JAL/JASシステム統合
別名Dream-Jプロジェクト。2001/11発表され、2004/4サービス開始した。JAL/JAS経営統合によるシステム統合のため、システムコストや運用コストよりも、社会的に見える部分での「統合」を目指したものと思われ。この記事ではDream-Jの概要とフェーズ1.5の問題点を指摘する。
Dream-J概要
・目的:JAL/JAS経営統合にともなうシステム統合
・期間:2001/11-2004/4 (2年6ヶ月)
・工数:1万2000人月
・開発費用:130億円(日経コンピュータ誌推定)
【フェーズ1】主に法的手続き。外宣的活動。2002/9持ち株会社の設立。JALとJASが現在の形のままで、その持株会社の子会社化。
【フェーズ2】JAL/JASシステム統合。JAL←JASの片寄せ統合。対象システムは以下の通り(カッコ内は略称)。
- 統制システム運航管理システム(JALFOS)
- 顧客管理システム(VIPS)
- Webサイト(JOHN)
- 予約・発券システム(JALCOM)
- 国内線チェックシステム(JALPAS/D-III)
- 運航乗務員システム(J-Crew)←ワロタ。J-Crewつったらこれでしょーに
- 客室乗務員システム(Carol)
- 整備システム(JALMACS)
- 貨物システム(JALDOM)
- 経営システム(収入管理、人事、会計)
- JAS併存:運航乗務員システム(CSS)
- JAS併存:客室乗務員システム(SSS)
- JAS併存:整備システム
IBMマスタスケジュールの画像を見ると、どんだけタイヘンだったかよく分かる。
経営的には「吸収合併ではない」とアナウンスしていたが、システムを見る限りほぼJALが飲み込む形。対外的プレゼンスよりも、開発側の立場を考えたシステム統合形態といえる。
システム開発としては外部インタフェース部分、プロジェクト全体としてはインフラ構築の部分に対し、最も注力していたものと思われ。再編俯瞰図はIBMの日本の空をつなぐDream Jプロジェクトを見ると良く分かる
フェーズ1.5の問題点
当初はフェーズ1と2の二段階で統合化を図ろうとしていたが、突然「フェーズ1.5」なるものが出てくる。2003/4までに以下の施策を実装せよという「経営判断」が降ってきた。
a. 国内幹線網をJAL、国内支線網をJASに棲み分ける
b. JAL/JAS機材管理の受委託
前年の記者会見で、両社長が「グランドハンドリング(*1)の連携」や、(シェア拡大の批判をかわすため)「路線すりあわせ」と述べていたのがこういう形でやってくるなんて…
これらは、フェーズ2が実現すれば必要の無くなる実装であるにもかかわらず前倒しで対応せよとのお言葉。理由は「顧客満足度を上げるため」とあるがホンマか?
フェーズ2の工程は既に走っているため、別ラインでスケジュール化が必要だし、人材は別にかき集めてきて、要件定義はフェーズ2のステークホルダーと同じ人からまとめる必要がでてくる… フェーズ2から抜いたらそっちが破綻するし、RFPがまとまらなければフェーズ1.5が転ぶことになる←対外プレゼンスは悪化するだろうね
結果的にうまくいったからよかったものの(IBMエライ!)、プロジェクトを破綻させる要求であることは確か。プロジェクト間の優先順位を決め、時には変えることをプログラムマネジメントと呼ぶ。メリット・デメリットは考えた上での「プログラムマネジメント」であったのか理解に苦しむ。ホントに1.5が必要だったの?
「足なんて飾りです。偉い人にはそれがわからんのです」(*2)
注*1 航空機地上支援作業。到着した航空機を50分以内に出発するために、貨物の搭載、燃料補給、航空機を誘導、牽引、プッシュバック、機内清掃等を行う作業
注*2 企業戦士ガンダムが面白い…っつか泣ける
参考
日経bizTech No.002「事例から読み解くプロジェクトの極意」
日経コンピュータJAL/JASシステム統合 成功への航跡
IBM日本の空をつなぐDream Jプロジェクト
日本航空機長組合日本航空・日本エアシステム 共同社長記者会見 議事録 2001/11/12
JITJALインフォテックのプロジェクトマネジメント
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コメント
はじめまして。フェーズ1.5についての検索でこちらが出てきたので、トラックバックさせていただきました。よろしくお願い致します。
投稿: ひな | 2005.01.30 23:49