恵比寿のモーヴに里帰り
雑誌『クウネル』(7月20日発売号)の取材で
隆ちゃん(ミュージシャンの高砂隆太郎さん)に会いに鎌倉へ。
鎌倉に行った以上は東京・恵比寿まで足を延ばさなければ、
落ち着かないし義理も立たぬ、ということで、
長い取材が終わったあと
隆ちゃんとJR湘南新宿ラインに乗って恵比寿へ向かいました。
(写真を撮ってくれたのはクウネル編集長の戸田史さんです)
土曜日の夕方のせいか鎌倉駅が異常に混んでいてびっくりです。
そう言えば来るときも、
一つ手前の北鎌倉駅で出口に向かう長〜〜〜い列を見て驚いたのでした。
みなさん「紫陽花寺」に行かれるのだとか。
紫陽花真っ盛りの時期だったのです(熊本より2週間くらい遅いんですね、関東は)。
紫陽花は好きな花ですが、
紫陽花寺は紫陽花より人の数のほうが多いと聞き、
怖ろしくて、
東京に居たときも結局一度も花盛りの時期には行ったことがありません。
鎌倉からおよそ1時間で恵比寿に到着。
「おしゃべりしているとすぐだね」と言うと、
「でも恵比寿で飲んで帰るとなるとけっこう長いよ」と隆ちゃん。
確かにそうね。
遠くに住んでいると帰りの電車がたいへんだね。
私も小金井(東京郊外の町)に住んでいるときは夜の帰宅がつらかった。
隆ちゃんは長年の“年下の友だち”で、
私にバーテンダー修業をさせてくれた恵比寿のBAR「モーヴ」にも、
ときどき・・・というか、たびたび、手伝いに来てくれました。
モーヴのご主人青木さんと3人で箱根まで疑似家族旅行をしたこともあります。
青木さんが父親、私が母親、隆ちゃんが息子という設定で。
親子のような仲なのです。
だから取材を終えて「これからモーヴに行くんだ」と言うと、
自然と「僕も行こうかな」となったわけ。
夕方、鎌倉の自宅から東京へ出るというのは
なかなかにしんどいことですけどね。
去年友だちの娘の結婚式に出るために上京して以来だから
一年ぶりのモーヴです。
坂の途中に地味にあります。
思えばここには40代後半から少なくとも10年間、
バーテンダー修業に通ったのでした。
冬場は住まいから15分くらい走って、
夏場は28分くらい歩いての通勤。
夜の8時から深夜2時まで立ちっぱなしでいたのだから、
まだまだ元気だったんですね。
やあやあやあ、と青木さん。
あいかわらず自前カットの過激なヘアスタイルがかっこいい。
今日のごはん何があるの?
いろいろあるからさ、まかせてよ。
・・・この懐かし嬉しの空気はもはや家族ですね。
東京に住んでいるときは熊本の実家に“里帰り”ができたけれど、
現在はそこに住んでいるのでもう“里帰り”にはなりません。
里にいるとそこは里ではなくなるんですね。
ということは44年間暮らした東京が里かもしれず、
しかしもう東京に家はなく、
里と呼ぶに値するのは10数年通ったここだけです。
「モーヴに行くよ」と言っていたので
仲良しの写真家三浦順光さんが来てくれていました。
しばらくして
やはり仲良しの編集者コミナトくんが来て、
再会を祝しみんなでシャンパン乾杯!
