スゴ本オフ@ミステリ報告
ミステリを語るのがこんなに難しいなんてッ
12/3に麹町で実施。好きな本をもちよって、まったりアツく語り合うオフ会、今回は「ミステリ」がテーマだったのだが―――ネタバレなしでミステリを紹介するのが、こんなに難しいとは思いもよらなんだ。
もちろん、画面に向かって独り語りする分には問題ない。ブログの読者と、紹介本の読者を想定して、どこまで出すかを線引きする。で、そのラインぎりぎりを狙って放つか、あるいは全く異なる次元で描写するといった遊び方ができる。
しかし、面と向かって反応を確かめながらだと、線引きが難しい。しかも聞き手の中には、読んだ人が混ざっている。この、読んだ人にも未読の人にも面白く(かつネタバレなしで)語るのは苦行そのものだった。(未読の方むけの)作品の魅力にとどまらず、既読の方には「オレはこう読んだ、犯人はホントは○○じゃね?動機は…方法は…」としゃべりたいがしゃべれない。のたうちまわる。この会では「犯人はヤス」方式を採ったぞ。
わたしが紹介したのはこの3冊、共通するのは「親殺し」。
「カラマーゾフ」だと犯人はヤスだということは定説(というか常識)となっているが、わたしはそうではないと考える。ヤスに教唆した人物を犯人だとすると、サイコスリラーになる。普通の犯人探し→法廷モノという展開が、whodunit をずらすだけでメタミステリを帯びてくる(あの会話がなかったら犯行はありえなかった→「あの会話」を読者が目にしなかったら……)。「白夜」と「悪童」は、なぜそんなことをしたのか(Whydunit)?に着目すると、前者は哀しく、後者はぞぞッとなる。そして、両者ともその後の人生を決定付けてしまうが、ヤスは覚悟完了の上。どちらも一気読みの徹夜本なので未読の方がうらやましい。
皆さん、ネタバレを上手に回避しつつ、うま~く魅力を伝えている。いわゆる「王道」は少なめで、変化球を追求した作品が目立った。中でも気になったのはこの5冊。
やすゆきさんオススメの「笑う警官」は、実家の積読山に埋もれているはず。当時の琴線に掛かって入手したまんま幾年月。なつかしいのと、やはり面白いのか!との確信にて、再入手するつもり。佐々木譲氏の奴じゃなくって、スウェーデンの夫婦作家マイ・シューヴァル/ペール・シューヴァルの共著なので要注意。カネヅカさんが推した「虐殺器官」と「サクリファイス」は読もう。このブログのコメント欄やtwitterで、しつこくオススメされていたんだけど、なんとなくオチが見える読書になりそうだったので手を引いてたの。スレた目を外して洗いなおして読むつもり。「サクリファイス」については、「ミステリであり、スポ魂であり、感動モノという珍しい作品」だそうな。ずばぴたさんオススメの「11人いる!」が紹介されたので飛びつく。萩尾作品だし、SFだと思い込んでいたら、「これぞミステリ!」と断言されたので信じる。ずっと未読だった(はず)なので、これを機に読むべし。twitterから参加のぽかりさんの「洗礼」も気になる。コメント欄やはてなでオススメされたこと幾度もあるし、「楳図かずおの大傑作」といわれたら読まざるを得ない。正月読書になりそう。
以下、紹介されたミステリたち。
- 【Dain】 白夜行(東野圭吾、集英社文庫)
- 【Dain】 悪童日記(アゴタ・クリストフ、ハヤカワepi)
- 【Dain】 カラマーゾフの兄弟(ドストエフスキー、新潮文庫)
- 【Dain】 殺戮にいたる病(我孫子武丸、講談社文庫)
- 【やすゆき】 深夜プラス1(ギャビン・ライアル、ハヤカワミステリ)
- 【やすゆき】 笑う警官(シューヴァル、角川文庫)
- 【カネヅカ】 サクリファイス(近藤史恵、新潮文庫)
- 【カネヅカ】 十角館の殺人(綾辻行人、講談社文庫)
- 【カネヅカ】 ドグラ・マグラ(夢野久作、角川文庫)
- 【カネヅカ】 虐殺器官(伊藤計劃、ハヤカワJA)
- 【ゆーすけ】 鉄鼠の檻(京極夏彦、講談社文庫)
- 【でん】 神は沈黙せず(山本弘、角川文庫)
