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 脇が固まってきて俄然面白くなってまいりました!
 といっても鮮やかになってきたのは女性陣のほうばかりで。
 柴崎しかり、初登場の毬江ちゃんしかり。

 男性陣のほうはさー、真面目でバカでラブリーな方向に行っちゃって。
 あの小牧教官ですら、その行動理念の軸が見えてくれば堂上教官と同レベルかそれ以上のシンプルなお馬鹿さんですよ?

 毬江の意志を無視して、毬江の感性を否定する論法には、誰が決して膝を屈するものか。
 あの子が自由に本を楽しむために。そのために、毬江に対してだけ正義の味方でいられたら、
 それ以外のことはどうだっていいのだ――


 飄然とした中に、どんだけパッション詰め込んでいたんですか、この人は!
 世界を見る基準が「毬江ちゃんとそれ以外」なんて!(≧▽≦)
 そんな愛すべきお馬鹿さんに3回も失恋して4回目の恋を成就させようとしている毬江ちゃんはスゴイ。
 恋するオンナノコは、ほんっとパワーがあるわー。

 有川センセの筆致がまだ、そんな毬江ちゃんの心情と、彼女を応援する郁と柴崎の憤りを見事に書ききってるんですよねぇ。
 このあたりが今巻から面白くなってきたトコロかも。


 柴崎にもいろいろありましたけれど、まあ、美人の恋愛は難しいってことでー。
 んでも今回は恋心に惑う様より、郁をはじめとした仲間を陥れられたことに対して見せた怒りが鮮烈すぎて。

「残念ながら、あんたたちあたしの逆鱗に触れたのよ」

 こ……こわー(TДT)。
 郁のように感情を表に出さない分、その下に流れる強い怒りが……。
 自分のせいで仲間が傷つけられたというのに、このときの柴崎には表だって仲間を助ける行動を起こすには制約があったのですよね。
 そのやるせなさがまた怒りを倍増させているっちう……。
 そうした「義」を持つところを見せられたら、彼女への評価も変わりますって!
 イイ女!(≧△≦)



 物語としては敵がハッキリしてきたカンジ?
 誰ひとり固有名が出てこない良化委員会なんてヤラレキャラもいいとこでしたし。
 倒すべき、乗り越えるべき相手というのは、いつの世も身内から輩出されるんですねぇ……。
 手塚兄の言うことはもしかしたら一理あるのかもしれないけれど、どんな理屈にだって一理くらいあるわさ。
 でもやっぱり気に入らないのは、自分は傷つかないところでのうのうとしているところなんですよねぇ。

「お膳立てされた舞台で戦えるのはお話の中の正義の味方だけよ。現実じゃ誰も露払いなんかしてくれないんだから。泥被る覚悟がないんなら正義の味方なんか辞めちゃえば?」

 という柴崎の言葉。
 言ってみれば手塚兄はこの「お話の中の正義の味方」なのかなーと。
 綺麗な戦いを成し得たい。
 そしてもちろん綺麗なことをすれば綺麗な勝利が待っていると信じて疑っていない。
 その純真さが気持ち悪い。
 夢を見る歳でも無いでしょうに。
 ……あ、違う。
 夢はいつまでも見続けていい。
 でも大人になるってことは現実も見ることであるから。
 毬江ちゃんですらツライ現実と向き合って、夢をかなえるために大人になろうとしているのに。

「汚名を着てまで守りたいものがあるから、図書隊員は隊と一緒に泥を被るんだと思う」

 そんな柴崎の言葉に対して、郁の答え。
 きれい事では済まされない道を歩むのはとてもツライこと。
 でも、一緒に歩んでくれる仲間がいるなら、そのつらさも支え合って歩んでいける。
 手塚兄の言動からは、そんな仲間を思いやる姿が見えてこないワケで。
 だからどんなにきらびやかな文言であっても、どうにも軽く、安く、聞こえてくるのかも。


 やっぱりね、理屈の正しさなんかより、そこに自分以外の誰かの倖せを願う気持ちがあるかどうかが大切なのだと思うのよーん。


 アーサー・C・クラーク氏が亡くなられたそうで……。
 氏の作品と比べると歩みは遅々としていますけれど科学はここまで進歩してきました。
 やがては氏が見た世界にまで辿り着ける日も来るでしょう。
 いつかの未来で待っていてください。
 ご冥福をお祈りいたします。
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