順ちゃんの知り合いの農家さんが収穫したとうもろこしを
新鮮なので生で囓りました。
甘くてジューシーで美味しかった。
「えーとね、最初にフェンネルとチコリのサラダ出すよ。
そのあと浅蜊と空豆と長葱のポタージュが行くよ。
それから白イカのフリットにパクチーを思いっきり乗せたのが出るけど、いい?」
と今夜のこんだてを説明する青木さん。
恵比寿に来る前からハンバーグを食べたいと思っていたので
「今日はハンバーグないの?」と聞くと
「ハンバーグはないけど、でもほかにいろいろあるからさ」。
いろいろあるからさ・・・
青木さんの料理に飢えていた人間には神様のようなお言葉です。
ここは基本BARなのですが、
彼の作る料理のファンが多くてついついビストロ化してしまいます。
決まったメニューはなく、
その日そのとき手に入った材料で作る
イタリアンのようなフレンチのような一期一会の創作料理。
ワイルドだけど繊細でもあるそれら美味しいものの数々は、
突発的組み合わせゆえに本人が忘れてしまうので、
食べる側が舌と頭にくっきり刻み込み、
「青木さん、今度あれお願い。
あれよ、ボーチ・ド・エッグを赤ワインでさっと煮込んだやつ」
などときっちり注文する必要があるにはあるわけなのですが。
最初に出てきたフェンネルとチコリのサラダ、
苦味が利いてイケてました。
しかし何といってもこれでしょう、浅蜊と空豆と長葱のポタージュ。
あまりの美味しさに撮影するのを忘れたのですが、
小さめのココット皿に熱々で出てきました。
浅蜊の海の味に空豆のもこもこ感と長葱のじゅるじゅる感が
絶妙に合わさって、
胃に心に、やさしく滋味深く浸透していきます。
こんな一皿出されたら、
「青木さん、年取ってもずーっと仲良しでいようね」と言わずにはおられません。
次に出てきた“白イカのフリットにパクチー思いっきり乗っけ”。
さすが青木さん、私をよくご存じで、
イカのフリットもパクチーもヨシモト好みベスト10内の組み合わせ。
イカのフリットの香ばしさとパクチーの青臭さの調和には、
ふわふわの羽布団とピシッとアイロンの利いたシーツの間に滑り込んだときの
極上の喜びに似た幸福感がありました。
写真がヘタで美味しそうに見えませんが、
これも椅子から転げ落ちそうにグッとくる一品です。
このあと桜鯛のマリネが出て、
魚が苦手な隆ちゃんがジトッとしているので引き受けて食べているうち、
何たること、
早くもお腹がいっぱいに!!!
まだまだ青木さんの料理を食べたい私としては焦ります。
胃がこなれるまで食べるのは小休止して
モルト・ウイスキーで気分転換してようかと思っていると、
青木さんが赤ワインをどくどくと注ぎながら
「次は肉が行くよッ、肉がッ」と。
はい、きましたよ、お肉です。
ラム肉のメルゲーゼってお料理らしい。
お肉は入らないなあ・・・しかもラム肉・・・苦手だなあ・・・
と思っていると青木さん、
「でも臭くないよ。っていうか、チャービル、タイム、パセリをたっぷり入れてるからね、
ハーブの臭さが勝って全然ラム臭さはないよ。クスクスと一緒に食べるんだよ、
キミ好きでしょ、クスクス」。
一皿に隆ちゃん、戸田さん、私の3人分が乗っかっていました。
うん、食べてみるとその通り、羊臭さはわずかなもので、
あとは香草類の匂いとクスクスのまったりした口触りがいい感じです。
けれどやはり私にはヘビイ過ぎた、
半分以上、肉食の隆ちゃんにまかせました。
そのあと鰯のトマトソースが来て、
次にきしめんに似たパスタが出て、今夜のスペシャルメニューは上がり。
パスタは、一晩かけて生クリームで戻したポルチーニと
炒めたベーコン、白ワインをからめたまろやかな味でした。
「作りすぎだよ!」と叫びながらも、
せっかく作ってくれたのだからと完食を目指す我々。
特に、
青木さんの料理はまたしばらく食べられない状況にある私は
無理矢理腹に詰め込んで、
嬉しいやら苦しいやらで大変なことになりました。
そして最後に出てきたのが
