David Weiss / When Words Fail
Label: Motéma Music
Rec. Date: Dec. 2013
Personnel: David Weiss (tp), Myron Walden (as), Marcus Strickland (ts), Xavier Davis (p), Dwayne Burno (b), E.J. Strickland (ds)
1. The Intrepid Hub [Weiss]
2. When Words Fail [Weiss]
3. MJ [Weiss]
4. Wayward [Weiss]
5. White Magic [John Taylor]
6. Loss [Weiss]
7. Lullaby for a Lonely Child [Karl Jenkins]
8. Passage into Eternity [Weiss]
「Endangered Species: The Music of Wayne Shorter」の翌年2013年に録音されたトランぺッターDavid Weissのリーダーアルバムです。
「Endangered Species: The Music of Wayne Shorter」は総勢12名のやや小振りのビッグバンドによるライブでしたが、本作「When Words Fail」は3管フロントのセクステット(一部ギターが加わる)編成によるスタジオ録音のアルバムです。
メンバーはリーダーのラッパ、Myron Waldenのアルト、Marcus Stricklandのテナーの3管、リズムはXavier Davisのピアノ、Dwayne Burno(ドウェイン・バーノ)のベース、Marcusの双子の兄弟E.J. Stricklandのドラム、以上のセクステットに、2曲にBen Eunsenというギタリストが加わる編成です。
なお本作録音(2013年12月6、7日)の直後(同月28日)に、リーダーとは共演の多かったベーシストのDwayneが43歳の若さで急逝し、彼のラスト・レコーディングになってしまったもので、ライナーノーツにはリーダーによる長文の弔辞が掲載されています。
David Weissは上記ショーター集などの彼自身のリーダーアルバムや、彼が実質的なリーダーのThe New Jazz Composers Octet名義のアルバムなどを既に聴いていますので、容易に想像できるとおりの現代ハードバップの王道を行くストレートなサウンドです。すなわち1960年代ブルーノートのショーターやハンコックのムードを現代に持ってきた「新」新主流派とでも言うようなサウンド・・・この人の創り出すサウンドは、乱暴に括ってしまえば、どれも基本的にこの「新」新主流派路線で一貫しています。3管のアレンジは、いつものDavid Weissの文法のとおりそれほど凝ってはおらず、アレンジとアドリブの配分や対比が実に絶妙であり、これも1960年代ブルーノート・サウンドを思い起こさせる要素にもなっていると思います。
さらに本アルバムはどのトラックも独特な雰囲気(ダーク・レイジー、物憂い、気怠い・・・こんな言葉が思い浮かびます)が貫かれています。おそらく意図的であったであろうダークな色調で統一されたサウンドは本アルバムの大きな特徴で、ジャケット写真の雰囲気とドンピシャでマッチしています。
面白く聴いたのは、二人のサックス奏者Myron WaldenとMarcus Stricklandの個性の対比が際立っているということです。音を歪ませて力強く、或いは熱く迫るMyronに対して、本アルバムでのMarcusは実にクールに吹いています。本作から10年以上遡る2001年に録音されたMyronのリーダーアルバム「Higher Ground(Fresh Sound New Talent)」は、MyronとMarcusの2本のサックスにベース、ドラムのピアノレス・カルテットの力作でしたが、その後の10年間に磨かれたそれぞれの個性が、「Higher Ground」時点に比べてより洗練され、或いは先鋭化しているといったところではないでしょうか。繰り返しますが、この二人のサックス奏者を選び対比させたことが、本作の最も大きな成功ポイントになっていると思います。
一方、付け足しみたいになってしまいますが、リーダーのラッパは、きちっとフレーズを積み重ねていく「折り目正しさ」と、ラッパ吹きならではの「力強さ」やフレディ・ハバード譲りの「色気」(或いは「ハッタリ」)がうまい具合に同居している・・・前から私はDavid Weissをそういうラッパ吹きと思っているのですが、本作でもそのような彼の持ち味全開のソロを聴かせてくれます。
最後に、本アルバムではE.J. Stricklandのいつものような小刻みに繰り出す細かいショットが実に冴えていて、なかなか良い仕事をしている、ということを付け加えておきます。せっかくですので1960年代ブルーノートのアルバムに登場願いますが、例えばジョー・ヘンダーソンのアワー・シング(「Our Thing(1963年録音)」)でのピート・ラロッカのように、バンドを「支配する」まではいかないとしても「とても効いている」・・・本アルバムでのE.J.もそのような役割を充分に果たしていると思います。
David Weissによる(いつもの)1960年代ブルーノートを連想させるサウンドは、やや「当たり前」すぎるきらいがありますが、理想的なメンバーを迎えた3管セクステットによってここまで密度の高い演奏を聴かされると、「当たり前で何が悪い」と開き直ってしまうくらいで、2013年に録音された本アルバムは、今のところ私にとってDavid Weissのベストアルバムということになります。
