2ヶ月ぶりに原文を読み進めました。第10帖「賢木」の
145頁・2行目~149頁・2行目までを読んだので、今回はその前半部分
(145頁2行目~147頁・5行目)の全文訳となります。後半部分は25日
に同じ所を読みますので、その時に書く予定です。
(頁・行数は、「新潮日本古典集成 源氏物語二」による)
左大臣も面白くないお気持ちがなさって、特に内裏にも参内なさいません。
亡き葵の上を、東宮(現朱雀帝)を避けてこの源氏の君に娶せなさった
左大臣のお考えを、弘徽殿の大后は根に持っておられて、快くも思って
おられないのでした。右大臣との間も、もとよりよそよそしいところがおあり
だった上に、桐壺院の御代には左大臣の思い通りになさっていたのを、
時世が変わって、右大臣が得意顔でいらっしゃるのを、左大臣が苦々しく
お思いなのも、ごもっともなことでございました。
源氏の君は以前と変わらず左大臣邸に足をお運びになって、葵の上に
お仕えしていた女房たちのことも、今のほうが却って細やかなお心遣いを
なさって、若君(のちの夕霧)を大切におかわいがりになるのはこの上も
ないので、しみじみと有難い奇特なお心だと、左大臣がいっそう源氏の君
に気を配ってお尽くしになることも昔と同じ様子でした。
源氏の君は桐壺院のこの上ないご寵愛の為、世間からももてはやされて、
物騒がしい程までお忙しそうにお見えでしたが、お通いになっていた女君
のところも、あちらこちらと途絶えなさることもあり、軽々しいお忍び歩きも、
つまらなく思われるようになって特になさいませんので、とてものんびりと
して、今のほうが却って理想的なご様子でいらっしゃいました。
紫の上のお幸せを、世間の人も賞賛申し上げております。少納言の乳母
なども、人知れず、亡き尼君(紫の上の祖母)が祈っておられた効験だと
思っておりました。父の兵部卿の宮も思いのままに紫の上とお便りの
遣り取りをなさっています。
兵部卿の宮の正妻腹で、この上なく恵まれた結婚を、とお思いになって
おられる姫君は、これといったご結婚も出来ずにいらっしゃるので、忌々
しく思うことが多くて、紫の上の継母に当たる兵部卿の宮の北の方は、
おだやかならぬお気持ちでいらっしゃるようです。継子いじめの物語に
わざと作り出したようなご様子でした。
斎院(弘徽殿の大后所生の女三の宮)は、父・桐壺院の服喪の為、退下
なさったので、朝顔の姫君が替わって斎院にご就任になりました。賀茂の
斎院には、女王がお就きになることは多くはありませんでしたが、適当な
内親王がおいでにならなかったのでしょうか。
源氏の君は、もう何年も経っておりますが、いまだに朝顔の姫君にはご執心
でいらっしゃったのに、このような特別なご身分になってしまわれたので、
残念だとお思いになっておりました。女房の中将に手紙をお託けになることも
変わりなく、朝顔の姫君への御文は途絶えることがなかったようでございます。
昔とは変わってしまった今のご境遇を、源氏の君は特に気にもなさっておらず、
このようなちょっとした恋情を、暇に任せて、あちらこちらのお相手に抱いては
思い悩んでおられるのでした。
朱雀帝は、父・桐壺院の 御遺言を守り、源氏の君を重用したいとしみじみお考え
になっています が、お若くていらっしゃる上に、ご性格が柔和過ぎて、毅然とした
ところが おありではないのでしょう、母・弘徽殿の大后と祖父・右大臣がそれぞれ
の思うままになさることには、背くことがお出来にならず、天下の政治は 帝のお心
通りには動かせないようでありました
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