8人に1人が性的少数者 サッカー女子W杯が発信に積極的な理由
サッカー女子ワールドカップ(W杯)オーストラリア・ニュージーランド大会では、各チームの主将が「ジェンダー平等」など8種類のメッセージが記されたキャプテンマーク(腕章)から一つを選んで巻いている。昨年の男子のW杯カタール大会で同様の行為が事実上、禁じられたのとは対照的だ。積極的な発信ができる意味を選手や関係者はどう捉えているのか。
男子では「警告」対象
「私たちは応援します」
米ハリウッド俳優のジェニファー・ガーナーさん(51)は、7月20日の開幕戦でW杯初勝利を挙げたニュージーランド代表のアリー・ライリー主将(35)のさりげないアピールをSNS(ネット交流サービス)で称賛した。出生時の戸籍の性と性自認が一致しないトランスジェンダーへの支援を示す水色、ピンク、白のネイルを右手の指先に施すなどしていたのだ。
今大会、国際サッカー連盟(FIFA)は①インクルージョン(包摂(ほうせつ))②先住民③ジェンダー平等④全ての人に教育を⑤女性への暴力撲滅⑥平和⑦飢餓ゼロ⑧サッカーは喜び、平和、希望、情熱――のいずれかの文字が書かれ、ハートが描かれた腕章を用意した。日本の熊谷紗希主将(32)はジェンダー平等を選び、試合ごとに変える主将もいた。
男子のW杯カタール大会では欧州などの複数のチームが同性愛者らへの差別に反対し、「ワンラブ」と書かれ、多様性を象徴する虹色の腕章の使用を計画した。
しかし政治的メッセージの発信を禁じているFIFAは、法律で同性愛を禁じている開催地に配慮し、「政治的中立の理念にそぐわない」「イエローカードの対象となる」などと警告して着用を断念させた。これに対し、ドイツの選手たちは初戦の日本戦の前に口を塞ぐポーズで写真撮影に臨み、抗議の意思を示した。
当事者は「一歩前進」
なぜ1年足らずでFIFAの態度が変わったのか。
プロ選手の国際的な労働組合、国際プロサッカー選手会「FIFPRO(フィフプロ)」のスタッフ、辻翔子さん(35)は「カタールW杯では試合直前まで『ワンラブ』の腕章を着けるかどうか議論していた。FIFAも選手も、あまり良い体験ではなかったからこそ(今回は)大会前に解決したかったのでは」と推察する。
辻さんによると、女子W杯に出場する欧州勢から今春、メッセージ性のある腕章を着用したいとフィフプロに相談があった。FIFAに要望すると…
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