猫派も犬派も泣いて笑って語り合った「猫と犬のスゴ本オフ」
好きな本を持ち寄って、まったりアツく語り合う。それがスゴ本オフ。
今回は、「猫」と「犬」をテーマに、お薦めの本、映画、音楽、ゲームにどっぷりハマる。ご参加いただいた皆様、ありがとうございます。HDE様、会場を使わせていただき、感謝いたします。実況のまとめは、[犬好き猫好き必読!「犬とネコのスゴ本オフ」まとめ]をとうぞ(ズバピタさんお疲れさまでした)。やすゆきさんのまとめは[スゴ本オフ「犬と猫」、涙と笑いと食欲の宴ですた。]をどうぞ(ありがとうございます)。
なんとなく猫派の圧勝と思いきや、犬派の健闘も目立ったのが予想外。どちらかというと犬派のわたしは、「泣ける犬の本ベスト5」でテコ入れしたつもりだけれど、杞憂でしたな(むしろ新たな発見が沢山)。そして、ペットとしての愛玩性や、ドラマを盛り上げる「かわいそう」さを際立たせるような作品を想像していたが、これも裏切られた。愛の裏側にあるもっと切実な問題―――「死」についての覚悟や感情が沁みてくる作品が多数あった。
例えば、ジャン・グルニエ『孤島』。愛猫との死別で、立ち直れない状況だったときに出会えた一冊とのこと。どんなに可愛がっていても、突き放したような一線を設けるのは、ひょっとすると人の感情のためかもしれない。猫を飼うとは、その死に立ち会うことも含めて引き受けることになる───その重みが伝わってくる。猫であれ犬であれ、パートナーがいる人は、準備のつもりで―――と、お薦めされる。
あるいは、須藤真澄『長い長いさんぽ』、老境の猫とのふれあいを描いたコミックエッセイだ。前半がほのぼの日常である一方、後半のガラリと変わる展開に注意されたし。飼い主はギリギリ正気を保っているつもりだが、傍から見ると壊れている───猫の死は、それだけインパクトがある。ほとんど恐怖に近いほどの感情らしい。うっかり電車で読んでしまったので、涙をごまかすのが大変だったとのこと(休憩時間に試し読みしてもヤバかった)。
ただ、「可愛らしい」といった情愛だけでなく、いずれ死別することへの悲哀の混ざった諦念を、心のどこかで抱いている(認めたくないという感情と拮抗しながら)―――そんな、はかなさを感じる。
生あるものはいずれ死ぬ。人の寿命が長いから、愛おしいこの命を看取る最期が、必ずある。そのときの自分がどうなってしまうのか、想像するだに恐ろしい。それは、自分が全霊かけてこの存在を愛しているから。苦しむことが分かっていながら、愛することをやめられない。猫や犬は、「ペット」や「パートナー」という言葉よりも、むしろ煩悩の化身そのもの。
定番が見当たらないのがスゴ本オフの面白いところ。誰もが考えそうなものはカブるから避けたがる。カブってもいいのに(なぜ/どこがお薦めなのかは人それぞれで、まさに"読みどころ"だから)。思いつくまま挙げると、漱石、ポール・ギャリコ(ジェニイと猫語の二冊)、綿の国星、ちびねこ、名犬ラッシー、どろんこハリー、タロジロ、子猫物語、空飛び猫と思いつくが、言われて「ああ!」というもの多数。猫本専門店「にゃんこ堂」があるくらいだから、きりがないだろう(それでも、ケッチャム『老人と犬』を忘れていたのは痛恨)。バンサン『アンジュール ある犬の物語』はコメント欄でお薦めいただいたのだが、これも忘れていた(saruminoさんありがとうございます)。
「猫」
- 『グーグーだって猫である』大島弓子(角川書店)
- 『Hate That Cat』シャロン・クリーチ
- 『フランケンウィニー』ティム・バートン(DVD)
- 『山猫』ランペトゥーザ(河出文庫)
- 『恋するしっぽ』手嶌葵(2008 YAMAHA MUSIC COMMUNICATIONS)
- 『夢ねこDS』セガ(Nintendo DS)
- 『FRAGILE(フラジール)さよなら月の廃墟』ナムコ(Nintendo DS)
- 『猫 猫と歴史家と二度目の妻』アテナイス・ミシュレ(論創社)
- 『孤島』 ジャン・グルニエ(筑摩書)
- 『にゃんそろじー』中川翔子編纂 (新潮社)
- 『猫ぐらし』2014夏号(アスペクト)
- 『長い長いさんぽ』須藤真澄(エンターブレイン)
- 『おばあちゃん猫との静かな日々』 下村 しのぶ(宝島社)
- 『ニッポンの猫』岩合光昭(新潮文庫)
- 『チビのお見合い』室井滋(文藝春秋)
- 『ドクターヘリオットの猫物語』ジェイムズ・ヘリオット(集英社)
- 『源氏物語 巻一』瀬戸内寂聴(講談社文庫)
- 『源氏物語 巻六』瀬戸内寂聴(講談社文庫)
- 『The Big Cats and Their Fossil Relatives』Alan Turner(Columbia Univ)
- 『銀座のら猫物語』飯島奈美子(三水社)
- 『のりたまと煙突』星野博美(文芸春秋)
- 『わたしのねこメイベル』ジャクリーン・ウィルソン(小峰書店)
- 『詩の玉手箱』より「私の猫」三好達治(いそっぷ社)