極上のポルトワインをなみなみと注いだメロンのデザートです。
これはバーテンダー修行中もたびたび口にした幸せの一品。
お客さんの注文が一段落しホッとした頃合いを見て
青木さんが「食べよう」と出してくれます。
半分に切ったのを2,3人で食べまわします。
なぜか1人で食べるよりみんなでシェアするほうが美味しく感じます。
美食でどろどろだった口の中がさらりと清められ、
ポルトの深い渋みがメロンに大人の味わいを与えています。
お酒の締めにも最適なデザートです。
食べ終わりホッと一息ついて青木さんと談笑する
左が隆ちゃん、右がヨシモト。
今度の秋に、
青木さん、隆ちゃん、の2人で熊本に来るよう誘っているのです。
3本指を立て「最低3泊4日はしないといけないよ」と言っております。
かくして楽しい里帰りの一夜が更けてゆきました。
当然ながら隆ちゃん帰りの電車を逃し青木さんちに泊まることに。
「ふふん、もう電車ないね」
という隆ちゃんの声が嬉しそうに聞こえたのですが空耳かな。
隆ちゃん(ミュージシャンの高砂隆太郎さん)に会いに鎌倉へ。
鎌倉に行った以上は東京・恵比寿まで足を延ばさなければ、
落ち着かないし義理も立たぬ、ということで、
長い取材が終わったあと
隆ちゃんとJR湘南新宿ラインに乗って恵比寿へ向かいました。
(写真を撮ってくれたのはクウネル編集長の戸田史さんです)
土曜日の夕方のせいか鎌倉駅が異常に混んでいてびっくりです。
そう言えば来るときも、
一つ手前の北鎌倉駅で出口に向かう長〜〜〜い列を見て驚いたのでした。
みなさん「紫陽花寺」に行かれるのだとか。
紫陽花真っ盛りの時期だったのです(熊本より2週間くらい遅いんですね、関東は)。
紫陽花は好きな花ですが、
紫陽花寺は紫陽花より人の数のほうが多いと聞き、
怖ろしくて、
東京に居たときも結局一度も花盛りの時期には行ったことがありません。
鎌倉からおよそ1時間で恵比寿に到着。
「おしゃべりしているとすぐだね」と言うと、
「でも恵比寿で飲んで帰るとなるとけっこう長いよ」と隆ちゃん。
確かにそうね。
遠くに住んでいると帰りの電車がたいへんだね。
私も小金井(東京郊外の町)に住んでいるときは夜の帰宅がつらかった。
隆ちゃんは長年の“年下の友だち”で、
私にバーテンダー修業をさせてくれた恵比寿のBAR「モーヴ」にも、
ときどき・・・というか、たびたび、手伝いに来てくれました。
モーヴのご主人青木さんと3人で箱根まで疑似家族旅行をしたこともあります。
青木さんが父親、私が母親、隆ちゃんが息子という設定で。
親子のような仲なのです。
だから取材を終えて「これからモーヴに行くんだ」と言うと、
自然と「僕も行こうかな」となったわけ。
夕方、鎌倉の自宅から東京へ出るというのは
なかなかにしんどいことですけどね。
去年友だちの娘の結婚式に出るために上京して以来だから
一年ぶりのモーヴです。
坂の途中に地味にあります。
思えばここには40代後半から少なくとも10年間、
バーテンダー修業に通ったのでした。
冬場は住まいから15分くらい走って、
夏場は28分くらい歩いての通勤。
夜の8時から深夜2時まで立ちっぱなしでいたのだから、
まだまだ元気だったんですね。
やあやあやあ、と青木さん。
あいかわらず自前カットの過激なヘアスタイルがかっこいい。
今日のごはん何があるの?
いろいろあるからさ、まかせてよ。
・・・この懐かし嬉しの空気はもはや家族ですね。
東京に住んでいるときは熊本の実家に“里帰り”ができたけれど、
現在はそこに住んでいるのでもう“里帰り”にはなりません。
里にいるとそこは里ではなくなるんですね。
ということは44年間暮らした東京が里かもしれず、
しかしもう東京に家はなく、
里と呼ぶに値するのは10数年通ったここだけです。
「モーヴに行くよ」と言っていたので
仲良しの写真家三浦順光さんが来てくれていました。
しばらくして
やはり仲良しの編集者コミナトくんが来て、
再会を祝しみんなでシャンパン乾杯!
