不治の怪我を負った少年が、未来の医療に希望を託してコールドスリープに入り、次に目覚めたときは数百年の時間が経っていたという。
荒廃した地にひとりぼっちの少年が、仲間を求め、この時代で生きていく意味を探すファンタジー。
読み始めはですね、人の顔色をうかがいながら生きつつ、しかし弱い者には優越感を抱いている少年、臨のことが好きになれなくて流し読み感覚だったのですが。
しかし彼の立場や傷ついた心などがわかってくるにつれて、少しずつ感情移入できたのですよ。
彼が表すような八方美人的な態度はわたしもおぼえがありますし、もっと自分を見て欲しいと願う気持ちだって誰にもあるものだと。
それを中学生の彼はトラブルを起こさないように感情を抑制して生きてきているのですから、褒めることではないにしても同情できてしまうっちう……。
子どもらしい優しさであると。
そんな彼が不慮の事故で冷凍睡眠を受けることになって、そして目覚めると数百年後だった……という場面転換の押し切り方がスゴイ。
カバー折り返しで冷凍睡眠のことは書かれていたので既知だったのですけれど、ここまで来るのにもう半分くらいのページを使ってしまっているのですよ!?
どういうページ配分なのかと(笑)。
んでも目覚めてからの臨は、それまでの臨と違ってさらに立派だったと思います。
むしろ、ひとりになってしまったという状況が彼をそこまで引き上げたカンジ。
彼はやぱし「出来る子」なんです。
でもって、傷ついても立ち上がる少年を応援しないはずがないですわ!
流されるままに生きて、将来の夢すら誰かに求められていたことを勘違いしていただけの過去の自分。
いまは誰に言われるまでもなく、自分で生き方を見つけなければいけなくなって。
現状にパニックを起こさず、きちんと理解できるあたりが臨のすごさだなー。
少年らしからぬ……って評されるかもだけれど、彼の少年らしさはもうすでに十分傷ついて、その判断を下すころには「成長」していたってことなんだと思うのです。
そんな臨が目覚めた病院で、彼のことを待ち続けた看護師ロボットのひまわりさん。
もー、彼女ってば、ヒロイン過ぎてこまります。
看護師ロボットってだけでアレなのに、さらに「ドジッ子」「お姉さん」って属性がつくんですよ!
なにそれ!!?
トリプルリーチ!!!(笑)
まさかこれほど強力なキャラクターが登場するとは思いませんでしたよ……。
これだからファンタジーはあなどれない……。
臨とひまわり、そしてもう1体、子守りロボットのテディ。
荒廃した大地の上で交わされる3人の温かいやりとりが胸に迫るのですよー。
どんなことがあっても、どういう状況であっても、優しさは絆を生むのですよ。
だから、あのラストの奇跡につながるのだと。
痛ましい出来事が繰り返されて、世界は死んでしまったかもしれないけれど。
でも臨は生きているし、生き続けなければいけない。
旅立つ少年がいて、見送る人がいて、待っている人がいる。
世界は死んでいても、終わってはいないということ。
ここからまた世界は始まるのだなぁ……と感じられるステキなラストでした。
ここで綺麗に結ばれている……ともとれるのですが、どうなんでしょう?
世界を巡ってきた臨が、再びひまわりとテディに会うシーン、見たいです。
次巻、刊行されてくれるといいなぁ……と思ったら、秋頃刊行予定とか。
これは楽しみに待つしか!!!