- 【でん】 オーディンの鴉(福田和代、朝日新聞出版)
- 【でん】 コズミック(清涼院流水、講談社ノベルス)
- 【まち】 彷徨う日々(スティーヴ・エリクソン、筑摩書房)
- 【まち】 ひらいたトランプ(アガサ・クリスティ、ハヤカワ)
- 【ようぎらす】 小さな魔女ピッキ(トーン・テレヘン、徳間書店)
- 【ズバピタ】 告白(湊かなえ、双葉文庫)
- 【ズバピタ】 11人いる!(萩尾望都、小学館文庫)
- 【pocari0415】 洗礼(楳図かずお、小学館文庫)
企画をいくつか。「企画から参加したい!」という方がいらしたら、大歓迎ですぞ。企画会議という名の飲み会が待っておりまする。ふるってご参加あれ。
- ねこ本オフ(猫と戯れつつ猫本を語る)
- エロ本オフ(大人の、大人による、大人のためのエロス)
- 食
- ネタバレありのミステリ(事前に本を決めておく。本が好き読書会「往復書簡」が理想)
- スゴ本オフ@ビジネス・自己啓発書(罵倒あり/罵倒禁止)
Ustreamの状況はこちら。
今までのスゴ本オフはこちら。
2010/04/07 【Book Talk Cafe】スゴ本オフ@SF編
2010/05/14 【Book Talk Cafe】スゴ本オフ@LOVE編
2010/07/16 【Book Talk Cafe】スゴ本オフ@夏編
2010/08/07 スゴ本オフ@松丸本舗(7時間耐久)
2010/08/27 【Book Talk Cafe】スゴ本オフ@BEAMS/POP編
2010/10/20 スゴ本オフ@赤坂
2010/10/23 スゴ本オフ@松丸本舗(セイゴォ師に直球)
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コメント
不参加だったにもかかわらず、取り上げて頂きありがとうございました。
『洗礼』は、どこを切っても面白く、濃い漫画ですので、是非読んでください。
ただ、自分も『洗礼』は、ここ10年近く読んでおらず、実家にあったDX版全3巻も最近親が処分してしまったので、再度購入予定です。Amazonレビューによれば、現在一番入手しやすいと思われる文庫版は、第一巻解説にネタばれがあるようなので、ご注意ください。
企画会議にも興味あります!
投稿: ぽかり | 2010.12.08 00:56
>>ぽかりさん
ご紹介ありがとうございます。「洗礼」は劇薬マンガとしてオススメされていたのですが、ここにきて俄然読みたくなりました。それから、文庫版のネタバレありがとうございます。知る/知らぬでは大違い、ですね。
企画会議も、待ってますよー
投稿: Dain | 2010.12.08 06:48
殺伐☓
殺戮○
投稿: はなげ | 2010.12.09 01:11
>>はなげさん
ありがとうございます!
投稿: Dain | 2010.12.09 07:15
こんにちは、久しぶりに書き込みさせていただきました。
マルティン・ペックシリーズはおもしろいですよね。私は、『テロリスト』かな。
犯人の勘違いぶりがおかしかったです。
『11人いる!』は、確かにミステリですね。これは、おもしろかったです。
自分もそれなりにミステリ読んできましたけど、これはというと意外と思い浮かばなかったりします。
でも、今、思いついたものだと、87分署シリーズの『クレアが死んでいる』と
上遠野浩平著『殺竜事件』です。
『クレアが死んでいる』は、どうせ殺されるなら意味のある死をと思ってしまった一冊。
『殺竜事件』は、ファンタジーとミステリーの融合ですが、納得してしまった小説。
ちょっと、癖のある作家さんですが、ついはまってしまうひとりです。
話かわりますが、現在『アラビアの夜の種族』を読んでます。
確か、書評をお書きになってましたよね。
読み終わったら、探してみたいと思います。
投稿: ざわ | 2010.12.10 15:11
こんにちは、浮雲屋です。
今回ミステリーと言う事で紹介されていた悪童日記。
昔、全3部読みました!!