- 『敵は海賊シリーズ』神林長平(早川文庫)
- 『感じて。息づかいを。』川上弘美 編 (光文社)
- 『恋愛中毒』山本文緒 (角川書店)
- 『『吾輩は猫である』殺人事件』 奥泉光(新潮文庫)
- 『町でいちばん賢い猫』リタ・メイ ブラウン&スニーキー・パイ・ブラウン (ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 『パーフェクト・ブルー』宮部みゆき(創元推理文庫)
- 『図書館ねこ デューイ』ヴィッキー・マイロン(早川書房)
- 『伊藤潤二の猫日記 よん&むー』伊藤潤二(講談社)
- 『アラビア猫のゴルム』ヤマザキマリ
- 『猫旅リポート』有川浩(文藝春秋)
- 『ねぇ、マリモ』やまだけいた(講談社)
- 『男の相棒は猫に限る』ウィリー・モリス(WAVE出版)
- 『猫町』萩原朔太郎
- 『ノラや』内田百閒(ちくま文庫)
- 『黒いねこ面』楳図かずお
「犬」
- 『フランダースの犬』ウィーダ(新潮文庫)
- 『星守る犬』村上たかし(双葉社)
- 『クージョ』スティーヴン・キング(新潮文庫)
- 『冬の犬』アリステア・マクラウド(新潮クレスト・ブック)
- 『犬はあなたをこう見ている 最新の動物行動学でわかる犬の心理』ジョン ブラッドショー(河出書房新社)
- 『Love That Dog』シャロン・クリーチ
- 『初秋』ロバート・B・パーカー(ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 『晩秋』ロバート・B・パーカー(ハヤカワ・ミステリ文庫)
- 『バスカヴィル家の犬』コナン・ドイル(新潮文庫)
- 『SHERLOCKシャーロック』ベネディクト・カンバーバッチ出演(DVD)
- 『ティンブクトゥ』ポール・オースター(新潮文庫)
- 『ウォッチャーズ』ディーン・R・クーンツ(文春文庫)
- 『カヌー犬ガク』野田知佑(小学館文庫)
- 『シェルタードッグズ』トレア・スコット(山と溪谷社)
- 『往古日本犬写真集』岡田睦夫(誠文堂新光社)
- 『Shi-ba(シーバ)』(辰巳出版)
- 『川の光 2』松浦寿輝 著 (中央公論社)
- 『fallout3』ベセスダ・ソフトワークス
- 『犬と私の10の約束』川口晴(文春文庫)
- 『いとしのムーコ』みずしな孝之(イブニングKC 講談社)
- 『銀芝さん』影山直美 絵と文 (辰巳出版)
- 『デューク』江國香織、山本容子(講談社)
- 『ずーっとずっとだいすきだよ』ハンス・ウィルヘルム(評論社)
「犬と猫」
- 『Archie and Archie』ルース・レンデル
- 『猫たちを救う犬』フィリップ・ゴンザレス、リアノー・フライシャー
- 『チャペックの犬と猫のお話』カレル・チャペック (河出文庫)
- 『チャペックのこいぬとこねこは愉快な仲間』ヨゼフ・チャペック(河出文庫)
- 『動物のお医者さん』佐々木倫子(白泉社)
- 『人間と動物の病気を一緒にみる』バーバラ・N・ホロウィッツ、 キャスリン・バウアーズ(インターシフト)
- 『動物病院 上手な選び方』(AERAムック)
- 『犬と猫と人間と』飯田基晴(太郎次郎社)
- 『パンといっぴき』桑原奈津子(パイインターナショナル)
- 『パンといっぴき2』桑原奈津子(パイインターナショナル)
そして毎度のことだが、料理がスゴい。食べきれないほどのおにぎりやドーナツ、スイーツや奈良漬け(これが美味)など、本をダシに宴会をしているような場でした(ありがとうございます)。
オフ会するたび思うのだが、いかにわたしの視野が狭いことか。斬新な視点や見知らぬ(でも凄い)作品を山ほど紹介してもらえる。次回のテーマは、「怪物とモンスター」。同じ意味なのになぜ重ねる?"モンスター"という名詞は、邪悪な響きを持つ一方で、"怪物"はポジティブな意義も孕んでいる。なので、善悪に拠らず、これは怪物/モンスターだ!という作品を紹介しあいましょう。
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コメント
こんにちは。
ご紹介くださったたくさんの本ほど「すご本」でもないし、ストーリも特段深くはないのですが、村上春樹に興味のある方にはお勧めの絵本です。
「ふわふわ」(村上春樹/文 安西水丸/絵 講談社)
著者の村上氏が幼少の頃、大好きな猫と一緒にまったりと過ごした日常が描かれています。村上氏の猫に対する愛情が深く感じられる絵本です。村上氏らしく淡々と描かれています。
投稿: ナキウサギ | 2014.10.01 10:43
>>ナキウサギさん
ご紹介ありがとうございます、『ふわふわ』ぜんぜん知りませんでした。まったり過ごす日って、人生にとってかなり大事なことかもしれません。手に取ってみてみますね。
投稿: Dain | 2014.10.01 21:42