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まばたき5回の桃源郷

「九州の食卓」今月号の取材で大分に向かったのは5月初めでした。
担当編集女史の運転する、
廃車となる日もそう遠くはないようなボロボロ車で
阿蘇久住の山並みを越えました。
エンジンが途中で止まったら(これがよくある)怖いので高速道路は避け、
下の道路をひたすら走ったのです。
地震の影響で通行止めの区域もまだあって、
迂回ルートを辿りながらの熊本市内から大分市内まで、
所要時間3時間半のハードな旅でした。

でもそのおかげで素敵な光景に出会えたのです。
それは国道442号線を走っているときのこと。
国道たって山道というほうがぴったりの、
対向車とすれ違うのも冷や汗ものの細い道路で、
上って下って、右に左に、
片時も平坦なところなんてないし、
どんどん道幅は細まっていく感があり、
「この道で大丈夫かいな?」と不安になりかけたあたりで、
どこからともなくせせらぎの涼しげな音が聞こえてきました。
それから風に乗っていい匂いもしてきて、
ぽつぽつとある家の庭先にはきれいな花が咲き乱れている・・・。
え?ここ、どこ?
あれ?とか、えっ?とか、
きょろきょろしているうちに車は進み、
すぐにあたりは平凡な山景色に変わってしまった。
その間“まばたき5回くらい”でしたかね。

あの一角は何だったのか。
気になったので翌日の戻りのとき立ち寄ることにしました。
確か大分に入る1時間くらい前のところだったよね、と
元来た道を豊後大野、竹田市方面へ辿ります。
野津原、河津原、下山、石合、温見・・・
そして現れた“あの一角”。
やっぱりあった“桃源郷”。
車を止めて散策しました。
そこは公園でも休憩所でもないのでした。
一軒のお宅がせせらぎを跨いで作ったお庭らしいのです。

“あの一角”は静かな山村風景から始まります。
山の中の静かな農村


温見を過ぎたあたりから442号線に沿って小さな清流が登場する。
せせらぎが聴こえてきた


現れる家々の垣根には花が咲き乱れています。
白いのは白藤、黄色いのは木香薔薇。
きれいな生け垣


名前のわからない花々があたり一面に咲いていました。
小さな花も咲いている


見事な白藤の垣根の家にはたぶん妖しい美女が住んでいるのでしょう。
白藤だった


そのお宅の裏山は花盛りでした。手前には池と水車が配置されています。
山は花盛り


清流の上を渡した白藤のトンネルの先には東屋まである。
さすがにそこまで分け入る勇気はなくてトンネルの途中まで。
白藤美女になっているのは長距離運転にヘコタレ気味の編集女史です。
スナップを取っていると辺り一帯に漂う芳香、
頭がくらくらしてきましたね。
藤棚まである



公園でもなく休憩所でもなく、
すべてはこのお宅の庭仕事でした。
行き交う人の目を楽しませようと、
喜んでもらおうと、
たぶんそういうお気持ちで丹精込められたのだと思います。
はい、じゅうぶん楽しませていただきました。
機会があればまたこの時期伺いたいと思います。
このお宅の方の手造り


この区域は県の自然公園になっているようでした。
立て看板が


清流に送られて一路熊本へ。
国道442号線とはこの先の朝地町でお別れします。
清流ながれる



熊本に帰り、
ブログにこのことを書こうかとしているうちに、
豊後大野の朝地町、綿田地区のだんだん畑一帯で
大規模な地割れが発生してしまいました。
ひと月経った今でも地割れは進行中で、
避難所生活の方々もまだ多くおられるとか。
そういうとき、こんな呑気な記事を書いていいものかと
迷ってどんどん日が経ちましたが、
あのお宅へまばたき5回の桃源郷を
プレゼントいただいたお礼を述べたくあえて記すことにしました。
偶然この記事をご覧のみなさま、
もし来年の4月後半から5月半ば、
国道442号線を通過されることがありましたら
温見あたりの桃源郷をぜひご堪能下さいますよう。

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