Mark Turner Meets Gary Foster
Label: Capri Records
Rec. Date: Feb. 2003
Personnel: Mark Turner (ts) [except on 2-2], Gary Foster (as) [except on 1-4], Putter Smith (b), Joe LaBarbera (ds)
Disc 1:
1-1 Background Music [Warne Marsh]
1-2 'Teef [Sylvester "Sonny Red" Kyner]
1-3 Lennie's Pennies [Lennie Tristano]
1-4 Come Rain or Come Shine [Harold Arlen, John Mercer]
DIsc 2:
2-1 317 East 32nd [Lenni Tristano]
2-2 What's New [Bob Haggard, Johnny Burke]
2-3 Subconcious-Lee [Lee Konitz]
このblogでたびたび扱っている贔屓のテナーMark Turnerですが、今回取り上げる「Mark Turner Meets Gary Foster」は、2003年に西海岸で録音されたライブ・アルバムで、録音から16年経った今年になって発表された2枚組CDです。
本作はアルバム・タイトルのとおり、フロントにMark Turnerのテナー、Gary Foster(ゲイリー・フォスター)のアルト、リズムはPutter Smith(パター・スミス)のベースにJoe LaBarbera(ジョー・ラバーベラ)のドラムというピアノレス・カルテットの編成、さらにWarne Marsh(ウォーン・マーシュ)、Lenni Tristano(レニー・トリスターノ)、Lee Konitz(リー・コニッツ)のオリジナル曲が演奏されている・・・ということで、世の中にはそう多くは存在しないであろうWarne Marshの愛好家は、思わず膝を叩いて「これってアレの再演じゃない?!」と叫ぶことになります。
「アレ」というのは他でもないWarne Marshの「Ne Plus Ultra(1969年録音、初出LPはRevelation Records、hatOLOGYからCD再発)」のことで、本作と同様Gary Fosterとのピアノレス・カルテットによる西海岸でのライブ・アルバムです(ジャケット写真は本記事の最下段に掲載)。
この「Ne Plus Ultra」は、Warne Marshとしては比較的録音の少なかった1960年代後半の録音、欠点がないこともないのですが、Warne Marshの個性がこの時点でも輝きを失っていないということを感じさせる演奏で、さらにGary Fosterのコニッツの代役とは言わせないとばかりの力強いプレイも印象に残る愛すべきアルバムでした。
このblogでは「Steeple Chase Jam Session Volume 4」や「Lee Konitz / Parallels」の記事でWarne MarshとMark Turnerの「近さ」について述べてきたところですが、「Ne Plus Ultra」からおよそ四半世紀後、我らがMark Turnerは間違いなくこの「Ne Plus Ultra」を念頭に置いて、ベテランGary Foster(1936年生まれ、Mark Turnerは1965年生まれ)を迎え、師と仰ぐWarne Marshがかつて描いた世界をここに再現した・・・本作「Mark Turner Meets Gary Foster」はそういった趣旨のアルバムです。
前置きが長くなってしまいましたが、実際このアルバムの中身について述べたいことはそう多くはありません。
1-1"Background Music"は1950年代前半からWarne Marshがたびたび取り上げた彼のオリジナル、トリスターノ作の2曲とコニッツ作の"Subconcious-Lee"は「Ne Plus Ultra」の再演、スタンダードの"Come Rain"と"What's New"だって、Warne Marshがそれこそ数えきれないくらい演奏してきた楽曲です。
このように聴く前からメンバーや楽曲を見て想像したとおり、「Ne Plus Ultra」の、さらに言えばコニッツ~マーシュの今世紀版といった趣きのサウンドで、Mark Turnerは彼の心の師でありアイドルであるWarne Marshを一切の迷いなしに、しかも力強く、さらに自分の世界に投影させながらトレースしています。Gary Fosterだって「Ne Plus Ultra」の時と同様に、いやそれ以上に、意志の強さを感じさせる芯の通ったプレイを聴かせてくれ、これは思いがけない収穫でした。
「Ne Plus Ultra」に「欠点がないこともない」と書いたのは「ドラムが弱いなあ」というのがその欠点の一つだったのですが、ここではベテランのジョー・ラバーベラがしっかりツボを押さえていて、初対面のベーシスト(ジョー・ラバーベラと同様に西海岸で活動しているようです)と併せて、リズム陣のクオリティは全く問題ありません。
今世紀に入ってすぐの2003年という時代に、こういう言わばマニアックなセッションがどれくらいの興味を集めたのか、或いは需要があったのかわかりませんが、新旧二人のサックス奏者はしっかりと自分を表現していますし、リズム陣も文句なしということで、「Ne Plus Ultra」、コニッツ~マーシュ云々を抜きにしても、ちゃんと成立している立派なステージだと思うのですが、贔屓目が過ぎるでしょうか。贔屓目ついでに、スタンダードの1-4"Come Rain"(ここではGary Fosterはお休み)での冒頭4分以上に及ぶカデンツァから、ベースソロを挟んで、独善的ともいえるような「我が道を行く」Mark Turnerのソロの流れはなかなか聴かせますよ。
本作が録音された2003年というと、Mark Turnerにとっては長らくリーダーアルバムを発表しなかった(或いはできなかった?)頃にあたり、そういう時期の貴重なリーダー・セッションで、よくもまあこんな音源が残っていてCD化されたものだと狂喜したところです。2枚組CD、収録時間約90分・・・Warne Marshの愛好家でありMark Turnerのファンである私としては、とても幸せな時間を過ごすことができました。
「Ne Plus Ultra」のLPジャケット(Revelation Records)