けど、ドンドン話が入り組んで行って結局何が何やらわからなかった。また、いつか読み返したいと常々思っていた作品の一つです。
浦沢直樹さんの"モンスター"を読み始めた時になんとなく悪童日記を思い出した事が有りました。
でも、悪童日記がどんなのだったかすっかり忘れてしまっていて。
話変わっておススメミステリー漫画を幾つか
"ぼのぼの"などのギャグ漫画を書かれていたいがらしみきおさんが、ちょっと前話題になったFreeって言うのを何年も前に実際にやられていました。
"Sink"
Web上でタダで漫画を見せて完結後に出版すると言う当時は画期的な手法を取った漫画でしたから見た人は多いんじゃないかと思います。
内容はある高校で奇怪?奇妙な出来事が起こり始めます。その高校へ通っている男子にも異変が…。その異変に気付いた父親はなぞに迫っていくが…。
なかなか緊迫感のある漫画でしたね。
一昨年辺りでしたか実写の映画になった"神童"と言う漫画。
さそうあきらさんの漫画で、音大受験生と天才と言われた女の子の交流を小気味よく描かれていています。
こちらもお勧めなんですが、そんなさそうさんが描かれた"トトの世界"こちらはガラッと変わってサスペンスというのかミステリーと言うのか。
ある女の子の前に犬のような青年が現れ、その青年の正体を探るうちに大きな事件に巻き込まれていきます。
そして、その事件の先には人の黒い闇が…。
最後に、吉野朔美さんの"エキセントリックス"。
こちらの作品もミステリーと言っていいのかどうなのか難しいところですね。
内容は非常に複雑で何度読んでも、???と、分からなくなります。
ある少女が駅のホームから突き落とされ、頭を打って記憶をなくしてしまいます。
以前の自分を探して色々な人に会うのだけれどそこからいわく有りそうな人たちのいわくありそうな台詞に謎は深まり。
また、すぐ近くにいる人物たちの奇妙な関係に更に読者の混乱を招いて行きます。
サイコミステリー的な内容なのかな。
吉野さんの"いたいけな瞳"は短編集なのですがこちらもお勧めです。
ミステリーはドンドン複雑になって訳が分からなくなったりして私のような頭悪い人にはなかなか難しいですねぇ。
でも、謎が謎を読んで引き込まれてしまいます。
面白いですね。
投稿: 浮雲屋 | 2010.12.11 02:43
あー、しまった~。
トトの世界は既に劇漫画として紹介されていますね。
うわー、やっちまったなぁ。
お粗末さまです。
浮雲屋
投稿: 浮雲屋 | 2010.12.11 02:47
>>ざわさん
「ファンタジーとミステリーの融合」ですか、エキセントリックですね。リアルの土台でトリックや動機を捏ねるミステリに、「実は魔法で……」を混ぜたら危険な香りがしますが、そのファンタジーの世界をもう一回巻き込んでミステリに仕立てているのですね。ちと古いですが、アシモフの「鋼鉄都市」を思い出しました(SF+ミステリの融合)。
「アラビアの…」は、読み終わるまで<<絶対に>>ネット検索してはいけません。特にamazon、カスタマーレビューで力いっぱいネタバレを開陳している奴がいるので。そして、読み終わったら、<<必ず>>ネット検索してください。なぜかはお楽しみということで。
>>浮雲屋さん
「悪童日記」単品でもインパクト大なのですが、二作目、三作目と連なるにつれ、「前作の否定もしくははメタ化」と雪だるまのように膨らむのが面白いです。一日千秋の思いで次作を待ってた頃が懐かしいです(薄手のハードカバーだったような)。
"Sink"はネット編を一部読んだことがあります。モヤモヤ・ざわざわと読み手を不安がらせる仕掛けに満ちていました(コマ割や暗転がまた絶妙でした)。
吉野朔美「ECCENTRICS」は惹かれました、ぜひ読んでみようかと。オススメありがとうございます。
投稿: Dain | 2010.12.11 09:44