萌えで読みとく名作文学案内
ようするに、エロリ・ポルノ・恋愛小説なんだが、「萌え」という切り口から見ると、新鮮かつ懐かしい気分になる。オタク、ストーカー、2ch、ギャルゲ、電車男などのアキバ語を駆使しつつ、川端、三島、太宰、谷崎といったブンゴー達を調理する。
「文豪の作品だからといって、必ずしも難解なわけではない。『萌え』ながら読めるよ」というメッセージは腑に落ちるし、萌えポイントの解説は正確無比。だけでなく、作品をちゃんと「読め」るようアシストしてくれる。これまでさんざん誤読されてきた「伊豆の踊子」が、あけすけといってもいいぐらい解説されているので噴いた。
さらに、「萌え」というあやふやなテーマを、作品のバラエティから再定義しようとする。つまりこうだ。一口に「萌え」といっても、様々な種類がある。ロリ萌えやショタ萌えといったスタンダードから、ヤンデレ萌え、猟奇萌えといった辺境までさらおうとしている。古今東西24作品の「萌え」シチュ・属性を紹介することで、「萌えとは何か」という根源的な質問にも迫っている。
キワモノを追うだけでなく、ちゃんとした(?)考察もある。その見せかたが上手だね。たとえば、谷崎潤一郎「瘋癲老人日記」の紹介はこう始まる――
残念なことに、紙数の都合でもれている逸品もある。曰く、「これが入るなら、これも引用してくれい」というやつ。谷崎「痴人の愛」が育てゲーならば、大御所「源氏」の若紫の垣間見(要するに覗き)の場面も入れてほしかった。究極の玩具としての少女なら、ドスト「悪霊」のスタヴローギンの告白のXXXシーンが欲しい。それでも、主なょぅι゛ょ小説は言及されているので、良い入門書になる(ょぅι゛ょ小説の完全なリストは[ここ])。「萌え」は若者だけにわきおこる感情ではありません。感情というより、どちらかといえば、体質に近いもので、萌え体質の人は生まれてから死ぬまでになにかに萌えているのです。そのいい例が谷崎大先生の「瘋癲老人日記」です。今、アキバあたりで「萌え~」などといっている人たちが五十年後、どんな人生を送り、どんな死に方をするのか、そのひとつの例を示しているといえるでしょう。
ソソられるリストの一部をご紹介。最初の2つは未読なので楽しみー
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