PMBOK4の変更点
PMBOK(A Guide to the Project Management Body of Knowledge)の第4版をデジタルコンテンツとして入手したので、3版からの変更点をまとめる。なお、PMBOK4のデジタルコンテンツを参照するためにはPMI会員になる必要がある([PMI]が入口)。書影は英語のペーパーバック版。PMP取得を目指すなら必携かと。このエントリのまとめの目次は以下の通り。
1. プロジェクトマネジメント計画書とプロジェクト文書の包含範囲の変更
2. 定義変更 : 「変更要求」、「プロジェクト憲章」、「スコープ記述書」
3. 削除/追加されたプロセス
4. 知識エリアごとの変更内容
■ 1. プロジェクトマネジメント計画書とプロジェクト文書の包含範囲の変更
まず、「プロジェクトマネジメント計画書」と「プロジェクト文書」が明確に異なるものとして扱われている。3版では「文書⊃計画書」と包含していたが、4版になると両者は別物だそうな。
3版での両者の構成は以下の通り。
主なプロジェクト文書
├プロジェクト憲章
├プロジェクトスコープ記述書
└プロジェクトマネジメント計画書
├スコープマネジメント計画書
├スケジュールマネジメント計画書
├コストマネジメント計画書
├品質マネジメント計画書
├要員マネジメント計画書
├コミュニケーションマネジメント計画書
├リスクマネジメント計画書
└調達マネジメント計画書
4版での定義づけは、こうなる。「プロジェクト文書は、プロジェクトマネジャーの仕事をアシストする文書であり、プロジェクトマネジメント計画書は含まれない」。プロジェクトマネジメント計画書は、各種の計画書やベースラインにより構成される。
4版では、次のカテゴライズとなっている。
プロジェクトマネジメント計画書
├変更マネジメント計画書
├コミュニケーションマネジメント計画書
├コンフィギュレーションマネジメント計画書
├コストマネジメント計画書
├コストパフォーマンス・ベースライン
├人的資源計画書
├プロセス推進計画書
├調達マネジメント計画書
├品質マネジメント計画書
├要求マネジメント計画書
├リスクマネジメント計画書
├スケジュール・ベースライン
├スケジュールマネジメント計画書
├スコープマネジメント計画書
└スコープ・ベースライン
├スコープ記述書
├WBS
└WBS辞書書
プロジェクト文書
├アクティビティ要素
├アクティビティ・コスト見積もり
├アクティビティリスト
├仮定条件の記録(Assumption log)
├見積もりの根拠
├変更記録
├憲章(プロジェクト憲章?)
├契約書
├期間見積もり
├見通し
├イシューログ
├マイルストーンの一覧
├パフォーマンス報告書
├財務観点からの要望書
├提案書
├調達文書
├プロジェクト組織構成図
├品質管理指標値
├品質チェックリスト
├品質マトリックス図
├責任分担マトリックス図
├RBS(Resource Breakdown Structure)
├リソースカレンダー
├リソース要件
├リスク登録表
├役割・責任割り当て
├納入者リスト
├ステークホルダー分析
├ステークホルダーマネジメント戦略
├ステークホルダー登録表
├ステークホルダー要求
├作業記述書
├チーム合意書
├チームパフォーマンス見積もり
├作業パフォーマンス情報
└作業パフォーマンス指標値
■2. 定義変更 : 「変更要求」、「プロジェクト憲章」、「スコープ記述書」
次に、「変更要求」の定義が広がっている。3版では、「是正措置」、「予防措置」、「欠陥修正」および「要求された変更」は、より一般的な用語「変更要求」に包含される。たしかにプロセスやフェーズで違う言葉を使ってはいるものの、意味合いは一緒だからね。
次は、「プロジェクト憲章」と「スコープ記述書」について。3版では意味が似通っているため冗長だったとし、4版では重複部を削り、より両者の区別をつけるようにした。「何のためのプロジェクト?」に答えるプロジェクト憲章と、「プロジェクトで何するの?」の範囲を決めるスコープ記述書、性格が似ているからね。
4版での各構成要素は、それぞれ以下の通り。
プロジェクト憲章
├プロジェクトの目的と正当性
├測定可能なプロジェクト成果物と成功基準
├ハイレベル要望
├ハイレベルのプロジェクト記述書、プロダクト仕様
├マイルストーンスケジュールのサマリー
├予算のサマリー
├プロジェクト承認要求
├プロジェクトマネージャに責任と権限をアサイン
└プロジェクト憲章に責任と権限を与える人の名前
スコープ記述書
├プロダクト・スコープ記述書
├プロジェクト派生物
├プロダクトユーザー承認基準
├プロジェクトの境界
├プロジェクト構成要素
└プロジェクト条件
■3. 削除/追加されたプロセス
削除/追加されたプロセスは、次の通り。頭の数字は章節番号。
- 4.2 プロジェクトスコープ記述書暫定版作成 → 削除
- 4.7 プロジェクト終結 → 4.6 プロジェクト終結フェーズ
- 5.1 スコープ計画 → 削除
- 9.4 プロジェクトチームのマネジメント → コントロールプロセスから実行プロセスへ
- 10.1 ステークホルダーの特定 → 追加
- 10.4 ステークホルダー・マネジメント → ステークホルダーの期待をマネジメントに変更し、コントロールプロセスから実行プロセスへ
- 12.1 購入・取得計画および12.2 契約計画 → 12.1 調達計画へ
- 12.3 納入者回答以来および12.4 納入者選定 → 12.2 調達契約
■4. 知識エリアごとの変更内容
プロジェクト統合マネジメントでの変更点。プロジェクトの目的(暫定版)はプロジェクト憲章で記し、プロジェクトの目的そのものはスコープ記述書で詳述する。その結果、4版ではプロジェクトスコープ記述書暫定版作成プロセスは削除されている。
プロジェクトスコープマネジメントでの変更点。スコープ計画が「要求の収集」に取って代わっている。ステークホルダーを登録することで、プロジェクトに関心を示すステークホルダーを特定する。
プロジェクトタイムマネジメントでの変更点。パソコンの普及により、アローダイアグラム(ADM)やアクティビティ・オン・アロー(AOA)手法はほとんど使われなくなったため、その旨が追記されている。ちょっとしたプロジェクトだと、アクティビティが鬼のように出てくるので、もはや手作業ではムリなんだろうね(作れるけど変更が鬼)。
プロジェクトコストマネジメントの変更点。アーンドバリューがより「使える」ツールとして説明が強化されている。さらに、「パフォーマンスインデックスの達成度計算」が追加されている。
コミュニケーションマネジメントの変更点。「プロジェクトチーム≒ステークホルダー」とは限らない。プロジェクトチーム「外」のステークホルダーが下す決定を予想することもできない。従って、「ステークホルダー要求」をマネジメントする必要が出てくる。これはコントロールプロセスから実行プロセスへ変更することで、記録/報告するものではなく、「実行」するものだと判断している。
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本編は時間を見つけてボチボチ読んでいる。Centuryがゴシックになっており、読みやすい。ステークホルダーのマネジメントに力点が置かれているようだ。いわゆる「プロジェクトへの要望」とはすなわち、プロジェクトチーム「外」のステークホルダーの要求なのだから。
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