ワーグナーの楽劇は聴くまでが大変。DVDだと映画2~3本分を一気に見るぐらいの覚悟が必要、CDで楽しむにしても4枚組ぐらい当たり前で、週末に「よーし今度の土曜日曜はワーグナーのあれを聴くぞ!」ぐらいの気合いがなければターンテーブルに載せる気にすらなれません(^^;)。とはいってもロマン派のオペラですから面白いどころか娯楽性もそれなりにあって、観賞しはじめてしまえばあっという間。しかも
、「ニュルンベルクのマイスタージンガー」は、ワーグナーの楽劇の中では珍しく明るく楽しい話なので、比較的聴きやすい作品だと思います。
僕がこのCDに手を出したのは、実はワーグナーやこの作品への興味ではなく、マイスタージンガーについて知りたかったからでした。
ドイツはギルドや専門職化の進んだ国で、マイスターはスペシャリストのトップ。日本の「親方」みたいな感覚だそうです。この
マイスター文化の中で、親方たちが歌を競うという文化が生まれて、マイスタージンガーはそこで用いられるマイスターの称号。この楽劇に出てくるハンス・ザックスは実在したマイスタージンガーで、本職は靴屋。マイスタージンガーの中でも有名な存在で、何千という歌を作ったと言われてます…本職より趣味に走る人ですね(^^)。そして彼らの音楽のルーツがドイツの吟遊詩人
ミンネゼンガーにあるということで、僕はマイスタージンガーの歌を聴いてみたかったのです(^^)。
金細工師の娘エヴァにひと目ぼれした騎士階級のヴァルターは、彼女に求婚できるのは、ある祭りの歌合戦に優勝したものという事を知ります。しかしその歌合戦に参加する資格があるのはマイスタージンガーだけ。歌の素人のヴァルターですが、知人を辿って歌の作法を身につけ、いざマイスタージンガーの試験にトライ。しかし…まあこんな感じで色々あって、最終的にヴァルターがマイスタージンガーの称号を得てエヴァと結ばれハッピーエンド。ワーグナーの楽劇とは思えないほど大衆的、しかもおめでたいお話です(^^)。
僕が持ってるのは、サヴァリッシュ指揮、バイエルン国立歌劇場の専属オケの演奏、93年録音の日本盤なのですが、
エヴァ役のシェリル・ステューダーのソプラノがめちゃくちゃすごい!エヴァの出番はそんなに多くないんですが、このソプラノを聴くだけに買ってもお釣りがくるほど素晴らしい!!いや~まったく考えてもいなかった所に感動させられてしまいました。。
オケは劇場つきのオケですが、さすが名門、こなれてる感じで、これもそこまで期待してなかったのになかなかでした。バイエルンにある歌劇場だと地元の英雄ワーグナーなんて何十回も演奏しているんだろうし、十八番なのかな(^^)。ただ、オケピットに入ってるのか、音が明瞭でなく、金管が小さいなどのバランスの悪さも感じました。これはオケじゃなくて録音の問題なんでしょうね。スコアは、物語の喜劇性も影響しているのでしょうが、全体が長調系で優雅。「ワルキューレ」や「トリスタンとイゾルデ」とはかなり雰囲気が違って、「これ、ワーグナーじゃなくて
リヒャルト・シュトラウスのオペラだよ」と言われたら信じてしまいそう。ワーグナー的なものを聴きたい場合は、最初に「マイスタージンガー」を選ぶのは避けた方がいいかも。
このCD、アマゾンだと輸入盤しか無いんですね…この曲の録音の中では名盤扱いされてきた名演のひとつと思うので、ちょっと残念。でも僕が持ってるのは、すべてのドイツ語歌詞&日本語訳がついている日本盤ですので、日本語訳のついている盤がないわけではありません。ドイツ語が分からない人は、日本語訳つきの日本盤の入手をお薦めします。いかに名作と言えど、4時間も内容が分からなかったら絶対に面白くないと思うので(^^)。
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