赤旗(日刊紙)を読まない党員が4割を超える現実をどうみるか(追伸)

 前回の拙ブログから3日後、「幹部会決定にたちかえり、3月こそ『三つの課題』をやりきる月に」との呼びかけが、大会・幹部会決定推進本部から改めて出された(赤旗3月2日)。趣旨は、2月には「掲げる目標ではなく、やりきる目標」として党勢拡大を訴えたものの、その変化は一部にとどまり、目標を達成できなかったことから、3月は「月初めからダッシュする」ことを訴えるものだ。では、2月の実績はどうだったのか。

 

 2月中に党大会決定を読了した党員は19.9%(2割)、討議・具体化を開始した支部は66.2%(3分の2)で緒に就いたばかり。党員拡大は3651人(目標の3分の1)に入党を働きかけ421人(目標の4割)が入党、ただし50代までの入党は100人強(入党者の2割強)にとどまったという。赤旗読者拡大は、日刊紙1486人減、日曜版5029人減、電子版74人増と、1月に続く連続後退となった。この数字は「2月中に大会決定を全支部で討議し、3月中に5割が読了して党勢拡大運動に踏み出そう」(志位議長、中間発言)、「1万人以上に入党の働きかけを行い、1千人以上の新しい入党者を迎えよう。そのうち6割、7割を若い世代で迎えることも追求しよう」(山下副委員長、緊急の訴え)との目標を悉く下回るもので、党中央の指導がもはや地方組織にそのまま届かなくなっていることを示している。

 

 赤旗の「党活動」の頁には党勢拡大の先進事例が連日掲載され、「やればやれる!」との革命的気概が強調されている。その一方、党勢拡大に踏み出せない支部の困難な事情や背景はほとんど掘り下げられたことがない。党活動の頁だけを読んでいると、党勢拡大運動は「飛躍的前進」を遂げているように見えるが、月間報告は相変わらずの「連続後退」となっている。この著しいギャップはいったいどこから生じるのだろうか。

 

 「木を見て森を見ず」ということわざがある。物事の細部や一部に気を取られて、全体を見失うことを意味する言葉だ。確かに「革命的気概」を持った先進事例は存在するだろう。だが、それは「類まれな木=特殊解」であって、「森全体=一般解」を表す存在ではないのではないか。単なる「宣伝ビラ」であれば、革命的気概を鼓舞する事例の紹介や言葉の羅列で済むのだろうが、いやしくも「しんぶん赤旗」を名乗るのであれば、「森全体」を眺める視点と分析が不可欠になる。

 

 まして〝科学的社会主義〟を政治信条とする政党ならば、その機関紙は同じく科学的であり分析的でなければならないだろう。党勢拡大目標と実績のギャップを何一つ分析しないまま、百年一日の如く党勢拡大を叫び続けるだけでは党員が日刊紙を読まなくなり、心ある読者が離れていくのは当然というものである。党活動の頁の抜本的刷新を図らない限り、赤旗の拡大はおろか回復も難しい状況がこれからも続くことは間違いない。

 

 それにしても、大会・幹部会決定推進本部が発表した2月の拡大結果は衝撃的だった。入党者が少ないことはいっこうに驚かないが、今回初めて発表された「50代までの入党100人強」という数字には正直度肝を抜かれたのである。党組織全体が著しく高齢化しており、「50代以下がガクンと少ない」(志位発言)現状の下で「世代的継承」が中心課題に掲げられているそのとき、入党者の大半(8割弱)がなおかつ「60代以上」というのではパロディにもならない。今後、党組織の高齢化にますます拍車がかかることがあっても、「若返る」ことなどおよそ絶望的だからだ。

 

 党員の4割が日刊紙を購読していないという現実は、党組織の著しく高齢化していることの反映でもある。高齢化すれば文字を読むのが生理的に苦痛になり、新聞離れが進んでいくのは洋の東西を問わない。加えて「見るだけで頭が痛くなる」長文の大会決定読了を迫られるとあれば、それが「党生活3原則」からの離脱につながり、やがては「実態のない党員」問題に波及していくことは目に見えている。日刊紙の購読義務付けを軸とする「党生活3原則」を不磨の大典として墨守するのではなく、新しく見直すべき時代が訪れているのではないか。

 

 すでに何回も述べてきたように、過去2回にわたって各々10万人を超える大量の「実態のない党員」が整理され、「長期にわたる党勢後退」の構造的原因になってきた。第28回党大会(2020年1月)から第29回党大会(2024年1月)までの4年間の党勢推移は、党員は27万人余から25万人へ2万人余減、赤旗読者は100万人から85万人へ15万人減とそれぞれ後退している。大会以降連日の党勢拡大の呼びかけにもかかわらず1月、2月以降も党勢後退が依然として継続していることは、「長期にわたる党勢後退」が共産党の構造的問題であり、党勢拡大方針を抜本的に見直さない限り是正できない問題であることを示している。

 

 このような現実を直視する時、今後2年間で27万人の党員、100万人の赤旗読者を回復し、その後の3年間で35万人の党員、130万の赤旗読者を実現することは、「掲げる目標」というよりは「果てしない夢」と化す恐れがある。まして、今後5年間で30代~50代の党勢の倍化し、この世代で10万の党をつくることなど「夢のまた夢」ともいうべきスローガンでしかない。科学的社会主義は空想的社会主義を克服して生まれてきたとされているが、時代が逆行している様な印象を受けるのは、実現不可能な党勢拡大方針が相変わらず掲げられている所為かもしれない。(つづく)