戦争をはじめたい人は戦場には決して来ず、戦争をはじめたくない人こそが戦場に立ってしまう……というお話。
あるいは、ひとは自分が望むモノしか理解しないという。
PCゲーム『群青の空を越えて』より時間を少し巻き戻した、本編に対してのプレストーリーな位置づけの今作。
本編を知っているからこそ今作の流れは胸に迫るモノがあるっちう。
どんなに努力を重ねても、あの戦争は起こってしまうのだという無力感と閉塞感。
このとき動いていた人たちの「戦争回避」への思いが本物だと感じられるだけに、それが成されなかったことが残念で残念で。
円経済圏を掲げた萩野憲二は人類の倖せを願っていたハズなのに。
その願いを都合良くねじ曲げた人がいて。
でも、そんな扇動者は戦いの場にはけっして現れず、自らはミサイルも銃弾も届かない安全な場所で戦争の必要性を説いたりして。
あーもー、やるせないなぁ……。
「己を捨て、民意の代弁者となるのが政治家だ。好き勝手に、無責任に自分の意見を口にしたければジャーナリストにでもなるがいい! 主義主張を口にせず、ひたすら民意に盲従してきたからこそ、我々は常に政権与党たり得たのだ。どうしてそれが理解できん!」
(中略)
「良い政治と皆が望む政治は異なる。民主主義を信じるなら、どちらを選ぶか間違ってはいかん」
うっひゃー、辛辣ー、でもって毒舌だわー。
ただ、まぁ、これが現実なのかもって思わせられるだけの真実味を感じたり。
民主主義はただのシステムであって、そこに善悪の別は組み込まれていないのよ、と。
その別はシステムを扱う側の「人間」にあるのだと。
今作は今作で人間の業を描いていたと思うのですけれど、これで物語が終わってしまうのだとしたら悲しすぎると思うのです。
人は愚かであるかもしれない。
でも、人は愚かさから学ぶことのできる存在でもあると、この物語に続くゲーム本編は教えてくれます。
そこまで進めてみないと、諒が、美樹が、あの空に散っていった生徒たちが悲しすぎます。
あー……。
またプレイしたくなったー。
そう思わせるノベライズは、勝ち、ですねぇ(^_^;)。