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ジバニャン、ミギー、殺せんせー、『クリフハンガー』から『ブレイキング・バッド』まで―――スゴ本オフ「化け物、怪物、モンスター」

 好きな本を持ち寄って、まったりアツく語り合う。それがスゴ本オフ。

 今回は「化け物、怪物、モンスター」。このテーマ、わたしにとって、とっても楽だった。定番の浦沢直樹や西尾維新、藤子不二雄もいいし、モンハンの直球で勝負してもよかった。人に非ざる人外といえばいくらでも思いつくので、一回ヒネって「鬼」にまつわる本を選んでいったのだが……集まった作品は、わたしの想像をはるかに上回る凄いものばかり。

追記:twitter実況まとめは、[SFやファンタジーから冬山、バブル経済、女の妄念まで「化け物、怪物、モンスター」のスゴ本オフ]をどうぞ。

01

遺伝子操作+スチームパンク+冒険+恋愛

 たとえば、人が生み出したにもかかわらず、人の手にあまる「金融」を"モンスター"とする着眼点に膝を打ち、ジバニャンとピカチュウの共通点から、ポケモン市場の研究成果に激しく頷く。桐野夏生の『グロテスク』から、女の執念は怪物級という結論に傾く一方、ヒッチコック監督『サイコ』により男の妄念は怪物級だと痛感する。

02

ロシア民話から聖書偽典と幅広い

 勉強になったのは、おごちゃんお薦めの『エノク書』。聖書の「外典」や「偽典」になる。1世紀ぐらいに聖書が編纂された際、漏れたもの。聖書に載っていない天使、堕天使、悪魔の記述が大量にあり、西洋のモンスターもののルーツやね。現代日本でいうならば、聖書の「薄い本」だね。「薄い本を書きたくなるのは、人類の本能かもしれない」という指摘は正鵠だと思う。希少な『聖書外典偽典』は、ほぼ唯一の邦訳であるとのこと。

03

「仮面ライダー=モンスター」の発想が凄い

 国家権力を化け物にとらえたホッブズ『リヴァイアサン』の発想から、現代のモンスターといえば"マネー"だというルートさんの指摘が鋭い。吉川元忠『マネー敗戦』を読むと、わたしたちは怪物の背中のうえで暮らしているような気分になれるという。

04

人に化け、人が化ける『寄生獣』

 みかん星人さんの、妖怪ウォッチとポケモンがどう違うのか?という議論が面白い。どちらもNintendoDSだけど、片や異世界、片や現実世界。「ボール」に閉じ込められたモンスターと、「時計」から呼び出される妖怪。電気ネズミと地縛霊ネコ。色相関で隣り合う黄とオレンジ。主題歌が演歌調なのも、ポケモンを研究し、意識しているというのだ(『ミュウツーの逆襲』は小林幸子が主題歌)。

06

いろんなビールが飲めました

 上映会も楽しい。シルベスタ・スタローン主演の山岳アクションムービー『クリフハンガー』は、登山のプロ・佐々木さん曰く、「ロッククライマーとしてありえない」。これが公開されたとき、山岳業界は騒然となったそうな。本来、体重が軽い方が有利なのに、こんな体格の奴がどうして軽々と岩を登れるのかと。冒頭の墜落シーンまで見た皆さんの感想→「腕がぬるぬるしているから落ちた」「三点確保していない」「スタローンは服を着ろ」。

05

『ブレイキング・バッド』はイチオシ

 わたしのイチオシ『ブレイキング・バッド』は最初のシーン(ブリーフ姿で拳銃構えるところ)で皆の心を掴んだようだ。"Breaking Bad"は「やりたいことをやる」という意味(悪い意味で)。中年になるまで、まじめ一筋の高校の化学の教師が主人公。肺がんを宣告され、家族にお金を残すために、化学の知識を使って覚醒剤を作るのだが……という話。悪いほうへ悪いほうへ、どんどん転がっていく様は中毒性高いぞ。

