救われるのは「あの日の私たち」 性被害の救援拠点、存続求める親子
性被害に遭った娘と、守ってやれなかったことを自責する母親。二人のよりどころとなった施設が、存続の危機に立たされている。「サポートを受けられずに苦しむのは、『あの日の私たち』と同じ境遇の被害者だ」。そう考えた母親らは、施設の継続を願って声を上げた。
「かわいいですね」
大阪府内に住む木村あかりさん(23)=仮名=は2021年冬、街中で見知らぬ男性に声を掛けられた。あかりさんは軽度の知的障害と、家族以外の前で言葉が出なくなる「場面緘黙(かんもく)」の症状がある。この日は自立生活の訓練のため、事業所に行った帰りだった。
突然声を掛けられ、言葉を発せられないうちにホテルに連れ込まれた。服を脱がされ、体を触られた。激しく抵抗し、隙(すき)をみてその場を逃れた。
「守ってやれなかった」。帰宅したあかりさんから被害を打ち明けられた母晴子さん(60)=仮名=は、強い怒りと悔しさを感じた。襲われた際に着ていた服などの証拠や被害届を警察に提出。その際、署員からある場所を紹介された。電話をすると、支援員が「一度来られますか」。晴子さんとあかりさんは予約を入れて向かった。
治療や相談に1カ所で対応
「性暴力救援センター・大阪SACHICO(サチコ)」
大阪府松原市にある民間医療機関「阪南中央病院」の一角で、NPOが運営する性被害者の支援拠点だ。必要なサポートを1カ所で提供する全国初の「ワンストップ支援センター」として10年4月に活動を始めた。
病院や警察と連携し、緊急避妊薬の投与といった医療行為や、警察に届け出る際の証拠物の採取が可能。性感染症の定期的な検査や支援員による継続したカウンセリングも用意されている。刑事と民事の法的手続きの説明も受けられる。
SACHICO専用の診察室や相談室、待合場所が用意されている。深く傷ついて動揺していたあかりさんと晴子さんは、病院を訪れる他の患者らと顔を合わせずに済んだ。
SACHICOの支援員は、…
この記事は有料記事です。
残り2319文字(全文3138文字)