「Ne Plus Ultra」の再発CDジャケット(hatOLOGY)
Rec. Date: Feb. 2003
Personnel: Mark Turner (ts) [except on 2-2], Gary Foster (as) [except on 1-4], Putter Smith (b), Joe LaBarbera (ds)
Disc 1:
1-1 Background Music [Warne Marsh]
1-2 'Teef [Sylvester "Sonny Red" Kyner]
1-3 Lennie's Pennies [Lennie Tristano]
1-4 Come Rain or Come Shine [Harold Arlen, John Mercer]
DIsc 2:
2-1 317 East 32nd [Lenni Tristano]
2-2 What's New [Bob Haggard, Johnny Burke]
2-3 Subconcious-Lee [Lee Konitz]
このblogでたびたび扱っている贔屓のテナーMark Turnerですが、今回取り上げる「Mark Turner Meets Gary Foster」は、2003年に西海岸で録音されたライブ・アルバムで、録音から16年経った今年になって発表された2枚組CDです。
本作はアルバム・タイトルのとおり、フロントにMark Turnerのテナー、Gary Foster(ゲイリー・フォスター)のアルト、リズムはPutter Smith(パター・スミス)のベースにJoe LaBarbera(ジョー・ラバーベラ)のドラムというピアノレス・カルテットの編成、さらにWarne Marsh(ウォーン・マーシュ)、Lenni Tristano(レニー・トリスターノ)、Lee Konitz(リー・コニッツ)のオリジナル曲が演奏されている・・・ということで、世の中にはそう多くは存在しないであろうWarne Marshの愛好家は、思わず膝を叩いて「これってアレの再演じゃない?!」と叫ぶことになります。
「アレ」というのは他でもないWarne Marshの「Ne Plus Ultra(1969年録音、初出LPはRevelation Records、hatOLOGYからCD再発)」のことで、本作と同様Gary Fosterとのピアノレス・カルテットによる西海岸でのライブ・アルバムです(ジャケット写真は本記事の最下段に掲載)。
この「Ne Plus Ultra」は、Warne Marshとしては比較的録音の少なかった1960年代後半の録音、欠点がないこともないのですが、Warne Marshの個性がこの時点でも輝きを失っていないということを感じさせる演奏で、さらにGary Fosterのコニッツの代役とは言わせないとばかりの力強いプレイも印象に残る愛すべきアルバムでした。
このblogでは「Steeple Chase Jam Session Volume 4」や「Lee Konitz / Parallels」の記事でWarne MarshとMark Turnerの「近さ」について述べてきたところですが、「Ne Plus Ultra」からおよそ四半世紀後、我らがMark Turnerは間違いなくこの「Ne Plus Ultra」を念頭に置いて、ベテランGary Foster(1936年生まれ、Mark Turnerは1965年生まれ)を迎え、師と仰ぐWarne Marshがかつて描いた世界をここに再現した・・・本作「Mark Turner Meets Gary Foster」はそういった趣旨のアルバムです。
前置きが長くなってしまいましたが、実際このアルバムの中身について述べたいことはそう多くはありません。
1-1"Background Music"は1950年代前半からWarne Marshがたびたび取り上げた彼のオリジナル、トリスターノ作の2曲とコニッツ作の"Subconcious-Lee"は「Ne Plus Ultra」の再演、スタンダードの"Come Rain"と"What's New"だって、Warne Marshがそれこそ数えきれないくらい演奏してきた楽曲です。
このように聴く前からメンバーや楽曲を見て想像したとおり、「Ne Plus Ultra」の、さらに言えばコニッツ~マーシュの今世紀版といった趣きのサウンドで、Mark Turnerは彼の心の師でありアイドルであるWarne Marshを一切の迷いなしに、しかも力強く、さらに自分の世界に投影させながらトレースしています。Gary Fosterだって「Ne Plus Ultra」の時と同様に、いやそれ以上に、意志の強さを感じさせる芯の通ったプレイを聴かせてくれ、これは思いがけない収穫でした。
「Ne Plus Ultra」に「欠点がないこともない」と書いたのは「ドラムが弱いなあ」というのがその欠点の一つだったのですが、ここではベテランのジョー・ラバーベラがしっかりツボを押さえていて、初対面のベーシスト(ジョー・ラバーベラと同様に西海岸で活動しているようです)と併せて、リズム陣のクオリティは全く問題ありません。
今世紀に入ってすぐの2003年という時代に、こういう言わばマニアックなセッションがどれくらいの興味を集めたのか、或いは需要があったのかわかりませんが、新旧二人のサックス奏者はしっかりと自分を表現していますし、リズム陣も文句なしということで、「Ne Plus Ultra」、コニッツ~マーシュ云々を抜きにしても、ちゃんと成立している立派なステージだと思うのですが、贔屓目が過ぎるでしょうか。贔屓目ついでに、スタンダードの1-4"Come Rain"(ここではGary Fosterはお休み)での冒頭4分以上に及ぶカデンツァから、ベースソロを挟んで、独善的ともいえるような「我が道を行く」Mark Turnerのソロの流れはなかなか聴かせますよ。
本作が録音された2003年というと、Mark Turnerにとっては長らくリーダーアルバムを発表しなかった(或いはできなかった?)頃にあたり、そういう時期の貴重なリーダー・セッションで、よくもまあこんな音源が残っていてCD化されたものだと狂喜したところです。2枚組CD、収録時間約90分・・・Warne Marshの愛好家でありMark Turnerのファンである私としては、とても幸せな時間を過ごすことができました。
「Ne Plus Ultra」のLPジャケット(Revelation Records)
「Ne Plus Ultra」の再発CDジャケット(hatOLOGY)