07

『百日紅』と『暗殺教室』の取り合わせが妙

 本に限らず、映画や「ホームページ」の紹介も凄い。人類が初めて経験する、海洋ドキュメンタリーの極北というキャッチの『リヴァイアサン』や、世界の猟奇事件および殺人事件を紹介するサイト[Monsters]など、要チェックがざくざく見つかる。


モンスターとは、人に非ざるもの

  • 『寄生獣』岩明均(講談社)
  • 『暗殺教室』松井優征(集英社)
  • 『不死の怪物』J・D・ケルーシュ(文春文庫)
  • 『魔界転生』山田風太郎(講談社文庫)
  • 『幻獣ムベンベを追え』高野秀行(集英社文庫)
  • 『へんないきもの』早川 いくを(新潮文庫)
  • 『魔性の子』小野不由美(新潮社)
  • 『どっこい巨人は生きていた』メアリー・ノートン作(岩波書店)
  • 『聖書外典偽典』日本聖書学研究所(教文館)
  • 『みずは無間』六冬和生(早川書房)
  • 『ねんどぼうや』ミラ・ギンズバーグ(徳間書店)
  • 『小説 仮面ライダーオーズ』毛利亘宏(講談社)
  • 『ウルトラマン研究序説』SUPER STRINGSサーフライダー21(中経出版)
  • 『リヴァイアサン クジラと蒸気機関』スコット・ウエスターフェルド(早川書房)
  • 『ベヒモス クラーケンと潜水艦』スコット・ウエスターフェルド(早川書房)
  • 『ゴリアテ ロリスと電磁兵器』スコット・ウエスターフェルド(早川書房)
  • 『八甲田山 死の彷徨』新田次郎(新潮文庫)

人間こそが、モンスター

  • 『サイコ』ロバート・ブロック(創元文庫)
  • 『オリジナル・サイコ』ハロルド・シェクター(ハヤカワ文庫)
  • 『ブレイキング・バッド』ヴィンス・ギリガン製作(Blu-ray)
  • 『クリフハンガー』DVD/シルベスタ・スタローン主演
  • 『グロテスク』桐野夏生(文藝春秋)
  • 『テティスの逆鱗』唯川恵(文藝春秋)
  • 『誰に見しょとて』菅浩江(早川書房)
  • 『魔笛』野沢尚(講談社文庫)
  • 『「怪獣」のそだてかた』紺野 美沙子(世界文化社)
  • 『この地球を支配する闇権力のパラダイム』中丸薫(徳間書店)
  • 『千利休 無言の前衛』赤瀬川源平著(岩波新書)
  • 『絡新婦の理』京極夏彦(講談社)
  • 『百日紅(三)』杉浦日向子(実業之日本社)
  • 『申し訳ない、御社をつぶしたのは私です』カレン・フェラン(大和書房)
  • 『強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話』宝槻泰伸(徳間書店)
  • 『ある秘密』フィリップ・グランベール(新潮社)
  • 『すべての経済はバブルに通じる』小幡績(光文社)
  • 『マネー敗戦』吉川元忠(文春新書)
  • 『日米開戦』トム・クランシー(新潮文庫)
  • 『21世紀の貨幣論』フェリックス・マーティン(東洋経済新報社)
  • 『3つの鍵の扉: ニコの素粒子をめぐる冒険』ソニア・フェルナンデス=ビダル(晶文社)

 次回は12/6に「(コスプレで)今年のイチオシ」をやりまする。今年一番○○だった作品を持ってきてくださいまし(○○には、面白かった、泣いた、笑った、怖かった、寝かしてくれなかった等が入る)。本に限らず、映像や音楽、コミック、ゲームなんでもOKなとこは一緒だけれど、作品に因んでコスプレをしてくれるとイイナ。もちろん、「コスプレなんて恥ずかしい…」という方は作品だけでも大丈夫。詳しくは[スゴ本オフ忘年会「コスプレで今年のイチオシなスゴ本を語ろう!」]からどうぞ。どんな「今年の一番」が集まるか?お楽しみに~


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