うーわーっ!
直木賞がどれだけ権威がある賞なのか知りませんけれど、もし「桜庭一樹の著書のなかで最高峰の賞を与えるに値する作品を選べ」と言われたなら、わたしは間違いなくこの作品を選ぶわ。
他の作家の作品と比べるなんて無為なことをせず、桜庭一樹という人が生み出した作品群の中で評価するなら、今作は間違いなくチャンピオン。
地方都市を舞台にした作品が多かったセンセですけれど、今作ではその地方の囲みから逃げ出してきたふたりを主人公に、逃亡者としての孤独?みたいなものが感じられて。
勝手な憶測ですけれど、桜庭センセにとっての新境地というか殻を破った作品なのではないかなーと思うのですよ。
『赤朽葉家の伝説』や『青年のための読書クラブ』『ブルースカイ』などで時代を追う手法については幾度か手にしたことのあるセンセですけれど、今作では逆、時代をさかのぼることを通して問題の発端を探っていくあたりも新鮮。
すでに現代で主人公たちが置かれている状況は読み手に提示されていて、その真相近づいていく流れはサスペンス以上にサスペンス的。
新しいステージに桜庭センセは立たれたなぁ……と嬉しくも寂しく思いつつも、これまでの「桜庭節」らしきものもそこかしこに見ることが出来て安心感もあったりして。
主人公の「腐野花」なんて名前、嗚呼!って思うわ(笑)。
そのほかにも思春期の女の子が殺人を体験することや、近親相姦、欠損家族など、社会的タブーこれでもか!って挑んでいるんですよねー。
これをセンセーショナルな話題作りで浅薄なだけだと見る向きももちろんあるでしょうけれど、わたしはそうではないと感じたりして。
これらタブーについて「なぜタブーであるのか?」という問いかけを行っているように思うのですよー。
少なくとも、桜庭センセはこれらタブーを否定的な立場で描いたことはなかったような気がします。
血のつながりの無い「真っ当な異性」と愛し合った人だけが幸せになれるのか?
父親と母親にそろって育てられた子供だけが健全であるのか?
幸せとか正しさとか、そーゆーのはタブーに含まれる「状況」とは完全に因果関係になっているとは言い難いのだと。
もちろん禁忌を犯したことに対して「仕方がなかった」という言い訳はしていません。
社会がそれを認めていないのであれば、社会から守られることを期待してはいけません。
そうした覚悟を桜庭センセが描く人物たちは持っているのではないかなーと。
……そんな社会に静かに背を向ける姿勢が、逃亡者のようなイメージを与えてくるのかも。
今作の主人公、花と淳悟の深い深い結びつき、つながり、絆は破滅的でもあり狂気的でもあり。
そこまで強い関係を結ばれては社会が成り立たないからこそ、社会はそれをタブーにして抑制しているのではないかなー……とか思ってしまうわ。
タブーを全て否とする気はわたしには無いですけれど、状況と感情と結果は切り離して考えたいなーと。
それと、そのことを考えさせてくれる桜庭センセの作品を応援し続けていきたいなーと。
うん。
これは文句なしだわ。