『図書館戦争』からのスピンアウトといったらこちらのほうが先なのでは?とか思ったりして。
有川センセの『図書館』シリーズの登場キャラ、小牧教官が年下の気になる異性、毬江ちゃんへオススメした本……というあちらでの位置づけの本。
毬江ちゃんにオーバーラップさせる目的であるからして、当然こちらの本でのヒロイン ひとみさんも聴覚障害者(中途失聴者)であります。
そんな彼女が偶然の出会いから始まる恋に戸惑いながらも強く受け止めていくお話。
スピンアウトという作品の出自を除けば、これまた真っ直ぐな恋愛話かなーと。
ひとみさんの設定が設定だけに、ふたり直に言葉を交わして情を重ねるというわけにはいかず、そのやりとりは主にメールの文章を介するワケですけれど。
このメールで気持ちを伝え合うっていう仕掛けが現代の恋愛書簡よろしくテンポ良く思わせるのですよねー。
そこにあるのはふたりだけの世界といいますかー。
全体の文章量はさほど多くは無いなかで、この仕掛けこそが物語を成立させるのに必要な情報を効率よく選別させているのではないかなーと。
世間の悪意あるものは自信のなさそうな者を見抜いて寄ってくるのだ。 中途失聴者であるひとみさんが自信を持てずにいたのはもちろん想像できますけれど、そんな彼女に限らず自信の無さっていうのは多くの人にあてはまることであって。
自分なんて……と。
でも自分が自信を持てないからといって、そんな自分でも信じてくれる人の「自信」を勝手に挫くことはどれだけ失礼なのかをおぼえるべきだよなーと思ったりして。
むしろ自分ひとりでは自信を持てないからこそ、ほかの誰かが認めてくれることが必要なのだと。
それは甘えではなくて弱さであって、弱いからこそ人は支え合うのでしょ?ってことでー。
弱い人間がふたりになっても、世間の悪意の前にはまだまだ弱いままなのかもしれないけれど、だからといって支え合うことを後悔するようなことはしたくないなと思うのですよ。
傷ついて傷ついて、それでも結局は負けてしまうのかもしれないけれど。
それでも、一緒に生きていく、一緒に生きたいと願った気持ちまでを否定してはいけないと。
短いながらも想いが詰まっていた一冊でした。
――でもさー。
いろいろ言い訳してましたけれど、この本を毬江ちゃんに贈ったってことは、気持ち、もろバレじゃないの小牧教官!(笑)
毬江ちゃんを相手にしておいて作中のふたりに自分たちを重ねてはいないなんて言い訳、通用するものか!
ちうか、この内容からすると、むしろ婉曲な告白ですよ。
直接的な言葉は言わずにすませて、相手には気付いてもらうっちう手法。
小牧教官らしいっちゃあらしいのですけれど、ズルイなぁ(^-^;)。