順ちゃんの知り合いの農家さんが収穫したとうもろこしを
新鮮なので生で囓りました。
甘くてジューシーで美味しかった。
「えーとね、最初にフェンネルとチコリのサラダ出すよ。
そのあと浅蜊と空豆と長葱のポタージュが行くよ。
それから白イカのフリットにパクチーを思いっきり乗せたのが出るけど、いい?」
と今夜のこんだてを説明する青木さん。
恵比寿に来る前からハンバーグを食べたいと思っていたので
「今日はハンバーグないの?」と聞くと
「ハンバーグはないけど、でもほかにいろいろあるからさ」。
いろいろあるからさ・・・
青木さんの料理に飢えていた人間には神様のようなお言葉です。
ここは基本BARなのですが、
彼の作る料理のファンが多くてついついビストロ化してしまいます。
決まったメニューはなく、
その日そのとき手に入った材料で作る
イタリアンのようなフレンチのような一期一会の創作料理。
ワイルドだけど繊細でもあるそれら美味しいものの数々は、
突発的組み合わせゆえに本人が忘れてしまうので、
食べる側が舌と頭にくっきり刻み込み、
「青木さん、今度あれお願い。
あれよ、ボーチ・ド・エッグを赤ワインでさっと煮込んだやつ」
などときっちり注文する必要があるにはあるわけなのですが。
最初に出てきたフェンネルとチコリのサラダ、
苦味が利いてイケてました。
しかし何といってもこれでしょう、浅蜊と空豆と長葱のポタージュ。
あまりの美味しさに撮影するのを忘れたのですが、
小さめのココット皿に熱々で出てきました。
浅蜊の海の味に空豆のもこもこ感と長葱のじゅるじゅる感が
絶妙に合わさって、
胃に心に、やさしく滋味深く浸透していきます。
こんな一皿出されたら、
「青木さん、年取ってもずーっと仲良しでいようね」と言わずにはおられません。
次に出てきた“白イカのフリットにパクチー思いっきり乗っけ”。
さすが青木さん、私をよくご存じで、
イカのフリットもパクチーもヨシモト好みベスト10内の組み合わせ。
イカのフリットの香ばしさとパクチーの青臭さの調和には、
ふわふわの羽布団とピシッとアイロンの利いたシーツの間に滑り込んだときの
極上の喜びに似た幸福感がありました。
写真がヘタで美味しそうに見えませんが、
これも椅子から転げ落ちそうにグッとくる一品です。
このあと桜鯛のマリネが出て、
魚が苦手な隆ちゃんがジトッとしているので引き受けて食べているうち、
何たること、
早くもお腹がいっぱいに!!!
まだまだ青木さんの料理を食べたい私としては焦ります。
胃がこなれるまで食べるのは小休止して
モルト・ウイスキーで気分転換してようかと思っていると、
青木さんが赤ワインをどくどくと注ぎながら
「次は肉が行くよッ、肉がッ」と。
はい、きましたよ、お肉です。
ラム肉のメルゲーゼってお料理らしい。
お肉は入らないなあ・・・しかもラム肉・・・苦手だなあ・・・
と思っていると青木さん、
「でも臭くないよ。っていうか、チャービル、タイム、パセリをたっぷり入れてるからね、
ハーブの臭さが勝って全然ラム臭さはないよ。クスクスと一緒に食べるんだよ、
キミ好きでしょ、クスクス」。
一皿に隆ちゃん、戸田さん、私の3人分が乗っかっていました。
うん、食べてみるとその通り、羊臭さはわずかなもので、
あとは香草類の匂いとクスクスのまったりした口触りがいい感じです。
けれどやはり私にはヘビイ過ぎた、
半分以上、肉食の隆ちゃんにまかせました。
そのあと鰯のトマトソースが来て、
次にきしめんに似たパスタが出て、今夜のスペシャルメニューは上がり。
パスタは、一晩かけて生クリームで戻したポルチーニと
炒めたベーコン、白ワインをからめたまろやかな味でした。
「作りすぎだよ!」と叫びながらも、
せっかく作ってくれたのだからと完食を目指す我々。
特に、
青木さんの料理はまたしばらく食べられない状況にある私は
無理矢理腹に詰め込んで、
嬉しいやら苦しいやらで大変なことになりました。
そして最後に出てきたのが
極上のポルトワインをなみなみと注いだメロンのデザートです。
これはバーテンダー修行中もたびたび口にした幸せの一品。
お客さんの注文が一段落しホッとした頃合いを見て
青木さんが「食べよう」と出してくれます。
半分に切ったのを2,3人で食べまわします。
なぜか1人で食べるよりみんなでシェアするほうが美味しく感じます。
美食でどろどろだった口の中がさらりと清められ、
ポルトの深い渋みがメロンに大人の味わいを与えています。
お酒の締めにも最適なデザートです。
食べ終わりホッと一息ついて青木さんと談笑する
左が隆ちゃん、右がヨシモト。
今度の秋に、
青木さん、隆ちゃん、の2人で熊本に来るよう誘っているのです。
3本指を立て「最低3泊4日はしないといけないよ」と言っております。
かくして楽しい里帰りの一夜が更けてゆきました。
当然ながら隆ちゃん帰りの電車を逃し青木さんちに泊まることに。
「ふふん、もう電車ないね」
という隆ちゃんの声が嬉しそうに聞こえたのですが空耳かな。
| 未分類 | 01:58 | comments:3 | trackbacks:0 | TOP↑