Rec. Date: Dec. 2013
Personnel: David Weiss (tp), Myron Walden (as), Marcus Strickland (ts), Xavier Davis (p), Dwayne Burno (b), E.J. Strickland (ds)
1. The Intrepid Hub [Weiss]
2. When Words Fail [Weiss]
3. MJ [Weiss]
4. Wayward [Weiss]
5. White Magic [John Taylor]
6. Loss [Weiss]
7. Lullaby for a Lonely Child [Karl Jenkins]
8. Passage into Eternity [Weiss]
「Endangered Species: The Music of Wayne Shorter」の翌年2013年に録音されたトランぺッターDavid Weissのリーダーアルバムです。
「Endangered Species: The Music of Wayne Shorter」は総勢12名のやや小振りのビッグバンドによるライブでしたが、本作「When Words Fail」は3管フロントのセクステット(一部ギターが加わる)編成によるスタジオ録音のアルバムです。
メンバーはリーダーのラッパ、Myron Waldenのアルト、Marcus Stricklandのテナーの3管、リズムはXavier Davisのピアノ、Dwayne Burno(ドウェイン・バーノ)のベース、Marcusの双子の兄弟E.J. Stricklandのドラム、以上のセクステットに、2曲にBen Eunsenというギタリストが加わる編成です。
なお本作録音(2013年12月6、7日)の直後(同月28日)に、リーダーとは共演の多かったベーシストのDwayneが43歳の若さで急逝し、彼のラスト・レコーディングになってしまったもので、ライナーノーツにはリーダーによる長文の弔辞が掲載されています。
David Weissは上記ショーター集などの彼自身のリーダーアルバムや、彼が実質的なリーダーのThe New Jazz Composers Octet名義のアルバムなどを既に聴いていますので、容易に想像できるとおりの現代ハードバップの王道を行くストレートなサウンドです。すなわち1960年代ブルーノートのショーターやハンコックのムードを現代に持ってきた「新」新主流派とでも言うようなサウンド・・・この人の創り出すサウンドは、乱暴に括ってしまえば、どれも基本的にこの「新」新主流派路線で一貫しています。3管のアレンジは、いつものDavid Weissの文法のとおりそれほど凝ってはおらず、アレンジとアドリブの配分や対比が実に絶妙であり、これも1960年代ブルーノート・サウンドを思い起こさせる要素にもなっていると思います。
さらに本アルバムはどのトラックも独特な雰囲気(ダーク・レイジー、物憂い、気怠い・・・こんな言葉が思い浮かびます)が貫かれています。おそらく意図的であったであろうダークな色調で統一されたサウンドは本アルバムの大きな特徴で、ジャケット写真の雰囲気とドンピシャでマッチしています。
面白く聴いたのは、二人のサックス奏者Myron WaldenとMarcus Stricklandの個性の対比が際立っているということです。音を歪ませて力強く、或いは熱く迫るMyronに対して、本アルバムでのMarcusは実にクールに吹いています。本作から10年以上遡る2001年に録音されたMyronのリーダーアルバム「Higher Ground(Fresh Sound New Talent)」は、MyronとMarcusの2本のサックスにベース、ドラムのピアノレス・カルテットの力作でしたが、その後の10年間に磨かれたそれぞれの個性が、「Higher Ground」時点に比べてより洗練され、或いは先鋭化しているといったところではないでしょうか。繰り返しますが、この二人のサックス奏者を選び対比させたことが、本作の最も大きな成功ポイントになっていると思います。
一方、付け足しみたいになってしまいますが、リーダーのラッパは、きちっとフレーズを積み重ねていく「折り目正しさ」と、ラッパ吹きならではの「力強さ」やフレディ・ハバード譲りの「色気」(或いは「ハッタリ」)がうまい具合に同居している・・・前から私はDavid Weissをそういうラッパ吹きと思っているのですが、本作でもそのような彼の持ち味全開のソロを聴かせてくれます。
最後に、本アルバムではE.J. Stricklandのいつものような小刻みに繰り出す細かいショットが実に冴えていて、なかなか良い仕事をしている、ということを付け加えておきます。せっかくですので1960年代ブルーノートのアルバムに登場願いますが、例えばジョー・ヘンダーソンのアワー・シング(「Our Thing(1963年録音)」)でのピート・ラロッカのように、バンドを「支配する」まではいかないとしても「とても効いている」・・・本アルバムでのE.J.もそのような役割を充分に果たしていると思います。
David Weissによる(いつもの)1960年代ブルーノートを連想させるサウンドは、やや「当たり前」すぎるきらいがありますが、理想的なメンバーを迎えた3管セクステットによってここまで密度の高い演奏を聴かされると、「当たり前で何が悪い」と開き直ってしまうくらいで、2013年に録音された本アルバムは、今のところ私にとってDavid Weissのベストアルバムということになります。